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レーヴァティン

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第五十七話 東へその五

「今思いますと」
「では戻るか」
「それも手ですね、いえ」
「そうだな、それならな」
「比叡山の方にお願いしてです」
「魔神について書かれている文献があるか」
「探してもらいましょうか」
 こう英雄に提案したのだった。
「ここは」
「その方がいいか」
「そうも思いましたが」
「そうだな」
 少し考えてだ、英雄は謙二に応えた。
「俺達は何かとやることが多い」
「もっと言えばやらねばならないことが」
「十二人の仲間を揃えないとならない」
「それならば」
「比叡山に戻るのは下策だ」
 それになるとだ、英雄は看破した。
「ここは戻るより東に向かいだ」
「そうしてですね」
「より多くの仲間を集める、そしてな」
「旗揚げですね」
「それを目指そう」
 是非にと言うのだった。
「ここは」
「旗揚げでござるか」
 智は英雄が出したこの言葉にその目を鋭くさせて応えた、今は酒はなく皆焼き魚を何匹もひたすら食い続けている。実は干し飯も持っていないのだ。
「いよいよでござるな」
「そうだな、十二人揃うとな」
「そこで遂に」
「旗揚げをするつもりだが」
「問題は何処で旗揚げをするか」
「それだが」
「相応しい場所は見当がついているでござるか」
「大坂だ」
 英雄は一言で言った。
「あの地だ」
「大坂でござるか」
「そうだ、大坂だ」
 この地でとだ、英雄はまた言った。
「あの地において旗揚げをしたい」
「そうでござるか」
「あの地は前に大きな湖があり川も多くな」
「水運がよく」
「都にも堺にも近い」
 そうした要地にもというのだ。
「すぐに行ける、しかも水運を使ってな」
「商業も栄えさせることが出来て」
「城も築ける」
 拠点にするこれもというのだ。
「だからだ」
「旗揚げをするなら」
「大坂だ、東の方の江戸もよさそうだが」
「この島の江戸は」
「まだ未開だ、東自体がそうだと聞いている」
 それ故にというのだ。
「だからな」
「旗揚げをするなら」
「大坂だ、奈良もいいかと思ったが」
「奈良はこちらの世界でも」
 奈良と聞いて言ったのは良太だった。
「水運が」
「それがよくないな」
「はい、豊かな土地で山に囲まれていて守りやすいですが」
「それでもな」
「水運がなく大坂と比べますと」
 見事な水運、この島一であるそれを持つ大坂と比べればというのだ。
「残念ですが」
「旗揚げの地には劣るな」
「はい、しかも今大坂はこれといった勢力がいません」
 このこともあるとだ、良太は指摘した。 
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