空に星が輝く様に
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459部分:第三十六話 思わぬ出会いその一
第三十六話 思わぬ出会いその一
第三十六話 思わぬ出会い
狭山と津島はだ。適当な時間を過ごしていた。
もう誰もいなくなった晩秋、いや冬に入った海辺を二人で歩いていた。
海も空も夏の爽やかさはない。何処か沈んでいて鉛色のものを見せていた。二人はそこをだ。冬服で歩きながら話をしていた。
「なあ」
「何よ」
「どっか別の場所行かないか?」
狭山はこう津島に提案するのだった。
「ここ何かな」
「いても面白くないのね」
「何もないしな」
それでだというのである。
「だから。何処か行かないな?」
「行くのはいいけれど」
津島の返答は条件付賛成といったものだった。実際にそれが顔に出てだ。完全とは言えない晴れやかさをそこに見せていた。
「それでもね」
「行く場所が見当たらないか」
「そうなのよ。今一つね」
津島はそうだというのだった。
「それで何処行くのよ」
「ファミレスなんてどうだよ」
狭山が提案するのはそこだった。
「ほら、ここから近くのな」
「ああ、あそこね」
「あそこ今食べ放題やってんだよ」
狭山の顔がここで明るいものになった。食べ放題ということを自分の口で言うと自然とそうなったのである。
「だからそれでさ。どうだよ」
「そうね。それじゃあね」
津島もだ。その顔が明るくなっていた。
「行きましょう。それでだけれど」
「ああ、それで?」
「何の食べ放題なの?」
津島が問うのはこのことだった。
「ケーキ?それとも別の?」
「パスタらしいぜ」
狭山はそれだというのである。
「それだってさ」
「パスタね」
「パスタ好きだろ」
「ええ、好きよ」
それはその通りだと答える津島だった。
「スパゲティもマカロニもね。ラザニアも」
「じゃあ丁度いいよな」
「ただし。味には五月蝿いわよ」
思わせぶりな笑みになってだ。狭山に告げた。
「それはね。かなりね」
「それは知ってるさ」
「ああ、やっぱり」
「御前昔から味には五月蝿いだからな」
その辺りは付き合いの長さと深さ故に知っていることだった。
「全くよお」
「何よ、じゃあまずいの?そのお店」
「まずい店を紹介する奴がいるかよ」
「意地悪でそういうことする奴はいるでしょ」
「そいつ相当性格悪いな」
狭山はその話を聞いてすぐにこう返した。
「っていうかそんな奴いるのかよ」
「いることはいるみたいよ」
「世の中ってのは色々な奴がいるんだな」
「下には下がいるのよ」
確かにその通りであった。人間にしても世の中のあらゆるものにしても上には上がある。だがそれと同時に下には下がいるものなのだ。
「だからよ」
「下には下がかよ」
「性格もね。人間の屑よりまだ酷いのがいるから」
「屑以下かよ」
「まあ生まれること自体が間違いだったような奴ね」
「ああ。あの前の官房長官か」
そう言われるとだった。狭山はすぐにこの単語を出したのだった。
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