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レーヴァティン

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第六十三話 天津神の場所でその一

               第六十三話  天津神の場所で
 社の中に入ってだ、その木々の中に白い神聖な空気が満ちている場所を歩きつつだ。耕平は英雄に神妙な顔で言った。
「さっきはびっくりしたわ」
「俺もだ」
 英雄は自分の隣から話してきた耕平に応えた、当然他の面々も共にいる。
「子供が急に泣き止んだからな」
「それで笑い転げたからな」
「あれには驚いた」
「というかな」
「何だ」
「あれは反則やろ」
 思い切り笑っている顔でだ、耕平は英雄に言うのだった。
「それがしも思わず笑ったわ」
「それ程俺の落語はよかったか」
「落語自体も面白かった」
 耕平は肝心のそちらもよしと答えた。
「上手やないか」
「そうか」
「しかもそれを身振り手振りは入れるけれどな」
 それでもというのだ。
「それを表情を変えずに言うやろ」
「そのことがか」
「ツボになってな」
 笑いのそれにというのだ。
「あの子供にめっちゃ受けたんや」
「そういうことか」
「実際見てておもろかったわ」
「拙者もそう思ったでござる」
 智も笑って言ってきた。
「あれはかなりのものだったでござる」
「そこまで面白かったか」
「あれを落語の席で行えば」
 まさにというのだ。
「大人気になるでござるよ」
「そこまでなるか」
「落語家を目指してはどうでござるか」
「俺にお笑いの才能はあるか」
「少なくとも落語は」
 この分野においてはというのだ。
「確信を以て言うでござる」
「そうか、ではな」
「目指してみるでござるか」
「考えてみる」
 まさにとだ、こう言ってだった。
 英雄は大社の中を歩いていった、所々にある社のどれにも神が感じられ木の一本一本までもだった。
 ある大木を見てだ、峰夫が言った。
「これは神木であります」
「そう思うか」
「感じたであります」
 共に木を見る英雄に対して話した。
「それを」
「そうか」
「流石は伊勢の木でありますな」
「木も神木になるか」
「長い間生きているとであります」 
 それでというのだ。
「やがて力を備えるでありますが」
「この伊勢にいるとか」
「余計にであります」
「神木になりやすいか」
「そしてなったであります」
「そうか、やはり伊勢はな」
「特別な場所であります」
 この島においてもそうだというのだ。
「聖地と呼ぶにふさわしい場所であります」
「木に至るまで神となるか」
「まさに八百万の神々の中心の地」
 こうまで言う峰夫だった。
「そう言うべきであります、そしてこの伊勢の中に」
「巫女がいてだな」
「彼女がでありますな」
「若しかすると今度の仲間かも知れない」
 八人目、それになるかも知れないというのだ。
「若しかするとな」
「そうか、ではな」
「これからでありますな」
「そいつのところに行こう」
 こう言いつつだ、一行は途中手を合わせることも何度もしてだった。そうして境内を巡っていって。 
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