リング
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89部分:ニーベルングの血脈その二十一
ニーベルングの血脈その二十一
「大体人間ってのは何処に何を置くか、決まってるんだ」
「そうですかね」
「そんなものさ、そしてどう攻撃して来るかな。虎とかライオンだってそうだろ」
「虎やライオンも」
「虎は木の上とか茂みの中にいて襲い掛かって来るよな」
「ええ、まあ」
「ライオンも隠れて事前に取り囲む。何でもパターンがあるんだよ」
「人間もですか」
「そうさ、それぞれの性格ってやつはあるがおおよそはな」
彼は人間のそうした習性も見ていたのである。
「ましてやメーロトのことはよく知ってるつもりさ。何処でどう仕掛けて来るのかもわかってるつもりだ」
「ですがそれはあちらも同じでは?」
「それも承知しているさ」
何処までも彼は読んでいた。
「全部わかってるつもりだ。だから安心しろ、いいな」
「わかりました。それでは」
「おう」
ジークムント達はそのまま進んで行った。山地の中にある盆地に入った。だがそこはすぐに通り過ぎようとした。
「ここは危ないな」
「はい」
これには部下達も同意した。見れば周囲を山に囲まれている。ここで襲われたらひとたまりもないであろうことが容易に想像された。
「すぐに抜ける。いいな」
「了解」
その盆地はすぐに通過した。そして次の山に入る。そこで彼は敵の姿を認めた。
「!?」
「どうしました、提督」
「いたぞ」
彼は部下達の方を振り向いてこう言った。
「奴だ」
「まさか」
「メーロトですか」
「ああ、奴は間違いなくこの山にいる」
ジークムントの声には強い確信があった。
「さっきな、敵の姿が見えた」
「では」
「この辺りにもうかなりの数がいるぞ。すぐに散れ」
「はっ」
「了解」
皆それに従い各所に散った。ジークムントもその中にいた。
「いいか、油断するな」
「はい」
「多分ここの下に地下基地があるんだ。一人捕まえて入口とかを聞き出すぞ、いいな」
「わかりました」
こうして彼等は少しずつ先に進んだ。その間敵の姿はなかった。だがジークムントは決して油断してはいなかった。
「一人でもいい」
彼は言った。
「捕まえられればな。そこで全てがわかる」
「提督」
ここで部下の一人がやって来た。
「どうした?」
「捕らえました」
「そうか、よくやった」
ジークムントはそれを聞いてニヤリと笑った。
「俺が言ってすぐか」
「そうだったのですか」
「ああ、今指示を出したところだった」
その笑みが苦笑いに変わっていた。
「それですぐなんてな。まあいいか」
「はい。では情報を聞きだしますか」
「自白剤を使えよ。後遺症のないのをな」
「はい」
「拷問ってやつは好きじゃねえからな」
これはジークムントの嗜好であった。彼は戦場で戦うのは好きであるがそれ以外で血を流すのは好きではないのだ。不必要な虐殺等も行なわない。あくまで戦場でのみ血を流す男であった。
「それにそっちの方が何かとわかる」
もう一つの理由であった。
「拷問だとな。嘘を言われる場合があるからな」
「わかりました。では」
すぐに自白剤を使った取調べが行われた。その結果メーロトの部隊と基地に関して様々なことがわかった。
「そうか、やっぱりこの山だったな」
ジークムントは捕虜の話を聞いて頷いた。
「ここの地下にか。あいつがいるのは」
「そしてその部隊も」
「わかった。そして入口は」
「ここです」
部下の一人が描かれた地図のあるポイントを指し示した。
「ここに基地の入口の一つがあるそうです」
「警護は?」
「相当なもののようです」
部下の言葉が険しかった。そこからその情報が事実かそれに近いものであることがわかる。
「そして中にもかなりの数のトラップがあるとか」
「地下要塞ってわけかよ」
「話を聞く限り地下迷宮かと」
「面白いな、最後の最後で迷路に入るなんてよ」
「まずは入口を全て押さえましょう」
「ああ」
「そしてそこから同時攻撃を仕掛けます。そして」
「精鋭部隊で突撃するぞ」
「わかりました。それでは」
「おう、すぐに行動に移る。いいな」
「はっ」
ジークムントとその部下達は即座に立ち上がった。まずは全ての入口を押さえて基地を押さえた。
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