| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

空に星が輝く様に

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

211部分:第十五話 抱いた疑惑その十五


第十五話 抱いた疑惑その十五

「そういうものなんだな」
「お料理なんか特にそうですし」
「お菓子なんかも?」
「やっぱり無意識のうちに手早く」
 するというのである。
「それに慣れで」
「そうしないといけなくてしかもやっていくうちに慣れる」
 月美の言葉を総合して合わせての言葉である。
「そういうことなんだ」
「そうなりますね」
「成程なあ。そうなんだ」
 こんな話をしながら駅に向かった。そしてそのうえで駅から同じ電車に乗る。そして同じ電車にであった。
 星華もいた。だが彼女は最初二人には気付いていなかった。部活の先輩の一人と一緒にいてだ。そのうえで彼女の話を聞いていたのだ。
「アメリカでだけれどね」
「何かあったんですか?」
「凄い選手が出て来たのよ」
 アメリカのバスケの話をだ。先輩から聞いていたのだ。
「身長二メートル二十でね」
「えっ、随分高いですね」
「それでもう跳躍なんかね」
「どんな感じですか?」
「空を歩いてる感じなのよ」
 こう星華に話す。そして鞄からバスケの雑誌を出してきてそのうえでさらに話す。そこには髪を短く刈った黒人が明るい笑顔でいた。
「この選手だけれどね」
「何かはじめて見る選手ですね」
「ルーキーなのよ」
 それで星華も知らないというのである。
「この選手はね」
「そうだったんですか」
「もう出て来ていきなり大活躍なのよ」
「いきなりですか」
「そう、もう凄いのよ」
 その選手の写真を見ながらだ。先輩は話していく。
「タイトルも取りそうだしね」
「一年目で、ですか」
「そうよ。凄いでしょ」
「はい、本当に」
 先輩の言葉に笑顔で頷いていた。
「こんな選手がいるなんて」
「そうでしょ。それで注目してるのよ」
「アメリカですか」
 星華はにこりと笑って先輩の言葉に返した。
「一度行ってみたいですね」
「そう思う?やっぱり」
「機会はないですけれど」
 星華はここでは苦笑いになった。実はアメリカには行ったことがなかったりする。
「けれど本当に一度は」
「行ってみたらいいわよ。特にね」
「特に?」
「ロスね」
 所謂ロサンゼルスのことである。アメリカ西海岸の街だ。
「あそこがいいわよ」
「ロスですか」
「私アメリカはそこしか行ったことがないけれど」
 先輩はこう言いはしたがそれでも笑顔で話す。
「一度ね。行ってみたらいいわ」
「大学に入ったらアルバイトして行ってみます」
「そうしたらいいわ。じゃあ機会があればね」
「はい、それじゃあ」
 こんな話をしていた。この時は星華にとってはいい時だった。
 しかし先輩と別れて電車から出るとその時にだ。彼を見てしまった。
「それじゃあね」
「はい」
「あれっ?」
 ここでだ。隣の車両から出て来る陽太郎を見かけた。
「あれって。斉宮?」
「またな」
「はい、また明日」
 こう話してだった。誰かと別れて車両から出たのである。問題はだ。
 相手だった。誰か見ようとする。しかしその前に電車は出てしまった。
 それで見られなかった。そのことに残念に思っているとだった。
 陽太郎が来てだ。声をかけてきた。
「よお」
「斉宮?」
「ああ、俺だけれど」
 陽太郎はいつもの明るい笑顔で応えてきた。
「一緒の電車だったんだな」
「そうね。珍しいわよね」
 誰と一緒だったのか気になりながら応える星華だった。
「お互い部活が違うようになってね」
「それって」
「そうだよな。何か同じ高校になってもさ」
「部活が違うと会うことも減ったわよね」
「クラスも違うしな」
「ええ」
 部活もクラスも違うということを再認識してしまった。すると星華の顔は自然に曇ってしまった。そこに彼女の感情が出てしまっていた。
「そうよね、本当に」
「こんなに会うことが減るなんて思わなかったよな」
「せめて同じクラスだったらね」
 ここでも感情が出てしまっているが陽太郎は気付かない。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧