空に星が輝く様に
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245部分:第十八話 運動会その三
第十八話 運動会その三
「向こうは常に全力で一番手強い相手にぶつかってるけれど」
「こっちは違うよな」
「勝てる勝負で勝って負ける勝負は次点」
「そうしていくんだな」
「そう、それで斉宮は」
あらためてだ。陽太郎をちらりと見た。
「それ」
「応援か」
「斉宮は声が大きいし体力もあるから応援に向いてる」
「剣道って声出すしな」
陽太郎はまずは声のことを話した。剣道はとかく声を出す武道である。
「それでか」
「そう。それで暑いのには慣れてる」
「ああ、この長ランな」
「防具と比べてどう?」
「そりゃ防具の方がずっと辛いさ」
陽太郎はこう答えた。
「あの暑さなんてな。それこそな」
「そういうこと考えて応援に回ってもらった」
「それでか」
「適材適所」
これもまた椎名の好きな言葉だ。
「だから」
「それで俺は殆どこっちに専念してか」
「斉宮も運動は苦手じゃないけれど」
伊達に剣道部ではない。陽太郎もそれなりに運動神経はある。むしろそれなり以上だ。しかし椎名はあえて彼を余りださなかったのである。
「向いている競技が少なかったから」
「少ないか?」
「剣道と陸上の筋肉は全然違う」
このことも指摘してみせたのだった。
「だから」
「筋肉か」
「赤瀬だったら力系がいけるけれど」
「柔道だからだよな」
「そう」
まさにその通りであった。
「赤瀬の柔道は身体を活したものだから」
「力凄いしな。体格がああだしな」
「だから赤瀬には結構出てもらってる」
「それで俺は応援だな」
「応援は斉宮」
ここでも陽太郎を見ている。
「そういうこと」
「わかったぜ。それじゃあやらせてもらうからな」
「点差は縮まらないけれど最後に勝つのはうち」
「最後はか」
「そう、勝つ」
勝てる、ではなかった。ここでもだ。
「勝つから」
「そうだな。じゃあ俺もな」
「どうしたの?」
「その言葉通りやらせてもらうぜ」
爽やかに笑っての言葉だった。
「応援な」
「そうして。それじゃあ頑張ること」
「ああ。ところでな」
「ところで?」
「ジュース飲まないか?」
こう椎名に言ってきたのである。
「これから買いに行くけれどな」
「そうなの」
「お金出したらついでに買ってくるよ。何がいいんだ?」
「豆乳」
それだというのだった。
「豆乳を御願い」
「豆乳かよ」
「それか野菜ジュース」
若しくはこれだというのである。
「豆乳がなければだけれど」
「野菜ジュースな」
「身体にいいから」
椎名はそれを考慮して話すのだった。
「だからそれがいい」
「そうか。椎名ってヘルシー志向だったよな」
「医食同源」
またしても言うのだった。
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