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永遠の謎

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332部分:第二十二話 その日の訪れその三


第二十二話 その日の訪れその三

「国民の反発もです」
「深刻なものがありますが」
「しかもワーグナー氏のこともまた」
 そのことも話される。ワーグナーのこともだった。
「また言われるかも知れませんが」
「それは」
「それは許してもらいたいものだがな」
 ワーグナーのことはだ。王にとってはささやかな望みだった。
 そしてその望みをだ。王はどうしてもだというのだった。
「王の為すことは、どうしてもな」
「限りがあるからですか」
「それはどうしてもなのですね」
「ワーグナー氏のことは」
「彼と共にいたいのだ」
 そのことを。王は切実に話していく。
「私は。それだけなのだが」
「ホーエンローエ卿はそのことについて賛成しておられます」
 そのだ。議会にも国民にも反発を受けている彼がだというのだ。
「そのことには希望を持っていいかと」
「彼は解任しない」
 ホーエンローエについてはそうだというのだった。
「確かにワーグナーのこともあるがだ」
「まずはバイエルンの為ですか」
「我が国の」
「我がバイエルン」
 バイエルンについてもだ。ワーグナーに、彼の芸術に対するのと同じだけの愛情を見せた。そして王の言うバイエルンはだ。こうした表現も為された。
「バイエルンの青だ」
「その青ですか」
「バイエルンの青」
「その青を」
「私は永遠に愛する」
 そのことは変わらなかった。バイエルン王として以上にバイエルンの者としてだ。
 それを話して。王は周りに話した。
「音楽を頼めるか」
「ワーグナー氏の音楽でしょうか」
「そうだ。ローエングリンだ」
 そのオペラからの曲をだというのだ。
「ローエングリン第三幕のあの合唱曲だ」
「婚礼の曲をですか」
「あの曲を」
「ピアノで頼む」
 そのピアノでだというのだ。
「それでな」
「わかりました。それではです」
「すぐに用意します」
「それとだ」
 音楽だけではなくだ。王はさらに言った。
「ワインも頼む」
「ワインは赤でしょうか、白でしょうか」
「白がいい」
 そちらだというのだ。
「青と白の組み合わせでいきたい」
「ワーグナー氏の音楽が青ですね」
 白ワインからだ。そのことを連想するのは容易だった。実際にこう話されるとだ。王は微かに笑ってだ。そのうえで応えたのだった。
「そうなる」
「そしてそこにですか」
「白も加わるのですね」
「ワインの白も」
「清純の白だ」 
 そうした意味もあるのだと話すのであった。
「それもまた見たい」
「白、清純の」
「では婚礼の意味もありますね」
「それも」
「婚礼か」
 それを聞いてだ。ふとだ。
 王はその顔を少し曇らせてだ。こう周囲に漏らしたのだった。
「私がゾフィーと結ばれるのだな」
「そうです。そうなります」
「その日は近付いています」
「もうすぐです」
「そうだな」
 何故かだ。顔に憂いを魅せて話す王だった。
 
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