ベルギーの歴史
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第四章
「わからないね」
「ローマ帝国になったりイスラムの勢力圏になったりしてますね」
「そして今のエジプトは」
「共和制のあの国は」
「それこそナセルからだよ」
このかつてアラブの盟主を目指した人物からだというのだ。
「そう考えるとかなり短い筈だよ」
「はい、ですが地域として考えると」
「とんでもなく長い歴史に成るんだよ」
「その通りですね」
「今のエジプト人と王朝時代のエジプト人は違うよ」
「もうかなり血が変わってますね」
「紀元前のエジプト人の血は残っていても」
それでもというのだ。
「もうかなり違っているしね」
「エジプトはエジプトでもですね」
「かなり違う国になっているよ、しかしね」
「歴史としてですね」
「あの国はエジプトなんだよ」
そうなるというのだ。
「長く続いているね」
「そうなりますか」
「そう、だからベルギーの国は短いのか」
「そうは言えないですね」
「そうなるのだよ」
マウニッツはハインリヒに穏やかな声で話しハインリヒもマウニッツのその言葉に頷いた、そうしてだった。
家に帰って弟のフリードリヒにその話をした、すると彼は目を丸くさせてそのうえでこんなことを言った。
「まさかね」
「まさかだね」
「そんな考えがあるなんてね」
「僕も思わなかったよ」
ハインリヒ自身もというのだ。
「実際に」
「うん、そう考えたら本当にベルギーの歴史は長くて」
「その起こったことも大きいね」
「そうだね」
「そう思うと誇らしくもあるし」
「変なジョークで言わないで済むね」
ベルギーの歴史の教科書は薄い、そのことがだ。
「ましてや勝手に半万年の歴史があるとか言い出したり」
「いや、それはないよ」
フリードリヒはハインリヒの今の言葉に笑って返した。
「幾ら何でも」
「古代ギリシアよりもずっと昔なのに」
「うん、そんな国欧州の何処にもないよ」
「そこまで歴史のある国となると」
ハインリヒは真面目に話した。
「本当にエジプト位かな」
「あそこ位だよね」
「そうだよ、ただね」
「ただ?」
「いや、アジアの方にそんなことを言っている国があったかな」
「中国や日本よりもずっと長いのに」
「そうだったかな」
「まさか」
それはないと話しながらだ、そうしてだった。
二人はベルギーの歴史のことに自虐的なジョークは言わなくなりそのうえで自国の歴史を素直に学ぶ様になった。実は案外長く色々なことがあるとわかった自国の歴史のことを。
ベルギーの歴史 完
2018・5・14
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