| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

相談役毒蛙の日常

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

三十四日目

 
前書き
≪登場人物の語り≫という初の試みです。
モノローグが灯俊。
「」が回想内のセリフ。
『』が話を聞いている菊岡とキリトです。 

 
あの時メティとサンディを助けてからアジトのログハウスに戻ったんだ。

『ログハウス? 相談役のプレイヤーホームか?』

いや、近くの村でNPCの家に『下宿』していた。

『NPCの家か……』

続けるぞ。

簡単な事情を聞いてからメティとサンディを小脇に抱えて翅とタラリア使って帰ったんだ。

そしたら二人とも気が抜けたのかわんわん泣き出したんだよ。

「アンタ……いったい何があったの?」

ってカールターナーに聞かれたから、二人をあやしながら事情を説明したんだ。

「無限PKですって!? ……アンタソイツらどうしたのよ?」

「取り敢えず全員殺してリメインライトにした」

「それだけで帰って来たって言うの?」

「この二人を助けるのが優先だろうが」

「………そうね」

って会話があった。

『その後君達はどうしたんだい?』

その後は少し苦労したよ。

二人が離してくれなかったんだ。

「やなの! おいてかないでお兄さんお姉さん!」

「離れたくないの!」

ってな。

『離してくれなかったって……当時9歳だろ? 相談役とカールターナーさんはどうやって説得したんだ?』

あんま言いたくはないが……二人の家に行った。

『『は!?』』

ちょうど日曜日の午前だったからな。

『ちょっと待ってくれ灯俊君。つまり君達は二人からリアルの住所を聞き出して押し掛けたのかい?』

ネットリテラシーの話は後で聞こう。

あの時は仕方なかったんだよ。

あの二人を置いては行けなかった。

家に行くと二人の父親が応じてくれた。

「はい、氷見ですが。どちら様でしょうか?」

って。結構若い人だったな。

『取り合ってくれたのかい?』

慧奈が取り合わせたんだよ。

あの時の慧奈の剣幕は凄かった。

親なら責任を、とか。

子供を守れ、とか。

『凄いな…カールターナーさん』

ああ、それで部屋に上がると二人に抱きつかれた。

俺達はリアルとヴァーチャルで容姿が同じだからな。

『へぇ…。お父さんはその間どうしてた?』

凹んでた。

部屋で泣いてた二人に気付けなかった事を後悔してたよ。

『母親は?』

慧奈に泣かされてた。

『『うわぁ…』』

それで俺と慧奈と林檎と蜜柑と父親と母親で色々話し合ったのさ。

その時はリアルバレなんて気にしていなかった。

どうでもよくなるくらい、二人が怯えていたからだ。

『それで?』

俺達が報復の話を持ち出したら両親は土下座して言ったんだ。

「どうかお願いします」

ってな。

「私たちでは報復する力がありません。どんなお礼でもいたしますから。どうか」

すごく悔しそうだった。

本心は自分達の手で無限PK犯をぶん殴りたかったんだろうな…。

『………それがALOで初めて【確認】された無限PK事件の顛末、っていう事だね?』

まだ終わってないぞ。

俺達は持ってきていたアミュスフィアを使って双子の部屋でダイブした。

『よくもまぁ、他人の前でダイブできたね?』

あの夫婦はそんな奴じゃねぇよ。

ダイブした俺達は四人で当時のカオスブレイブズの本拠地だったアルンの宿屋に向かったんだ。

幸い環状山脈の内側の話だったからな。

そう時間はかからなかった。

宿屋の中にはギルマスのテルキスだけが残っていた。

他の面子は出払っていた。

「トード…? そのケットシーはどうしたんだ?」

俺と慧奈の後ろに隠れる双子にテルキスが驚いていた。

「テルキス。一つ頼みがある」

「俺とお前の仲だ。言ってみろ」

「いまから少し私情で動く。ギルドに迷惑が掛かる可能性がある。抜けさせてくれ」

「テルキス。私からもお願いするわ、テルキス」

「待て。事情を話せ。さすがにいきなり抜けさせてくれはないだろう?」

俺達はテルキスに事の次第を話した。

テルキスはぐっと拳を握りしめてから、言った。

「脱退は認められない。その報復の責任を俺にも負わせろ」

「テルキス。俺だけならBANされるだけですむ。
だがお前まで関わったら、誰が世界樹を斬り倒すんだ!」

「ここはゲームだ! 世界樹攻略はゲームでしかない! だがその双子の件は違うだろう!
リアルが、彼女らの人生にまで関わるだろう!」

その言葉は俺の胸に刺さったね。

「俺とお前の仲じゃないか。のけ者にしないで欲しい」

「……わかった」

「カールターナー。君の脱退も同じくだ」

「ありがとう。テルキス」

『それでギルドマスターは手伝ったの?』

ギルドで貯蔵していた全回復アイテムの無制限使用許可を出してくれた。

俺達が勝手に使った、と他のメンバーに説明してくれるって確約と共にな。

『つまり報復を見過ごし何かあれば監督責任という形で責任を取る、と?』

ああ、そういう事だ。

『それでどうやって報復したか聞かせてもらっていい?』

まず、カールターナーが囮として例のポイント周辺を非武装で歩き回る。

案の定奴らカールターナーを狙って来やがった。

そこを俺が煙幕はって対集団対人装備で突っ込んで全員抹殺。

『よくできたなそんな事…』

無限PKなんぞやる奴が正面戦闘で強いはずないだろ。

せいぜい10くらいだったしな。

で、カールターナーを世界樹の滴で蘇生。

一人ずつ復活させては腕一本を除いて切り落としてウィンドウ無理やり開いてペインアブソーバーを8まで下げて…

『待て! ペインアブソーバーを下げただって!?』

ああ。ALOでは倫理コードっていう性行為を可能にする設定のもう一段深い階層にペインアブソーバーを8まで下げる機能がある。

『初耳だ……』

で、全員の設定を弄ってからログアウトさせる暇もなく殺しまくった。

何度も何度も。

30回目くらいでシステム的障壁に阻まれてGMがで張ってきた。

『それはそうだろうね…』

まぁ色々事情を聴かれたから全部話した。

無限PK犯は俺と慧奈が尋問したら今までも無限PKをやっていたらしくてな。

俺達はペナルティだけ。

無限PK犯は全員垢BAN。

カオスブレイブズは一定期間の資産凍結。

そしてその後俺は責任を取ってサブマスの名前を返上、相談役になった。

双子は俺達カオスブレイブズが面倒を見ることで話が落ち着いた。

コレが顛末だ。

満足したかい? 公務員さんよ。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧