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真田十勇士

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巻ノ百三十八 仇となった霧その一

               巻ノ百三十八  仇となった霧
 幸村、後藤、毛利の軍勢は合流を目指していた、だが。
 その中でだ、後藤は夜が明けようとしているのを感じつつ言った。
「何か湿めっぽくないか」
「空気が」
「そういえば」
「これはな」
 その霧を感じて言うのだった。
「朝になれば危ういかも知れんな」
「まさかと思いますが」
「霧がでるか」
「それが出てですか」
「周りが見えなくなる」
「そうなるやも知れませぬか」
「うむ、ここはな」
 ここでこう言った後藤だった。
「真田殿の家臣に霧を操れる御仁がおる」
「霧隠殿ですな」
「十勇士の一人であられる」
「あの御仁にですか」
「力を貸して頂きますか」
「そうしようか」
 こう言うのだった。
「今のうちに」
「では今よりですか」
「真田殿がおられると思われる方にですな」
「人をやり」
「そうしてですか」
「霧隠殿を呼ぼうか」
 朝起きて霧が出るならというのだ。
「そしてじゃ」
「若し霧が出たならば」
「その時はですな」
「霧を払ってもらい」
「そのうえで、ですな」
「真田殿、毛利殿の軍勢と合流してじゃ」 
 そこから先もだ、後藤は話した。
「一気にじゃ」
「幕府の軍勢を突き破っていき」
「そうしてですな」
「そして最後はですな」
「大御所殿の御首を」
「先に木村殿が向かわれているが」
 しかしという言葉だった、後藤はその太い眉に悲しいものを宿らせてそのうえでこうも話したのだった。
「もうな」
「あの方はですか」
「やはり」
「戦の場において」
「散られるであろう」
 そしてその通りだった、後藤の読みは。
「果敢に戦われそうしてな」
「見事にですか」
「武士として果てられる」
「そうなられますか」
「そうであろう」
 こう言うのだった。
「あの方はな、そしてな」
「大御所殿はですか」
「あの方はですか」
「無事である」
「そうなのですか」
「そうであろうな」
 このこともその通りだった、何処までも後藤の読み通りだった。
「そして幕府の軍勢は多い、こちらにもじゃ」
「兵が向かっており」
「そうしてですな」
「朝になれば」
「我等もですな」
「戦になる」
 こう周りの者達に話した。 
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