永遠の謎
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357部分:第二十三話 ドイツのマイスターその十二
第二十三話 ドイツのマイスターその十二
「あの方の御心は常にそこにあるのだからな」
「それでなのですね。あの方に芸術は絶対のもの」
「不可欠のものなのですね」
「そうなのだ。だがその芸術は悲劇だ」
まただ。悲劇を言うビスマルクだった。
「あの方はローエングリンという鏡を通じて自身を見ておられる」
「ローエングリンが鏡となると」
「それでは」
「そうだ。エルザなのだ」
王はだ。彼女だというのだ。
「あの方がだ」
「エルザですか」
「そうだ。エルザなのだ」
こう言うのである。
「エルザの結末は悲劇だな」
「はい、悲劇です」
「愛は成就せず悲しみの中に息絶える」
「まさに悲劇です」
「その悲劇故にだ」
それでだと話していくのだった。そうしてだ。
ビルマスクはだ。こんな中でだった。王の結婚についてもまた話した。
「必ず幸せになって欲しいのだが」
「はい、そうですね」
「あの方には是非共」
「そうなって欲しいのですね」
「何度も言うが私はあの方が好きだ」
そうだというのだ。彼は王に対して敬意と好意を抱いているのだ。そしてそのうえでだ。王を常に見ているのである。ベルリンからでもだ。
そうしてだ。その目でだ。彼はさらに話す。
「立場が違ってもだ」
「政治的に相容れないものでも」
「それでもなのですね」
「確かに政治的には相容れない」
プロイセンとバイエルン、カトリックとプロテスタント、北と南、東と西、まさに何もかもが違っている。両国の関係はあくまで微妙だ。
しかしその微妙な中でだ。彼は話していく。
「だがそれでもだ」
「人として。君主として」
「あの方に敬意を抱いておられる」
「そうなのですね」
「その通りなのだ。だからこそ幸福になって頂きたい」
そうだというのである。
「どうしてもな。しかしだ」
「あの方は幸せにはなれない」
「エルザ姫であるが故に」
「それ故に」
「そしてそのことを殆んどの者が理解できない」
これもまただった。現実なのだった。
「悲しいことだ。だが私は」
「閣下は」
「どうされますか」
「私はあの方の力になる」
その幸せになれない王にだというのだ。
そのことを話してだ。彼は意を決して述べるのだった。
「幸せにはなれないとしてもだ」
「それでもですか」
「あの方の為にですね」
「閣下の御力を」
「少なくともバイエルンの者達とは違う」
王の理解者はバイエルンにはいなかった。プロイセンにいた。
そのことを話してだった。そのうえでだ。
彼は実際に王に祝辞を送り祝いの品も送っていた。そのうえで陰ながら王に対して様々な手を尽くしはじめていた。そのことについてだ。
王もだ。有り難いという感じでだ。ホルニヒに話すのだった。
「確かにあらゆるものが違う」
「ビスマルク卿ですか」
「あの方と私は何もかもが違う」
王もだ。こう言うのだった。
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