永遠の謎
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330部分:第二十二話 その日の訪れその一
第二十二話 その日の訪れその一
第二十二話 その日の訪れ
王はだ。その時待っていた。周囲にもだ。そのことを話すのだった。
「間も無くだ」
「はい、ご婚礼ですね」
「ゾフィー様と」
周囲は王のその言葉に笑顔で応える。確かに婚礼の準備は進みその式の日も近付いていた。だが、だった。王は周囲にこう言うのだった。
「違う、それではない」
「違うのですか?」
「ご婚礼ではないのですか」
「それではないと」
「そうだ。それではない」
それを否定してだ。このことを話すのだった。
「彼が戻って来る」
「彼、ワーグナー氏でしょうか」
「あの方でしょうか」
「スイスは遠い」
王はその距離に無念を込めて述べた。
「あまりにも遠い」
「ホーエンローエ首相はワーグナー氏をこの街に迎えられますね」
「その為に動かれていますね」
「だからこそですか」
「ホーエンローエはわかってくれている」
王は彼について好意的に述べた。
「ワーグナーのことも。そして」
「そして?」
「そしてといいますと」
「ドイツのこともだ」
彼はだ。それもわかっているというのだ。
「父なる国のこともわかっている」
「ドイツですか」
「我等の国のことも」
「わかっていると」
「そうだ、わかっていて動いているのだ」
ホーエンローエについての評価はだ。こうしたものだった。
「だからこそ彼は必要なのだ」
「このバイエルンにですか」
「必要ですか」
「むしろわかっていないのは議会だ」
そちらだというのだ。
「彼等の多くはわかっていない。特に上院は」
「上院といいますと」
「あの議会は」
反プロイセン派が大勢を占めている。このことはバイエルンにいれば誰でも知っていることだった。バイエルン自体がプロイセンへの反発が強い。
「彼等はわかっていませんか」
「そうなのですか」
「ドイツのことが」
「時代の流れは変えられないのだ」
王は今度は時代について話した。
「それは神が為されるからだ」
「ではホーエンローエ卿は時代をわかっておられる」
「ドイツのことを」
「そうなのですね」
「そうだ。彼はわかっている」
また彼について肯定して話す王だった。
「だからこそ首相にしているのだ」
「ワーグナー氏のことだけではなくですか」
「違うのですね、それは」
「無論それもある」
嘘は吐かなかった。王は虚言を嫌う。
「だが。それだけではないのだ」
「バイエルンの為にも」
「この国の為にも」
「バイエルンのことはバイエルンが決められる限りは」
言葉はだ。ここでは限定するものになった。
「決めなければならない。この私が」
「王であられるからこそ」
「だからこそですね」
「王は。国を背負うもの」
その自覚は強かった。それを自覚しているからこその王だった。やはりバイエルン王はだ。王になるべくして王となった人物だった。
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