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永遠の謎

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319部分:第二十一話 これが恐れその九


第二十一話 これが恐れその九

 そうした中でだ。王は周囲の言葉も聞くのだった。
「では今日もですね」
「ゾフィー様と共に歌劇を御覧になられますか」
「そうされるのですね」
「ロイヤルボックスでな」
 まさにだ。王の場所でだというのだ。
「そこで共に観たい」
「ではゾフィー様にもその様にお伝えしておきます」
「それで宜しいですね」
「頼む」
 実際にそうしてくれと話す王だった。
「それで今宵の歌劇を観たい」
「ワーグナー氏のタンホイザーを」
「それをですね」
「ワーグナーの音楽を理解できる」
 ゾフィーがだ。そうだというのだ。
「その人と共に観られるのはいいことだ」
「そのワーグナー氏ですが」
「そうだ」
 王は話す。
「思えばこれまでは中々いなかったな」
「そうなのですか」
「そうした方はですか」
「いなかったのですか」
「いなかった」
 王は残念そうな顔で話す。
「私と同じ様に。彼の音楽を深く愛せる方はだ」
「だからゾフィー様とですか」
「一緒になられるのですか」
「そうなのでしょうか」
「それもある」
 そのことをだ。王は否定しなかった。
 否定しないうえでだ。話すのだった。
「それにゾフィーは前から知っている」
「そうですね。幼馴染みとして」
「そうしてですね」
「御互いに知っているのならやりやすい」
 王は再び話す。そのこともだ。
「知らない相手と。そこまで至るのは難しい」
「確かに。そうですね」
「幼馴染みの方は気心が知れてますし」
「それならば余計にですね」
「ゾフィー様とは」
「そのゾフィーに伝えておいてくれ」
 王はだ。こう周囲に話した。
「エルザにと」
「エルザ?ローエングリンのヒロインですか」
「その名前で、ですか」
「そうだ。伝えてくれ」
 そうしてくれと。王はさらに話した。
「ローエングリンが招待したいとだ」
「今度はローエングリンですか」
「白鳥の騎士ですか」
「そうだ。ローエングリンがエルザを招待したい」
 そのローエングリンとエルザが誰なのかはだ。最早言うまでもなかった。王はローエングリンを自分としてだ。ゾフィーをエルザとしているのだ。
 そのうえでだ。王は話すのだった。
「そう伝えてくれ」
「わかりました、それでは」
「その様に」
 彼等は応えはした。しかしだ。
 内心首を捻りながらだ。それで話すのだった。
「ですがそれでもです」
「そのお名前で伝えられるのですか」
「そうされるのですか」
「それ位は許してもらいたいものだ」
 王は甘えも見せた。ここでだ。
「何しろこれから歌劇を観るのだからな」
「そのワーグナー氏のですね」
「だからこそですか」
「この程度はいいだろう」
 その甘えを周囲に話す。そう話してだった。
 
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