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別伝 ヒルダの殺人クッキング


今回のヒルダクッキング=シャマルクッキングで思いついた、千文字ほどの短編。
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別伝 ヒルダの殺人クッキング

新帝国暦1年7月6日

■オーディン キュンメル男爵邸

 この日皇帝に即位したラインハルトは、即位後初の臨御先、キュンメル男爵邸へ向かった。

キュンメル男爵がラインハルト一行をもてなす為に中庭へ誘う。
料理はヒルダが腕によりをかけた料理で有った。

「良い料理ですよね、ヒルダ姉さん」
「ええ・・・・・」
「この料理は、陛下の為にヒルダ姉さんが腕によりをかけた料理ですよね。
でもこの事は知らないでしょう・・・・・この料理はBC兵器並の破壊力があることを。
そして、陛下をヴァルハラへお迎えしようとしているんですよ」

そして全ての風景が一瞬のうちに漂白されたのだ。危険きわまりないヒルダの料理の名前を耳にして、キスリング准将のトパーズ色の瞳が緊張をはらんだ。

「ハインリッヒ、あなたは・・・・」
「ヒルダ姉さん、あなたを恥かしめるつもりは本意ではなかった。出来れば料理を作って欲しくはなかった。でも今更陛下にあなたの料理を食べさせない訳にはいかないからね。伯父上は悲しむだろうけど仕方ない」

「陛下ご感想はいかがですか?」
「此処で料理の為に殺されるなら、予の命数もそれまでだ。惜しむべき何物もない」
「けどヒルダ姉さんの為に陛下に食べさせる訳には行かないのですよ」
ハインリッヒはそう言いながら、自ら料理を食べようとする。

「ハインリッヒ、お願い未だ間に合うわ、料理を食べるのは止めて」
「・・・ああ、ヒルダ姉さん、あなたでも困ることはあるんですね。僕の見るあなたはいつも颯爽としていて、眩しいぐらい生気に溢れていたのに」

「静かに後数分だ。ほんの数分だけ、僕の手に料理を握らせておいてくれ」

遂にハインリッヒはヒルダ料理を食べてしまった。
そして倒れるハインリッヒ。
駆けつけるヒルダ。

「ハインリッヒ、あなたは馬鹿よ・・・・」
「僕は何かをして死にたかった。どんな悪いことでも、馬鹿なことでもいい。何かして死にたかった・・・・ただそれだけなんだ」

ヒルダがハインリッヒを抱きしめながら、ハインリッヒがつぶやく。
「・・・・キュンメル男爵家は、僕の代で終わる。僕の病身からではなく、僕の愚かさによってだ。僕の病気はすぐに忘れられても、ヒルダ姉さんの料理を食べた愚かさは幾人かが記憶してくれているだろう」


 
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