永遠の謎
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253部分:第十八話 遠く過ぎ去った過去その三
第十八話 遠く過ぎ去った過去その三
庭園に面した場所には窓が連なりその反対側には鏡、それも数えきれないまでにある。そこには庭園が映し出されている。
その部屋を二人で歩きながらだ。彼は言うのであった。
「素晴らしいものだ」
「噂には聞いていましたが」
「噂以上だ」
王は恍惚とさえして言っていた。
「これ程までとはな」
「そうですね。これがベルサイユですか」
「フランスにあるものだ」
その国にだというのだ。
「しかしドイツにはない」
「それが問題なのですか」
「今はない」
王は言葉を限定させた。今はだというのだ。
「しかしこれからはだ」
「違ってきますか」
「私は。是非だ」
恍惚とした声でだ。王は話していくのだった。
「この美をドイツにも実現したい」
「ワーグナー氏と共にですね」
「その通りだ。ワーグナーの美とフランスの美」
「その二つを」
「両立させる」
まさにだ。そうするというのだった。
その話をしてだ。さらにだった。
王は言葉を続ける。その鏡に映る庭園を見ながらだ。
庭園は緑が美しい。そこもまたバロックの豪奢さがある。左右対称で幾何学の造りになっている。その宮殿を見ながらだ。王は話すのである。
「一つにさせると言うべきか」
「一つにですか」
「そうだ、一つにだ」
そうするというのである。
「そのうえでこの世にこの世にない美を実現させる」
「この世に?」
「そうだ、この世にはない美を実現させるのだ」
それが何か。具体的にはだった。
「白鳥の騎士、愛の泉とバロック、ロココがだ」
「両者は一つになるのですか」
「そうだ、一つになるのだ」
王の目指すその美を話していく。
「私はそれを実現させる」
「ドイツに戻られてから」
「そうする。その場所は」
そこが何処かもだ。王は話していく。
「バイエルンだが」
「ミュンヘンではありませんね」
「ミュンヘンには自然がない」
王は首を横に振って述べた。
「森も湖もだ」
「その二つが必要なのですか」
「銀と金」
白鳥の騎士とだ。バロックの色だった。
「その二つだけでは駄目なのだ」
「そこにその二つですか」
「緑と青だ」
自然の二色、これもまた王が愛する色だった。
とりわけだった。王はこの色を話した。
「青だ」
「青ですか」
「そうだ、青が必要なのだ」
こう言うのである。青は絶対に必要だとだt。
そうしてだ。王はその青についてもだ。ここで話すのだった。
「この宮殿には青がないな」
「そうですね。ここは」
「ベルサイユは元々水に乏しかった」
それでわざわざ遠い場所からかなりの労力と費用をかけて水を持って来たのだ。ベルサイユは元はただの狩猟地に過ぎなかったのだ。
そこにだ。王は宮殿を築いたのだ。それがこのベルサイユ宮殿なのだ。
「だからだ。ここにはだ」
「青が乏しいですか」
「緑もあるがそれは人工のものでしかない」
こう語っていく。
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