デジモンアドベンチャー Miracle Light
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第2話:邂逅
前書き
チビモンがヒカリにバレちゃいます。
大輔達がお台場小学校に入学してから早くも数週間が経ち、最初は慣れない学校生活に緊張して大人しかった子供達も授業が終わり、休憩時間となるとはしゃぎ回る者も増え始めた。
大輔は休憩時間となる度にチビモンを入れているロッカーにぶつからないか心配になってしまう。
しかし、大輔の心配を嘲笑うかのように1人の男子がロッカーにぶつかる。
「(やばっ…)」
「(○×□△~!?)」
何となくだが、チビモンの声にならない悲鳴が聞こえた気がする。
しかし幸運にも何とか声を堪えてくれたことでチビモンの存在には気付かれることはなかった。
「はあ…」
チビモンがバレずに済んだことに安堵した大輔は深い溜め息を吐いた。
それを少し離れた場所でヒカリは見ていたことに気付かずに。
「(また溜め息吐いてる…)」
ヒカリは時々不思議な行動を取る大輔を見ていた。
休憩時間となると決まってロッカーの方を見遣り、人か物がぶつかると心配そうに見つめる。
特に気になるのは昼休みになるとロッカーから大きな布袋を取り出して教室を出て行くことだ。
流石に数回なら気にならないが、ほぼ毎日となると話は別で、ヒカリは好奇心に負けて大輔を追い掛ける。
「屋上…?」
大輔が向かっているのは普通なら誰も寄り付こうとしない屋上。
そこで何をするつもりなのだろうかとヒカリは気付かれないように追い掛けた。
屋上の扉を開いた大輔は屋上の地面に座るとモゴモゴと動く布袋から…。
「ぷはあ!!」
「っ!!」
飛び出したチビモンにヒカリは目を見開いた。
似ているのだ、見た目ではなく雰囲気が、あの友達に。
「ほい、チビモン」
大輔が給食の余りのパンやら牛乳、持参してきた大輔お手製のお菓子を差し出すとお腹が空いていたチビモンは嬉しそうに頬張る。
「(コロモン…)」
その姿にコロモンの姿が重なり、思わずヒカリはチビモンを凝視してしまう。
「………ん?そこにいるのは誰だ!?」
チビモンが気配に気付いて叫ぶと、ヒカリは驚いて覗くために少しだけ開けていた扉を開いてしまった。
「あ、八神さん…」
ヒカリの登場に大輔は目を見開き、チビモンも思い出したのかヒカリを指差した。
「あ~、お前は大輔の隣の席の…」
「八神ヒカリさんだよ。どうしてこんなとこに…?しかもチビモン見られちゃったし」
「黙ってもらえばいいじゃん?」
「そんな簡単に黙ってもらえるわけないだろ…さて、どう説明したもんかな…」
チビモンの楽天的な発言に大輔は頭を抱えるが、ヒカリはゆっくりとチビモンに歩み寄って、その小さな体に触れた。
「似てる…」
「「ん?」」
ヒカリの呟きに疑問符を浮かべる大輔とチビモン。
「あなた…コロモンのお友達?」
「んん?どうしてヒカリがデジモンのコロモンのことを知ってるんだ?」
コロモンと言うのはデジモンの幼年期Ⅱで、本来ならヒカリは知らないはずなのだが?
「そ、それは…」
「八神さん、光が丘で暮らしてたんだっけ?もしかしてあのでかいオレンジ色の恐竜のことじゃないか?」
「っ、覚えてるの?」
「うん、ばっちり。あの馬鹿でかい姿になる前からね」
さらりと良い言い放つ大輔にヒカリは目を見開くしかなかった。
当事者であった太一でさえコロモンとのことを忘れてしまったのに光が丘爆弾テロ事件の…コロモンのことを一部でも覚えている人物が自分の目の前にいる。
「もしかしてさ、あの2体の近くにいた女の子って…八神さんだったりする…?」
「っ…」
それを聞かれたヒカリは無意識に後退した。
「あ、ちょっと待って!逃げないでよ!!」
咄嗟に大輔は後退したヒカリの腕を掴んで逃げるのを妨害する。
「別に悪口なんか言わないからさ。質問に答えて欲しいんだ。光が丘爆弾テロ…だっけ?あの事件があったから俺は大輔に会えたわけだし」
「………分かった」
ヒカリは少し躊躇したが、答えるついでに光が丘爆弾テロ事件の全貌についても説明することにした。
それらを聞いた大輔とチビモンの反応は…。
「へえ、そのコロモン。チビモンと同じようにパソコンから出て来たんだ」
「え?」
「なあ、ヒカリ。もしかしてデジヴァイスと紋章持ってないか?」
「????」
チビモンの問いにヒカリは疑問符を大量に浮かべながら首を横に振る。
「これだよ。チビモンが光が丘で暮らしていた時の俺の家に来た時に持ってきた物なんだ」
ヒカリにデジヴァイスと紋章を見せる大輔だが、再び首を横に振るヒカリ。
「持ってない」
「そっかあ…でもさ、光が丘爆弾テロって別に八神さんのせいじゃないんじゃないの?」
「え?」
「だってさ、八神さんが外に出さなくてもコロモンは絶対に外に出て暴れてたよ。あんな風になってたんじゃ誰にも止められないって」
まだ3~4歳くらいの幼いヒカリに凶暴化したコロモンを止めるなんて無理だ。
特にあの2体の戦いを止めるなんて更に不可能。あれはどうしようもなかったのだ。
「それにしても不思議だよな。そのコロモン。一気にアグモン、グレイモンに進化するなんてさ…普通はかなりの時間をかけて進化するのに…うーん、不思議だ。というか事故だよ事故。気にするなよヒカリ」
チビモンがそのコロモンの異常性に首を傾げるが、今はいないコロモンのことを気にしても仕方ないので、取り敢えずヒカリのことに回答を出すことにした。
実際、光が丘爆弾テロ事件に関しては暴れた2体の方に問題があるわけだし、ヒカリが気にする必要性はないとチビモンは判断した。
「俺も八神さんのせいじゃないと思うんだよな」 「本宮君…」
「確かに友達があんなことをしたのはショックなのは分かる。でも、コロモンがしたことを八神さんが気にすることじゃないと思う。コロモンがまさかあんなことをするなんて思ってなかったろうし、誰も悪くないって!!事故だよ事故!!誰も怪我とかしてないし!!」
優しくヒカリに言う大輔にヒカリはずっと抑えていた物が噴き出してきたのか涙の粒をポロポロと目から零し始めた。
「え?八神さん!?」
「あー、大輔がヒカリを泣かした~。女の子を泣かせるのは罪になっちゃうんだぞ。逮捕されちゃうぞ?刑事ドラマでやってたぞ?」
「されねえよ!!八神さん、ごめん。」
「違うの…ありがとう…ありがとう2人共…」
自分のせいではないと、全てを知っても尚、そう言ってくれる2人にヒカリは感謝した。
こうして…後に奇跡と光の繋がりを持つことになる2人が強い絆を持つのであった。
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