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空に星が輝く様に

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185部分:第十四話 夏の終わりにその三


第十四話 夏の終わりにその三

「それが私」
「で、斉宮は完全に陥落か」
「完敗よね」
 二人は今度は陽太郎を見て話した。
「もうどう見てもな」
「一勝もできてないわね」
「何か腑に落ちないな」
 陽太郎は今は憮然とした顔になっていた。
「今の流れってよ」
「けれど悪くない筈」
 それはしっかりと言う椎名だった。
「斉宮にとっても」
「まあそれはな」
 それを言われるとだった。陽太郎も頷くのだった。
「やっぱり。月美と仲良くなれるしな」
「もっともっと仲良くなるといい」
 椎名は自分のコーラをストローですすりながら述べた。
「応援してるから」
「有り難うな、それは」
「ただし泣かせたら許さない」
 このことは釘を刺すのであった。
「それは絶対に」
「わかってるよ。それはしないからな」
「あと何があっても護って」
 今度はこう言ってきたのだった。
「つきぴーを」
「護れってか」
「そう、あれで心が弱いし素手だと弱いから」
 居合や弓道をしていてもそれはだというのだ、
「だから護って」
「ああ、わかったよ」
 陽太郎もそれで納得して頷いてみせた。
「それじゃあそれはな」
「そう、泣かせないで護る」
 二つを要約してもみせて話す。
「それはして」
「ああ、俺だってさ」
「男だから?」
「男以前に人間だからな」 
 だからだと返すのだった。
「それでだよ」
「そう、人間だから」
「俺そういうことしないよ」
「絶対にそうしてね」
「何があってもな」
「だったらいい」
 ここまで聞いて頷く椎名だった。そうしてそのうえでまた話す。
「それにしても斉宮って」
「俺かよ」
「うん、思ったよりしっかりしてる」
 そうだというのだった。今それを話したのである。
「そこで男って言わなかったし」
「男とか女とかそういう言い方って好きじゃないしな」
「だから今みたいな言い方にしたの」
「ああ、今はな」
 そうだと返したうえでだった。さらに話す。
「昔はそういう言い方していた時期もあったけれどな」
「何でそれ止めたの?」
「中学校の教師で最低な奴がいてな」
 よくある話だ。最低な教師というものはどの学校にもいる。むしろそうした人間が異常なまでに多いというのが学校という場所の問題であるのだ。
「それでそいつがよく男がどうとか言っててさ」
「だから止めたの」
「ああ。止めた」
 それでだというのだった。
「だからそういう言い方はしないんだよ」
「成程」
「とにかく酷い奴でな。暴力の振るい方が半端じゃなくてな」
「どんな風だったの?」
「いつも竹刀持っててそれで殴ってな」
 今度は赤瀬の問いに答えていた。
「それでな。一旦殴ると何十発も殴ったりな」
「一旦暴力を振るったら止まらないタイプだったんだ」
「しかもそれがしょっちゅうだったんだよ」
「異常なまでに暴力的ってことだね」
「受身知らない生徒に床で背負い投げしたりな。これ前に言ったかな」
「そういえばそうだったかな」 
 赤瀬はここまで聞いてこう述べた。
 
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