神託
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第一章
神託
アルゴスの王アドラストスは今悩んでいることがあった、それは彼の娘達のことであった。
彼は王妃にも重臣達にも深く考えている顔で相談していた。
「娘達もいい歳だ」
「だからですね」
「そろそろと言われるのですね」
「そうだ、いい婿を迎えてだ」
そうしてとだ、アドラストスは周りに話した。
「そのうえでな」
「幸せに暮らしてもらいたい」
「そう言われるのですね」
「そうだ、勇敢で強くな」
そしてと言うのだ。
「尚且つ血筋もいい」
「そうした若者をですね」
「二人の姫様の婿殿としたい」
「そうお考えですね」
「そうだ、しかしだ」
それでもとだ、アドラストスは言うのだった。
「言ったな、アルゴスの王女なのだ」
「その立場に見合う婿」
「そうでなければですね」
「婿には出来ぬ」
「そのことは絶対ですね」
「勇敢で強く血筋もいい者だ」
またこの条件を言った、アドラストスはアルゴスの王宮の中でよくこうしたことを話す様になっていたのだ。
「そうした者でなければ駄目だ」
「それもお二人ですね」
「それぞれの姫様に」
「お二人にそれぞれ婿を取ってもらう」
「そうなってもらいますね」
「この条件だ、そうなるとだ」
まさにと言うのだった。
「難しいな」
「はい、アルゴスの王女の婿殿」
「それに相応しい勇気と強さと血筋の持ち主」
「それもお二人となると」
「一人でも難しいですが」
「さて、念入りに探すしかないが」
それでもとだ、アゴラストスはまた言った。
「果たして誰がよいか」
「ヘラクレス殿もテーセウス殿も身を固めておられますし」
「オルフェウス殿はどうもですし」
「カストルとポルックス殿も結婚されました」
「どうもこれといってです」
「相応しい方がおられませんね」
「全くだ、誰かいないのか」
このギリシアにとだ、また言ったアドラストスだった。
「念入りに探すか」
「そうされますか」
「じっくりと」
「娘達の為にな」
こう言うのだった、しかしだった。
これと言った者は中々見付からなかった、それでたまりかねたアドラストスは自らデルフォイに神託を授かりに赴きそこでだった。
見事神託を受け取った、だがその神託についてだ。彼はアルゴスに戻ってから王妃である己の妻に話した。
「獅子と猪にだ」
「娘達をですか」
「それぞれ嫁がせよと言われた」
その様にというのだ。
「そうな」
「それはまた」
夫である王の言葉を聞いてだ、妻である王妃も怪訝な顔になって述べた。
「おかしな神託ですね」
「おかしいというかな」
「わからないですね」
「どういう意味か」
アドラストスは腕を組み難しい顔になっていた、そのうえでの言葉だ。
「わしには全くわからぬ」
「私もです」
「どういうことなのだ」
アドラストスはまた言った。
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