スキヤキ
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第二章
「何でもな」
「へえ、あそこよりも凄いのか」
「最終戦で負けて優勝逃したりシリーズで四戦連続で惨敗したりな」
「そんなチームか」
「日本のネットじゃ話題らしいぜ」
このチームにしてもというのだ。
「昔からネタを振りまくっていてな」
「そうなんだよね、ああした選手達がいてくれたら」
日本人特有の残念そうな笑みで話す智一だった、寮の朝食は卵に肉に野菜にミルクとボリューム満点だが阪神のことで満足感はマイナスとなっている。
「阪神も毎年優勝だけれど」
「三人共メジャーにしるしな」
「あとダルビッシュもそうだしな」
「それとイチローもう引退だよな」
「生涯契約っていっても」
「寂しいよ」
心から言う智一だった。
「イチローのことはね。けれど本当に彼等はね」
「日本でもスペシャルか」
「特別な選手か」
「あそこまでの奴はそうはいないか」
「そうした選手達なんだな」
「日本でもそうはいないから」
智一は分厚く切ってカリカリに焼いたステーキかという様な大きさのベーコンをフォークとナイフで食べつつ答えた。
「ああした選手ばかりっては思わないでね」
「まあそうだよな」
「あんな化けものばかりいたら怖いぜ」
「そうそういなくてか」
「そうした奴がメジャーに来ているか」
「規格外だからメジャーに来てね」
そうしてというのだ。
「活躍しているんだよ」
「確か野茂からだったよな」
ホセがここで智一にこの選手について尋ねた。
「あのトルネードの」
「うん、あの人から日本の選手がどんどんメジャーに行ってるよ」
「実際にそうだよな」
「あの人も凄かったから」
「メジャーでノーヒットノーランやってな」
「けれど大抵の日本人は普通だよ」
野球選手にしてもというのだ。
「ああした選手ばかりじゃないから。僕みたいに野球は知ってるけれど下手な人も多いし」
「確か智一将棋部だよな」
「うん、中学高校とね」
「そうだったよな」
「僕自身は運動とは無縁だよ」
「そうなんだな」
「その将棋も普通だしね」
将棋の腕、それはというのだ。
「特にね」
「そうなんだな」
「柔道とか剣道もしないしね」
こちらもというのだ。
「運動とは縁がなくて」
「そうか、将棋はしてもか」
「そうだよ、大抵の日本人はね」
大谷達の様な規格外ではないというのだ。
「特に何もないよ。同じ人間だよ」
「そんなものか」
「うん。別にね」
普通だということを強調する智一だった、だがここでだった。
ホセは日本人のことと自分のことを話した智一にこれまでとは別のことを尋ねた、その尋ねたことはというと。
「ところで今週の土曜日のパーティーだけれどな」
「うん、寮の中でね」
「御前がホスト役だけれどな」
「実はそれで出す料理は決めてるんだ」
智一はホセに笑顔で答えた。
「もうね」
「そうか、それは何だ?」
「うん、前のホスト役の時はお寿司だったよね」
「日本のな」
「それを出したけれど」
「今度は違うか」
「うん、また別のを出すよ」
皆が出し合った予算で自分が買った食材を使ってというのだ。
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