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ONE PIECEを知らないエヴァンジェリン中将が原作を破壊するようです

作者:羽田京
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第1章 ネオオハラ・イン・ブリザード
  第6話 それは幼女の皮を被った化け物

 
前書き
VS.サウロ 原作よりもパワーアップしています。
第1章もこれで最後です。正ヒロイン修正力さんが暗躍します。 

 
「偽物?」

 何を馬鹿な。600年間の修行の結果、俺は原作キャラ(エヴァンジェリン)になったんだ。
 お前ごときに何がわかる!
 私は原作キャラ(特別)だ。モブ(お前たち)とは違う!
 この世界が現実(リアル)だって分かってる。
 けれど、俺が! 私が! エヴァンジェリンである事実だけは誰にも否定させない!

「そう、お、私は、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル、真祖の吸血鬼、600万ドルの賞金首、闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)不死の魔法使い(マガ・ノスフェラトゥ)

 私はエヴァンジェリンだ。
 私がエヴァンジェリンだ。
 私だけがエヴァンジェリンだ。

「何を言っているだで?」

 だから、外の世界(原作)に参加する権利を得たんだ!
 昔の俺(ニート)とは違う!
 "エヴァンジェリン" なんだから "誇りある悪" なのは当然なんだ!


 だって、原作ではそうだったから。

 
 ん?……なら、私は何も間違っていないな。心理戦か!
 このエヴァンジェリンの目をもってしても見抜ぬとは! 一生の不覚!


「戯言は終わりだ! こちらから行くぞ! リク・ラク・ラ・ラック・ライラック、魔法の射手(サギタ・マギカ)!!  連弾氷の999矢(セリエス・グラキアリース)!! 」
「話は終わりだでか、ぐおぉぉおお! 豪殺居合拳!」
氷盾(レフレクシオー)! 集え氷精! 弾けて凍れ!」
「"紙絵"”、"鉄塊"!」
「来れ氷精 爆ぜよ風精 弾けよ凍れる息吹!!  氷爆(ニウィス・カースス)!!」
「全部撃ち落とすだで! 千条閃鏃無音拳(せんじょうせんぞくむおんけん)!!」

 攻防が続く。覇気をまとい私に肉弾戦を挑むサウロと、氷結魔法で翻弄する私。
 居合拳で魔法を相殺するサウロは、さすが海軍本部中将といえた。教えた甲斐がある。

「居合拳・水流波!」
氷盾(レフレクシオー)! 海水を飛ばすか! 能力者対策とは考えたな」
「デレシシシ、卑怯とは言わせないだでよ」
「当然だ! リク・ラク・ラ・ラック・ライラック、来たれ氷精(ウェニアント・スピーリトゥス)闇の精(グラキアーレス・オブスクーランテース)!!  闇を従え(クム・オブスクラティオーニ) 吹雪け(フレット・テンペスタース) 常夜の氷雪(ニウァーリス)闇の(ニウィス・テンペスタース)吹雪(・オブスクランス)!!!」

 そして、お互いに死力を尽くしたが、結果はやがてついた。

「ぐぅっ……気温が……」
「どうした、動きが鈍いぞ! リク・ラク・ラ・ラック・ライラック、凍てつく氷柩(ゲリドゥスカプルス)!!」

 サウロの巨体が凍り付いていく。ゆっくりと。

「……!」

 サウロが、守ろうとした少女と何か会話している。
 青臭いといえば青臭い。けれども、不思議と悪い気はしなかった。
 完全に氷漬けとなり沈黙したのを確認すると、少女ロビンの下へと降下した。

「チャチャゼロ、ご苦労」
「……チャチャゼロちゃんには砲撃と氷から守ってもらったわ。けれども、サウロをあんなにした貴女は許さない!」
「許さない? それは別にいいが。その前に、お嬢ちゃん、サウロが守ろうとしたのだから助けてやりたいところだが……歴史の本文(ポーネグリフ)が読めるのは本当か?」
「そ、そうよ!! たとえオハラが滅びても私は、真実を追い求める! 決してあきらめない!」

「それを私に言う度胸は認めてやろう。しかし、たとえ生き延びても、発見されればお嬢ちゃんは世界政府に指名手配され、悪魔の子として人々から忌み嫌われることになるだろう。それでも、生きたいか?」
「わ、私は、世界に反抗する "悪魔の子" なのかもしれない。けれどそれなら、オハラもサウロも氷漬けにした貴女は "悪魔の幼女" よッ!」
「誰が、ロリ悪魔ババアかッ!」
「ケケケ、言ワレッパナシダナ、ゴ主人」

 本当に氷漬けにしてやろうか。おや、この気配は……。

「女子供を氷漬けにして、インペルダウン行きですかい?」
「皮肉か? クザン。今頃現れて何のつもりだ」
「いやあ、らしくないんじゃないですかねえ。"誇りある悪" は女子供には手をださないんでしょう。どっかの馬鹿とは違って」
「そうだな。確かに、誇りある悪のエヴァンジェリンである私は女子供は、殺さないのがポリシーだ。だからチャチャゼロを貸した。が、歴史の本文(ポーネグリフ)が読めるとは……どうしたものか迷っている」
「ふ~~ん、エヴァあさんでも悩むんすね。……俺はただサウロが蒔いた種がどうなるか、見たいだけなんでして」
「誰が、しわくちゃロリババアか! 何度もいっているが、その呼び方はやめろ!」

 くそ、どいつもこいつも。仕方ない、私が拾ってマリンフォードで育てるか。
 あーまた、ロリロリババアとか散々に言われるんだろうなあ。

 ん? いやまて、私がすべてを決める必要もないか。

「ふむ、そうだな。貴様に任せるとしよう。私は何も見なかった。これでいいな?」
「じゃ、遠慮なく。俺あ勝手にやりますぜ?」
「……好きにしろ。私は知らん」

 ほう、ロビンをわざわざ誘導する真似をしたのはこの為か。私なら女子供を見逃す可能性が高いと踏んで、賭けたな。サウロとクザンは親友だったはず。助けたいと思う気持ちもわかる。
 あるいは、サカズキへの意趣返しか? 避難船を沈めるのはクザンなら嫌いそうだ。


 助けるのはいいが、クザンの性格なら匿わず逃がすだけだろう。伝手もないだろうし。それは困る。
 私が引き取れば、目の届く範囲ならば、再教育することもできるが、このまま外の世界へと放逐するのはまずかろう。
 少しの油断が大海賊時代を招いたことを忘れてはいない。
 万一、ロビンが歴史の本文を解き明かしたら、大海賊時代の比ではない混乱が待ち受けているだろう。


 仕方ない。趣味は悪いが心を折るか。

「最後にとっておきを見せてやろう」




 可愛らしい幼女が空を飛んでいる。ブロンドの長髪で、私と同じくらいの年齢だ。
 思わず惚けてしまった私に大声が響いてハッとした。

「いいからあぁ! 避難船に向かぇええええええええええ!!」

 サウロらしくない緊迫した声だった。
 びくりとした私は後ろ髪を引かれつつも避難船へと向かう。
 巨人と幼女。どちらが勝つかは分かりきっている。

「きっとサウロが勝っちゃうよね」

 自分に言い聞かせると私は避難船へとたどり着いた。
 既に帆を張り出向の準備を終えているようだが、何とか間に合った。
 この船に何とか紛れ込めば島を出る事が出来る。
 避難船に乗る人間が私に気づいた。なんで、なんでなの。

 "悪魔の子よ、お前のせいでオハラは攻撃されたのだ"

 心ない中傷の言葉が私に投げかけられる。
 それでも、私は生き残らなければならない・
 母さんやクローバー博士たちのためにも、今も海で戦うサウロのためにも!

『避難船!! そのガキを拘束しろ!! そいつは子供でも凶悪な悪魔共だぁ!!!』

 政府の船から聞こえる耳障りなスパンダインの声がした。
 運悪く私が歴史の本文(ポーネグリフ)を読めることを暴露した場に居合わせたのだ。
 彼らは安全地帯から学者達が逃げないように監視していたのである。
 スパンダインの指示によって避難船に乗っていた海兵達が半信半疑ながらも私に向けて銃を向ける。
 最悪だ。生き残る希望に賭けたがその当てが外れてしまったではないか。
 海兵達が弾丸を放ってくる。が、何かに防がれた。

「……CP9か…くだらん事を……!!」

 幼女の声がした。頭上を見ると、幼女が空に浮いていた。
 何故かこの幼女が守ってくれたようだ。しかし、幼女は確かサウロと戦っていたはず。ではサウロは?

「さ、サウロ……?」
「ロビン! わしは大丈夫だで、安心して逃げるんだでよ」
「う、うん。がんばって!」
「ほれ、これを受け取れ」
「え?」
「ケケケ、ヨロシクナ」

 チャチャゼロと名乗る喋る人形を渡されて戸惑うが、身を守ってくれるとのことで、とにかく走った。
 後ろを振り向くと、海には無事なサウロの姿があった。けれども、直後に避難船が沈められてしまう。
 なんでこんな酷いことができるの! 避難船はもうだめだ。
 途中砲弾が至近距離にあたりもうダメかと思ったら、チャチャゼロちゃんが守ってくれた。
 見かけによらずとても強いみたい。


 他に当てなどない私は、サウロが作っていた(いかだ)に向かったのだが、そこにいたのは見知らぬ男だった。

「う、うそ……」
「騙して悪いが仕事なんでね」
「海軍!?」
「オウ、クザンカ、俺ニ戦ワセロヨ」
「おやまあ、なんでこんなところに、いまは戦うのはよしてくださいよ」

 私は急いで逃げようとしたけれども、気温が突然下がって寒くなる。筏は氷漬けになっていた。
 先ほどの幼女から渡されたお人形、チャチャゼロちゃんは、さっきから砲弾や破片から私を守ってくれている。
 彼女は戦いたいというが、私は逃げることを選んだ。
 ゆっくりと男はこちらへと歩み寄ってくるが、すぐに捕まえる気はなさそうだった。
 サウロならきっとなんとかしてくれる。そう無邪気に思っていた。じりじりと追い詰められ、サウロの方へと戻っていく。

「おいおい、エヴァあちゃん、本気じゃないの」

 のんびりとした場違いな声をかけてくる。海の方からは激闘からか激しい音が聞こえてくる。

「いや、エヴァ嬢ちゃんか? まあ、どっちで呼んでも怒られるけどな。酷いよなア」
「助けてサウロ!」

 走る。走る。やっと海岸に出て助けを求めてはたと気づく。いつの間にか巨大な氷のオブジェが立っていた。
 それは、サウロの形をしていた。

「いやぁあああああああああああああああああああああああああ!!!」

 私の悲鳴が響き渡った。

「やっぱりこうなるか。サウロじゃ勝てんよな。俺も勝てないけどさ」
「オウ、ゴ主人は派手ニヤッタミタイダナ」
「ほう? 逃げたお嬢ちゃんとクザン、それにチャチャゼロか。こちらは片付いたぞ」

「……ク、クザンも、いたのか。こりゃ逃げられんでな。……ロビン」
「サウロ!?」

 まだ生きていた! 辛うじて凍っていない口を動かし、サウロは何事かを私に伝えようとしている。
 
「……よく聞け……ロビン……今はとても悲しくて、寂しくても……!! いつか必ず “仲間” に会えるでよ!! 海は広いんだで…………いつか必ず!!! お前達を守って導いてくれる “仲間” が現れる!!!」

 サウロ!

「この世に生れて一人ぼっちなんて事は絶対にないんだで!!!」

 サウロ!!

「いつか幸せに笑いあえる仲間に会える。デレシシシ……この海のどこかで必ず待っている。仲間に会いに行け!!! ロビン!!!」

 サウロ!!!


 泣き叫びたい衝動を堪えながらも凍りついていくサウロから離れる。
 今は男と幼女から逃げなければならない。でも、私にはどうすることもできなかった。


 ──────そいつらと……共に生きろ!!!


 サウロ……ごめんなさい。私はもうダメ見たい。


 だって、気づいちゃった。オハラのあちこちを氷漬けするような幼女からどう逃げればいいの?
 黒煙を吹いていた巨大な全知の樹は、いつの間にか氷のオブジェと化していた。
 凍てついた世界。この近辺は男と幼女と人形と私以外、誰も生きていないだろう。

「じゃ、遠慮なく。俺あ勝手にやりますぜ?」
「……好きにしろ。私は知らん」
「助けてくれるの?」

 幼女と会話すると、どういうわけか見逃してくれるらしい。だがそれは早計だった。

「最後にとっておきを見せてやろう。

解放・固定(エーミッタム・エト・スタグネット)
千年氷華(アントス・パゲトゥー・キリオーン・エトーン)」!!
掌握(コンプレクシオー)!!
術式兵装(プロ・アルマティオーネ)千年氷華(アントス・パゲトゥー・キリオーン・エトーン)
術式兵装(プロ・アルマティオーネ)氷の女王(クリュスタリネー・バシレイア)

闇の魔法(マギア・エレベア)!!!』」

 自慢げに語ると幼女は、島そのものを凍り付かせた。島がまるで巨大な氷山のようになっている。
 まずは、全知の樹を粉々に(くだ)いた。中の人ごと。クローバー博士たちや私の(オルビア)もろとも。空にぽっかりと穴があいたようだ。

 湖を砕いた。中の本もろとも。きっとみんなが必死に退避させた本は消滅した。

 森を砕いた。動物も植物もすべて消えた。生き物の気配はない。死の凍土だけが残った。

 家を砕いた。自宅は嫌いだったのでどうでもいい。

 町を砕いた。こっそり通った本屋も羨ましかった学校もみんな砕け散った。

 山を砕いた。氷結されて端から粉砕されていった。あんなに大きかったのに。

 地表の何もかもが消滅した。
 オハラに残ったのは凍り付いた更地のみになった。そこは死の大地。これが見せしめ。そのすべてを幼女に抱えられ上空から見せつけられた。

「歴史の本文を解読しようとしたら、お嬢ちゃんもああなる。ああ、仲間が云々(うんぬん)といっていたな。ならばその仲間ごと氷漬けにしてインペルダウン行きにしてやろう。町に世話になるかもしれない。なら町ごと私が滅ぼそう。私が! このエヴァンジェリンが! 絶対! 必ずな! ……忘れるなよ?」

 それと同時に、私の中の "何か" も粉々に砕け散った。


 ――――ああ、本当に幼女の皮を被った化け物だった




「たまげたなあ。エヴァあさんがまさかここまでやるとは」

 クザンは唖然としていた。ヒエヒエの実の能力者であるクザンは氷のエキスパートであり、エヴァンジェリンに何かと突っかかっている。けれども、ここまでの破壊を見せつけられて、自信を失っていた。
 だがいまは、サウロの蒔いた種(ニコ・ロビン)を逃さなければならない。せっかくエヴァンジェリンに見逃してもらったのだから。

「氷のラインを島まで引いた。この小舟にのって真っすぐ進むといい」

 ロビンに指示するが、クザン以上に彼女は茫然としていた。そこにオハラの考古学者としての苛烈な意思は残っていない。
 それでもとぼとぼと小舟に向かうロビンをみて、ため息をついてしまう。
 破壊活動のせいで時間がかかった。すでに海軍の船は自分とエヴァンジェリンの分しかいない。政府の船ももちろんいない。
 これなら見つかって懸賞金がかけられることはないだろう。自分とエヴァンジェリンが口を閉ざせばいい。


 けれども、種は芽吹きそうになかった。


◆◇◆

・幼女の皮を被った化け物
幼女の皮を被った化物(おっさん)ことターニャ・デグレチャフ閣下のリスペクト。
幼女で中身おっさんで魔法使う。Arcadia時代から大好きでした。

・幼女
ロビンのトラウマ。

・原作キャラへの思い
プロローグからの伏線でした。原作キャラ(エヴァンジェリン)になって、閉じた部屋(妄想の世界)から物語(当たり前の日常)に参加することが最初の願いでした。

・このリハクの目をもってしても見抜けぬとは!
・海のリハク一生の不覚!
そんなことよりラオウかっこいいよね。

・居合拳(無音拳)
六式に負けないくらい海軍で広まっている。神鳴流とかも。修正力さんは負けたのだ。

・だまして悪いが仕事なんでな
アーマードコアシリーズの名台詞。何も知らずに僚機に裏切られて傷つきました。

・心の折れたロビン
原作との差異で懸賞金がかけられていません。逃亡生活がルナティックモードからハードモードへとレベルダウン。
けれども、心が折れたので歴史の本文探索への意欲も低いです。ロビンの行動が変化します。
実は、主人公が拾う可能性が高かったのすが、修正力さんがブロックに成功しました。

・オハラ
更地になりました。焼失を防ぐため湖に投げ入れた本の数々も消失しました。島を描写はしていませんが闇の魔法(マギア・エレベア)でちまちまと削りました。闇の吹雪×999! 時間がかかっているので政府船(スパンダイン)はとっくに遠くへ逃げています。なので懸賞金フラグも折れました。

・闇の吹雪×999
多分これが一番早いと思います。 
 

 
後書き
第1章はこれで終わりです。続く第2章「キャッチャー・イン・ザ・マリージョア」でもよろしくお願い申し上げます。
ようやく百式観音が出せますよ。ついでに、修正力さんとの戦いが激化します。ゆんゆん。

あと、今週末から恋姫無双モノ『戦国時代に転生したら春秋戦国時代だった件』を連載します。
そちらもお読みいただけると嬉しいです。 
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