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デジモンアドベンチャー Miracle Light

作者:setuna
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第4話:炎雷

 
前書き
ブイモンはアーマー体主体です。 

 
ヒカリはただいま悪戦苦闘中であった。

大輔とブイモンに食べさせるためのクッキー作りをしているのだ。

ヒカリはお菓子作りなんて初めてなので母親の裕子に手伝ってもらっている。

「ねえ、ヒカリ?」

「なあに、お母さん?」

「これ、大輔君にあげるのよね?」

「うん、そうだけど?」

首を傾げるヒカリに裕子は微妙な表情を浮かべる。

「それにしては…少し量が多すぎないかしら?」

「え゙?」

「大輔君1人に渡すにしてはちょっとクッキーの量が多すぎる気がするのよね。」

「え?あ、その…」

ヒカリは冷や汗を流した。

ヒカリとしては大輔とブイモンへのプレゼントとして作っていたのだが、いくら食べ盛りの子供でも多すぎではないかと裕子は疑問を抱いた。

「だ、大輔君には…沢山食べて欲しい…から?」

最後に疑問系になってしまったが、取り敢えず通用しそうな言い訳を述べてみる。

実際クッキーは日持ちするし、残しても次の日に…と言うのも出来る。

「ん~…まあ、プレゼントだし張り切っちゃうわよね?でも次から気をつけなさいね?」

「は~い(あ、大輔君のお姉ちゃんにもやるんだって言えば良かった)」

大輔には姉がいるのだし、ジュンへもプレゼントすると言えば裕子もすんなりと納得してくれただろう。

でも今は後悔するより食べてくれる大輔達のことを考えよう。

「大輔君(とブイモン)…喜んでくれるかな?」

「大丈夫よ、味見もしたし、ヒカリがこんなに頑張って作ったんだもの。喜んでくれるわ」

「うん!!」

満面の笑顔でラッピングされたクッキーを見つめるヒカリに、裕子は大輔に深く感謝した。

「ヒカリ、大輔君をいつか家に招待しましょう?大輔君にお礼がしたいわ」

「お礼?」

「ふふふ、秘密。お母さん個人のことだからヒカリは気にしなくていいのよ?」

首を傾げるヒカリに裕子はヒカリの頭を撫でながら大輔のことを考え始めた。

そしてヒカリはクッキーを大事そうに持つと、本宮家に直行して大輔とブイモンに渡す。

「大輔君、ブイモン。どうぞ!!」

「「お~」」

中身のクッキーはブイモンの好みに合わせてチョコレートクッキーだ。

因みにヒカリが初めてのプレゼントにチョコレートクッキーを迷いなく選択したために八神家では大輔はチョコ菓子を好むと勘違いされてしまう。

いや、大輔もチョコレートは好きだけども。

「チョコクッキーだ!!サンキュー、ヒカリ!!」

「えへへ、一杯食べてね?」

「おう!!」

ヒカリに言われるまでもなく、ブイモンはヒカリお手製のチョコレートクッキーをかなりの勢いで食べ始めた。

「こらブイモン!!1人だけで食うな!!」

食い意地の張った相棒に頭を痛めながら、大輔もクッキーを頬張った。

「どう?」

「美味しいよヒカリちゃん。ありがとう」

クッキーをもう1個頬張る大輔の浮かべている笑顔に違和感がないのを見ると嘘は吐いていないようだ。

「良かった…」

「また作って欲しいんだけど…」

「うん!!」

大輔の頼みにヒカリも笑顔で応えた。

ブイモンは冷蔵庫からキンキンに冷えた牛乳を飲む。

「……プハア~!!」

牛乳を一気飲みして満足そうな笑みを浮かべるブイモンと美味しそうに食べる大輔を見て、ヒカリも嬉しそうに見つめた。

「そう言えば、ブイモンに進化してから全然変わらないね」

「まあ、チコモンからチビモンに進化するまで大分かかったし…」

「まあ、今のままじゃいけないんだけどさ……実は…」

「「?」」

冷や汗をダラダラと流しながらゆっくり口を開いた。

「実は俺…普通の進化がしにくいんだよ」

「「ええ!?」」

デジタルワールドのデジモンには現代種と古代種が存在し、ブイモンはその古代種デジモンに分類されるデジモンである。

古代種は現代種に比べ潜在能力こそ上回るが、感情の起伏も激しく、オーバーライトが現代種に比べ荒々しいために体を構成するデータの劣化が激しく寿命が極度に短い。

当然そのために進化の幅も狭く、古代種は成長期、成熟期以上に進化出来ないデジモンも数多く存在し、完全体や究極体などは余程の運に恵まれない限り到達出来ないために古代種が進化した完全体と究極体が伝説の存在と呼ばれるのはその為である。

大輔のパートナーであるブイモンは寿命の問題は現代の技術で解消自体はされているが、古代種であるが故の進化の可能性が極端に低いのは変わっていない。

「まあ、だからこそその弱点を補うデジメンタルデータがあるわけだけどな」

「デジメンタルデータ?」

「何?それ?」

「簡単に言うとデジメンタルデータは紋章に刻まれているデジメンタルってアイテムのデータだよ。」

古代種デジモンは進化の可能性が低いが、それを補うために開発されたアイテムがデジメンタルなのである。

デジメンタルは自身の力を使わずにデジメンタルに秘められたエネルギーを使って進化するため、デジモンの体に負担が掛かりにくいと言うメリットが存在する。

しかしその安易さ、力の強大さなどから古代デジタルワールドでも危険な存在とされていたのだが…大輔達は知る由もないが、デジタルワールドが危機に瀕したことにより、ブイモン(正確にはチコモンだが)と共に急遽デジメンタルの復活をさせようとしたのだが、永い年月の封印によりデジメンタルのデータは劣化してしまい、完全な復活は困難となってしまっていたのだ。

デジタルワールドは苦肉の策として大輔の紋章にデジメンタルのいくつかのデータが刻んだのだ。

「属性は炎、雷、神聖属性のデジメンタルのデータが刻まれてる。」

炎、雷、神聖は後に勇気、友情、希望と名付けられるデジメンタルである。

どれも古代種が繁栄していた時期では希少な物ではないが、ブイモンが神聖属性のデジメンタルでアーマー進化した場合、特別な能力は持たない代わりに純粋な戦闘力が極めて高い個体に進化する。

「まあ、成長期に進化出来たならアーマー進化出来るはずなんだけどね」

「よし、じゃあ試してみようぜ!!」

「アーマー進化見たい!!」

大輔とヒカリが好奇心一杯の表情で立ち上がるのを見てブイモンは慌てる。

「ストップストップ!!進化の余波で家が壊れちゃうかもしれないぞ!?」

神聖はともかく、炎と雷の場合は家が火事になる可能性もあるのでそれは止めておきたい。

「「え~?」」

しかし見てみたいと言う好奇心は抑えきれないのか大輔とヒカリは不満そうである。

「よし、じゃあ向こうの空き地でやろう!!あそこなら火事の心配とかないだろうし」

「「はーい」」

ブイモンに空き地でアーマー進化の練習を言われた大輔とヒカリはワクワクとした表情で近くの空き地に向かう。

そこで世界の異常を目の当たりにすることになるとは知らずに。

そして空き地に移動したブイモン達は辺りを見回しながら安全を確認する。

「そっちはどうだ?大輔、ヒカリ」

「「誰もいないよ」」

ブイモンの問いに大輔とヒカリは周囲に人がいないことを伝える。

「そうか…よし、これでは人間世界での初アーマー進化をしたいと思う」

「「おお~」」

「さあ、大輔!!デジヴァイスを向けてデジメンタルアップと叫んでくれ!!そうすれば進化出来るんだ!!」

「よ、よおし…」

「…………」

緊張している大輔とワクワクしているヒカリ。

ブイモンからそれぞれのデジメンタルでアーマー進化した場合の大体の容姿は聞いているが、やはり実物を見たいと思うのが人情。

「デジメンタルアップ!!」

「ブイモンアーマー進化………」

大輔の渾身の叫びにブイモンも気合いを入れたが……。

「…………変わらないね」

ヒカリが小さく呟いた。

大輔は確かにブイモンと言われたように叫び、ブイモンもそれに応えようとしたが、紋章もデジヴァイスはまるで反応せず、ブイモンはブイモンのままだ。

「あ、あれ?おかしいな?アーマー進化!!アーマー進化!!アーマー進化!!アーマー進化ーーーっ!!進化しろよ畜生ーーーーっ!!!」

ブイモンも変わらない自分を不思議に思いながら何度もやけくそ気味に叫ぶが結果は変わらない。

「……壊れちゃったの?」

「ええ!?そんなはずは…」

ヒカリが紋章とデジヴァイスを指差して尋ねるが、ブイモンも疑問符を浮かべながら困ったようにデジヴァイスと紋章を見つめる。

通常の進化が困難なブイモンからすればアーマー進化はブイモンの唯一の生命線で、アーマー進化出来ないのは非常に厄介だ。

「うーん、今日は諦めて…次にまた…」

大輔がデジヴァイスと紋章を交互に見遣りながらブイモンとヒカリに言った時、こちらに迫る火球を見た。

「危ない!!」

「「わっ!?」」

突き飛ばされたブイモンとヒカリは驚いたが、火球が地面に着弾したのと同時に火球が飛んできた方向を見遣ると…。

「「き、恐竜!?」」

「いや、違う!!あれはモノクロモンだ!!」

そこには鼻先にサイの様な角を生やした鎧竜型デジモンで、角の部分と体の半分を覆う硬質な物質はダイアモンドと同質の硬度を持つと言われている成熟期デジモンである。

「あれもデジモンなの…?」

「ああ、俺よりも一段階上の成熟期デジモン…少しまずいかな?」

アーマー進化さえ出来ればどうとでもなる相手だが、アーマー進化が使えない現状ではかなりの難敵である。

「ブイモン、どうする?」

「どうするもこうするもないよ。あいつと戦って倒すんだ!!」

ブイモンが拳を握り締めて叫んだ。

このままモノクロモンを放置していてはモノクロモンは街を滅茶苦茶にしてしまうため、ここで戦うしかない。

「それにしても何でブイモンと違って半透明なんだろうな…?」

モノクロモンの体は半透明でブイモンのようにはっきりとしていない。

しかし先程の攻撃やモノクロモンが足を動かす度に足音がするのを見ると、どうやら触れることは出来るようである。

「先手必勝!!ブイモンヘッド!!」

ブイモンは一気に距離を詰めて必殺の頭突きをお見舞いする。

モノクロモンの頭部と激突し、そしてモノクロモンから離れるとブイモンが頭を擦る。

「痛~っ!!」

いくらブイモンの頭が石頭でもモノクロモンの外郭はダイヤモンド並みの硬度だ。

当然敵うわけもなくブイモンは痛みに悶える。

「「ブイモン!!」」

大輔とヒカリがブイモンに駆け寄る前にモノクロモンは口からブイモンに向けて火球を放ってきた。

「うわっと!!」

ブイモンは即座に火球を避けるとモノクロモンは何度も火球を放つ。

すばしっこさならブイモンの方が上だが、一段階上の世代との力の差は大きく、こちらの攻撃は蚊に刺された程度だ。

「ど、どうしよう…」

ヒカリはどうにかならないかと辺りを見回すと周囲の様子がおかしいことに気付いた。

「ヒカリちゃん、気付いた?」

大輔も周囲の様子に気付いたのだろう。
街の風景が何時もと違うのもあるが、モノクロモンが暴れているのにも関わらず、騒ぎになるどころか人っ子1人いない。

「う、うん…どうして…」

ヒカリが疑問を言い終わるよりも先にブイモンの悲鳴が響き渡る。

「うわあああああ!!?」

回避しきれず、火球の直撃を喰らったブイモンが吹き飛んで地面に強く打ち付けられ、そんなブイモンに向かってモノクロモンが突進する。

自身の角でブイモンを貫くつもりなのだろう。

「だ、駄目!!」

「ヒカリちゃん!?」

倒れているブイモンの姿がかつてのコロモンと重なったのか、ヒカリはブイモンを守るように抱き寄せた。

モノクロモンは突進を止めずに2人に向かっていき、このままでは2人が死んでしまうと確信した大輔。

「(嫌だ…ブイモンとヒカリちゃんがいなくなるなんて絶対に!!)」

パートナーと友達を守るために大輔は勇気を振り絞って一か八かでもう一度あの言葉を叫んだ。

「デジメンタルアップ!!」

紋章から橙色の輝きが放たれ、ブイモンに伸びていき、光はブイモンに吸い込まれた。

「こ、これは……まさか」

「ブイモン……?」

「ヒカリ、下がっていて」

体から湧き上がる力にブイモンは勝利を確信し、ヒカリを遠ざけた。

「さっきはよくもやってくれたな!!倍返ししてやるから覚悟しろよ!!ブイモンアーマー進化、フレイドラモン!!」

火炎に包まれたブイモンは姿を変え、そこにはブイモンの面影を色濃く残した紅い鎧を纏った紅蓮の竜人が立っていた。

ブイモンの時よりはいくらか巨大化したが、モノクロモンと比べるとかなり小柄だ。

それでも体格差を感じさせない頼もしさが、フレイドラモンの全身から溢れていた。

「お、大きくなった…」

「これがアーマー進化……」

「もう、大丈夫だ。もうやられたりはしない。2人は離れていてくれ」

フレイドラモンは自信に満ちた表情を浮かべてモノクロモンと対峙するとモノクロモンは理性のない瞳をフレイドラモンに向ける。

「……来い!!」

両腕の爪をモノクロモンに向け、鋭く声を飛ばした。

モノクロモンはフレイドラモンの闘志に反応してか、体当たりを繰り出すモノクロモン。

しかしフレイドラモンは跳躍してかわし、モノクロモンを飛び越えるついでに脳天に蹴りを叩き込むと蹴りを受けたモノクロモンは勢い良く地に沈んだ。

「凄い!!」

体格で上回るモノクロモンを物ともしないパワーとスピードにヒカリは興奮している。

「行けえ!!フレイドラモン!!」

「ナックルファイア!!」

両拳に纏わせた炎を火炎弾として発射する。

まともに喰らったモノクロモンは仰け反ったのを見たフレイドラモンは連続攻撃を仕掛ける。

「ナックルファイア連射だ!うおりゃあああああ!!」

連続で繰り出される火炎弾の嵐にモノクロモンは悲鳴を上げる。

フレイドラモンは一気に距離を詰めて大振りの右拳を叩き込んだ。

「大輔!!もう1回デジメンタルアップを!!」

「おう!!」

大輔も何となくだが、感覚で分かった。

フレイドラモンの力が解放された際にもう1つの力も解放されたことも。

「デジメンタルアップ!!」

「アーマーチェンジ、ライドラモン!!行くぞ!!」

蒼い雷を纏いながら現れたのは漆黒の鎧を纏った四足歩行の獣竜であった。

フレイドラモン程ではないが、ブイモンの面影を残したライドラモンは見た目に違わぬ俊敏な動きでモノクロモンの火球をかわしていく。

「サンダーボルト!!」

全身から雷を放ち、モノクロモンを怯ませた後に止めの一撃を繰り出すために一気に角に電撃を纏わせた。

「とどめだ!!ライトニングブレード!!」

繰り出された電撃の刃はモノクロモンに命中し、強固な外郭などないかのように容易く両断した。

両断されたモノクロモンは悲鳴を上げることさえ出来ずに粒子となった。

「「やったあ!!」」

フレイドラモンとライドラモンの2つの力を持ってモノクロモンを撃破したブイモン。

駆け寄ってくる大輔とヒカリにブイモンはVサインを作りながら満面の笑顔で迎えた。 
 

 
後書き
希望のデジメンタルはあのドラマCDです。

何でああなった…? 
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