永遠の謎
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380部分:第二十四話 私の誠意その十八
第二十四話 私の誠意その十八
「しかしです」
「それでもなのですね」
「どうしても」
「私は心配なのです」
「バイエルン王のことが」
「あの方が」
「ゾフィーもそうですが」
それ以上にだというのだ。
「あの方の行く末がです」
「聡明な方ですから」6
周りの者の一人が王のその資質を話してだ。皇后を安心させようとする。
「大丈夫なのでは」
「聡明故にですか」
「そうです。ですから」
「聡明。それは素晴しいことですが」
それでもだと。皇后は表情を変えずに言うのだった。
「ですがそれでもです」
「それでもですか」
「あの方はやはり」
「幸福は訪れ、手に入れられるとは限らないのです」
「そうなのですか」
「聡明だからといってもなのですか」
「そこには神も関わり」
幸せになる為には神の助けも必要である、キリスト教徒としての考えである。無論皇后はカトリックである。バイエルン王家の者でオーストリア皇后としてだ。そうなのだ。
そしてだった。神に加えてだ。
「御本人がです」
「幸せを求められればではないのですか?」
「それで幸福になるのではないのですか」
「そうなのですか」
「そうです。求めても得られない幸福もあります」
幸福も様々。そうだというのだ。
「そうしたものなのです」
「バイエルン王の求められている幸福はこの世のものではに」
「左様ですか」
「そうしたものですか」
「あの方はこの世にはないものを求めておられます」
遠く、王と同じ見方で話す皇后だった。
「この世に完全に現れることのできないものを」
「だから。あの方は」
「幸福にはなれない」
「決してですか」
「まず気付いておられないことは」
王がだ。そうだということとは。
「あの方はゾフィーをエルザと呼んでいますが」
「それは正しいのでは?」
「バイエルン王は男性ですし」
「それでは」
「そう、外見は」
表の、それだはだというのだ。
「表面は男性ですがあの方はゾフィーではなく鏡を見られているのです」
「ゾフィー様ではなく鏡を」
「ではエルザとは」
「あの方です。御自身なのです」
そうだというのだ。
「あの方はそれがわかっておられません」
「左様ですか」
「あの方はわかっておられないのですか」
「そうしたことが」
「男性の幸せを求めなければならないのですが」
王だからだ。王妃ではないのだ。
「女性が男性の幸福を手に入れることはできません」
「難しい話ですね」
「バイエルン王にとってもです」
「それは」
「はい、困難です」
困難に加えて。さらにだった。
「むしろ。果たし得ない」
「夢の様な」
「そうしたものですか」
「あの方が望まれる幸せは」
「神は何故あの方をこの世に出されたのか」
ひいてはそうした話になった。
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