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真田十勇士

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巻ノ百四十六 薩摩入りその四

「この度の戦は」
「うむ、泰平の世は定まったな」
「先の戦で」
「それならばな」
「我等のこの度の戦はまさに」
「あの御仁は武士の誇りの為に来られる」
 この駿府にというのだ。
「そして我等は忍として迎え撃つことになる」
「迎え撃つからには勝つ」
 無明の言葉は冷静なものだった。
「ただそれだけのこと」
「左様、忍にも誇りはあるな」
「与えられた責を確実に果たす」
「それをしてもらう、そして我等も忠義はあるな」
 影に生きて影に死ぬ、その忍達にもとだ。服部は無明に問うた。
「そうであるな」
「はい」
 無明も確かな声で答えた。
「まさに」
「ならば」
「うむ、大御所様への忠義がない者はおるか」
 このことに返事はなかった、皆目だけで返事をしていた。そして今度は氷刃が服部に対して言ってきた。
「だからこそここにおります」
「皆そうであるな」
「忍である我等を武士にしてくれたのですから」
「拙者も含めてな」
「その御恩がありますので」
 それ故にというのだ。
「我等もです」
「ならばな」
「はい、忠義を賭けて」
「我等は戦おうぞ」
 その最後の戦をというのだ。
「そうしようぞ」
「要はあの御仁達を帰らせるだけ」 
 道化はあえて軽くだ、彼のいつもの口調で話した。
「それだけのこと、難しく考えずに」
「全力でだな」
「戦えばいいだけ、あの御仁ならここで敗れれば」
「それでじゃな」
「もう二度と来ませぬ」
 この駿府にというのだ。
「そうなりますので」
「もう首を取ることもないしね」
 妖花も笑って話した。
「誰の首もね」
「そうだ、あの御仁達の維持と我等の維持の戦よ」
「そうした戦であり」
「難しい戦ではない」
「そうだね、だったらね」
「大御所様をお守りするぞ」
 十二神将筆頭でもある妖花にだ、服部は言った。
「よいな、大御所様のお傍には拙者が控えてな」
「私達はだね」
「あの御仁達を防いでもらうぞ」
「わかったよ、何があろうとも」
 妖花は不敵に笑いつつ言った、そしてその手に紅蓮の炎を宿らせてさらに言った。
「私達がいるから安心してね」
「その様にな、ではもう暫くすれば戦になるが」
「皆ね」
「全力で戦え、そしてな」
「死ぬこともだね」
「ならん」 
 このことも言う服部だった。
「最早戦国の世は完全に終わった、ならな」
「もう血を流すこともですな」
「あってはならぬ」
 神老にはっきりとした声で答えた。
「よいな」
「はい、我等の働きは戦場と変わらぬことも多いです」
「他の大名家に忍び込むことも多いが」
「そこで殺されることも多いです」
「命懸けじゃ、しかしな」
「それでもですな」
「出来るだけじゃ」
 こう言うのだった。 
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