デジモンアドベンチャー Miracle Light
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第22話:奇跡の反撃
前書き
少し早めの登場です。
サジタリモンとヴァンデモンが睨み合う。
サジタリモンは弓矢を握り締め、ヴァンデモンもまた剣を握り締めた。
「もう来るとは…役に立たん奴らだ。」
「相手が悪かったな。もうお前に後は無いぞ?賢とジュエルビーモンは今、お台場の雑魚連中の掃除をしてくれてる。今度こそ仕留めてやるから覚悟しろ!!ジャッジメント…」
「やらせん!!」
流石にサジタリモンの攻撃を受け止める自信がないのかヴァンデモンは即座に距離を詰めた。
「チッ!!」
ヴァンデモンの剣を咄嗟に矢の柄を掴んで受け止めた。
普通の矢なら折れるだろうが、サジタリモンの矢はクロンデジゾイド製であるために矢として放つだけでなくこうしたことも可能だ。
「この野郎!!」
矢の穂先で斬り裂いてやろうとしたが、障壁によって阻まれた。
「ん!?」
「その程度の力では私の障壁は破れん!!」
サジタリモンとヴァンデモンが矢と剣をぶつけ合う。
距離を取ろうとしてもヴァンデモンはそうはさせないとばかりに攻撃を仕掛けてくる。
距離を取られればあの必殺の一撃が繰り出されるのは確実だからだ。
サジタリモンがどれだけ矢による斬撃を繰り出しても障壁で弾かれてしまい、このままでは体力の差で敗北する可能性もある。
矢と剣をぶつけ、鍔迫り合いになる。
「想像以上のパワーアップだ…一体何をしたんだ?」
「貴様らに敗北し、私も私なりにパワーアップの方法を模索したと言うことだ!!我が力を高める霧の結界に加え、あらゆる攻撃を無力化する障壁。これさえあれば聖なる力も大した脅威にはならん!!」
「…その割には俺に距離を取らせないな。つまり俺のジャッジメントアローはその障壁の防御力では防ぎきれないんだろ?」
その言葉にヴァンデモンは一瞬苦い表情を浮かべたが。
「黙れ、距離を取れなければ矢は放てまい!!体力を消耗し、動きが鈍った時が貴様の最期だ!!」
ヴァンデモンが剣を振り下ろそうとした時、サジタリモンの拳がヴァンデモンの顎を殴り上げた。
「ぐあ…っ!?」
「ようするに、今のお前はその障壁に護られてるからダメージが通らない。ならジャッジメントアロー並みの威力を素手で叩き出せるようにすればいいだけの話だろ」
サジタリモンの両拳に聖なる光が収束していく。
「行くぜヴァンデモン!!」
四足歩行の機動力でヴァンデモンに襲い掛かるサジタリモンから絶え間ない拳によるラッシュ攻撃が繰り出される。
ヴァンデモンはそれを何とか捌こうとするが…。
「ぐあっ!?」
フェイントを混ぜた打撃にヴァンデモンは対応仕切れずに喰らって仰け反る。
「残念だったな、俺は寧ろ弓矢よりこっちの方が得意なんだよ!!」
サマーソルトを繰り出して上空打ち上げると、サジタリモンも追いかけるように跳躍する。
そしてヴァンデモンの真上に移動して聖なる力を収束させた拳を叩き付けて地面に激突させた。
「へっ、どうだヴァンデモン?そんな小細工なんか俺には意味ないんだよ…」
「ふっ、確かにあの障壁を破ったのは流石だと言いたいが、だがこの程度では私は倒せんぞ?」
ゆっくりと立ち上がるヴァンデモンにサジタリモンはそれを見て表情を顰めた。
「さっきの障壁で聖なる力の大半を殺ぎやがったな?なるほど、想像以上に厄介だ。」
ダメージは通るが、やはりヴァンデモンを倒すにはサジタリモンの技の中で最も強力なジャッジメントアローを当てるしかない。
しかしヴァンデモンはサジタリモンに距離を取らせようとはしないだろう。
「あの時の屈辱を返してくれる!!」
「舐めるなあ!!」
ヴァンデモンの斬撃を捌きながらサジタリモンも負けじと打撃を浴びせる。
両者共に全くの互角だが、サジタリモンは聖なる力を常に拳に収束させているためにエネルギーが常時放出されている状態なのでこのままではガス欠を起こすのは目に見えている。
「ぐっ!!」
とうとう疲労が出て来たのかサジタリモンが押され始めていく。
「この私を相手によくやったと褒めてやろう。さあ、これで終わりだ!!」
ヴァンデモンが剣を巨大化させてサジタリモンを叩き斬ろうとするが。
「サンダークラウド!!」
「ぬおっ!?」
突如、ヴァンデモンの顔面に電撃が叩き込まれる。
ウィザーモンがボロボロの状態ながらも放ったのだ。
障壁によって電撃は無力化されたが、電撃の閃光により視力が低下する。
「今だ!!」
「サンキュー!!ジャッジメントアロー!!」
チャンスを作ってくれたウィザーモンに感謝しながらサジタリモンは弓に矢をつがい、ヴァンデモンに狙いを定め、一気に放った。
「ぬううう!?」
「くたばれヴァンデモン!!」
視力が回復した時には既にサジタリモンの矢は間近に迫っていた。
光が周囲を照らし、そして光が収まった場所には…。
「ぐふ…っ!!」
「間一髪で急所への直撃を避けやがった…だが、これで終わりだヴァンデモン!!」
もう一度ジャッジメントアローの発射体勢に入るサジタリモン。
絶対絶命のヴァンデモンだが、何故か笑みを浮かべた。
脇腹を吹っ飛ばされ、体のバランスがおかしくなって勝ち目など無いにも関わらずだ。
「何がおかしい?」
「あの小娘は確か貴様らと親しかったな…」
「?」
ヴァンデモンの言葉を理解するよりも早く、ヴァンデモンはヒカリの方を向いた。
「っ、お前!!」
「私はただでは死なん!!貴様らの大切な物を奪ってやる!!ナイトレイド!!」
「しまった…ヒカリちゃん逃げろおおおお!!」
大輔が叫ぶが、あまりにも遅過ぎた。
ヴァンデモンが悪足掻きとばかりに召喚した蝙蝠はヒカリに凄まじい勢いで迫る。
テイルモンが立ち上がって盾になろうとするが、盾代わりにさえならないだろう。
サジタリモンのスピードを持ってしても間に合わない。
誰もが最悪の未来を予想したが…。
「「「「っ!!」」」」
大輔、ヒカリ、サジタリモン、テイルモンは目を見開いた。
ウィザーモンが傷だらけの体とは思えないくらいの動きでヒカリとテイルモンの前に立ち、2人をその身で守ったのだ。
「ぐっ…己、雑魚が…邪魔しおって……」
痛みに顔を顰めながらウィザーモンを侮辱するヴァンデモだが、しかし今の大輔達にそんな言葉は届かない。
「ウィザーモン!!」
テイルモンが体を引き摺ってウィザーモンに向かうと、ヒカリもまたウィザーモンに駆け寄る。
「ウィザーモン、死んじゃ駄目!」
呼びかけられたウィザーモンは、ゆっくりと目を開け、テイルモンの無事な姿を認めると安堵に満ちた表情になる。
「無事か、テイルモン……」
「ウィザーモン、すまない……こんなことに巻き込んで……」
耳を垂らして、テイルモンは懺悔した。
自分があの時ウィザーモンに声を掛けていなければ、ウィザーモンはこんなことはなかった。
自分の勝手な都合でウィザーモンを振り回したりしなければ、彼は命を落とすことはなかった。
果てしない罪悪感に苛まれるテイルモンにウィザーモンは微笑んだ。
「いいんだ…君に会わなかったら、私は意味のない命を長らえただけ…君に会えて…良かった…大輔、サジタリモン…私の代わりにテイルモンを…頼む…私の代わりに支えてやって欲しい…」
「ウィザーモン…」
「馬鹿なことを言うな!俺達に頼むくらいなら…自分でテイルモンを支えろよ!これからも!!」
「…ふふ、そうだな…出来れば…そう、したか…った…」
サジタリモンの叫びにウィザーモンは少しだけ未練が残ったような笑みを浮かべて目を閉ざした。
もう、開かれることはない…永遠に。
残されたのは、行き場のない悲しみだけだった。
「いや……ウィザーモン……いやあああああっ!!」
ヒカリは涙を流しながら叫んだ。
心の扉の鍵を壊し、その奥底の激情を吐き出すように。
「ゆ、許さねえ…許さねえぞ…よくも…よくも…!!このクソ野郎…!!」
大輔は目に涙を滲ませながら拳を握り締め、皮膚に爪が食い込み、血が流れても力を抜かなかった。
まるで自分の不甲斐なさを恨むように。
次の瞬間、奇跡の金と光の白の輝きが周囲を照らす。
その時、大輔が鞄に入れていたメタル属性のデジメンタルが飛び出し、2つの紋章の輝きと飛び散ったウィザーモンのデータ粒子を取り込んでいく。
取り込み終えたデジメンタルは黄金の輝きを放ち、それはまるで昇る朝日のような美しい光を…。
「まさか…完成…したのか……?」
「綺麗…」
大輔とヒカリ、サジタリモンとテイルモンが思わずデジメンタルに触れる。
するとデジメンタルから感じたのだ。気高いウィザーモンの魂の息吹を。
大輔とヒカリの頬を伝う一筋の涙。
「そうか……力を貸してくれるんだなウィザーモン……頼む…俺達に力を貸してくれ!!」
その言葉と同時に大輔はデジメンタルを強く握り締めた。
ヒカリもまた立ち上がり、2人の両目から溢れるが、その頬を伝う涙を拭う必要はない。
例え肉体を失っても勇敢な魔法使いの魂は自分達と共にある。
それだけで自分達は戦えるのだから。
「ウィザーモン…ありがとう」
ヒカリが紋章を握り締めながら感謝の言葉を伝える。
奇跡と光が共鳴し、更に輝きが増していくとサジタリモンがブイモンに退化する。
「行くぞブイモン!!」
「おう!!」
「テイルモン!!」
「…ああ!!」
パートナーの声にブイモンとテイルモンは瞳を鋭くしながら応えた。
新たな力を発現させるために。
「…デジメンタルアーップ!!」
「ブイモンアーマー進化、マグナモン!!」
「テイルモン超進化、エンジェウーモン!!」
勇敢な魔法使いの想いに応えるかのように奇跡の聖騎士と光の大天使が神々しい輝きを放ちながら降臨した。
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