リング
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36部分:エリザベートの記憶その十四
エリザベートの記憶その十四
「いいな」
「わかりました。では」
部下達も頷く。
「我々も御供致します」
「よいのか?」
「はい」
彼等の決意もまた固いものであった。
「我々も騎士ですから」
「喜んで剣を取りましょう」
彼等はタンホイザーもまたクリングゾルの艦に乗り込むつもりなのがわかっていた。だからこそこう言ったのである。
「公爵」
また情報が入って来た。
「どうした」
「遂にニーベルングの艦艇を捕捉しました」
「よし」
それを聞いて頷く。
「ではまずは周辺の艦艇を撃破していく」
「はい」
「それから乗り込むぞ。そしてこの手で戦いを終わらせる」
「了解しました。では」
「行くぞ」
彼は左翼の敵軍を足止めさせ、それから主力で以ってクリングゾルのいる右翼に向かった。そして周辺の艦艇を次々に撃沈し、退け、その旗艦に向かっていた。
「あれです!」
部下達がモニターに映る巨大な戦艦を指差した。
「あれがニーベルングの旗艦ハーゲンです」
「あれがか」
見れば鈍い黄金色であった。あまり見ていて気持ちのよい色ではない。そしてそれこそがクリングゾルが乗艦しているということの何よりの証であった。
「逃げる気配はないですね」
「そうだな」
タンホイザーはヴォルフラムの言葉に頷いた。
「周辺は既に抑えております」
「そしてワルキューレも来ております。ハーゲンは今孤立しようとしております」
「そうか、では最早迷うことはない」
その声が強くなった。
「接舷する。よいな」
「了解」
「各自剣とライフルを持て。そして斬り込む」
「ハッ」
「目指すはクリングゾル=フォン=ニーベルングの首だ。それを得た者には恩賞は思いのままだ」
「わかりました。では」
「ローマを前に出せ!」
タンホイザーは言った。
「いいな。遅れるな!」
そう言うと艦橋を後にした。部下達がそれに続く。今彼は剣を手にクリングゾルの城そのものに乗り込むのであった。
見ればワルキューレも来ていた。だが彼はそれには今は目もくれない。
「今はいい」
彼は言った。
「まずはクリングゾルだ」
「はい」
その周りを固める部下達が頷いた。
「彼等はその後でいい。それに今は協力関係にあるからな」
「ですね。それでは」
「うむ」
ハーゲンに体当たりを敢行する。鈍い衝撃が艦全体を襲った。
「ハーゲンの装甲を打ち抜きました!」
また報告が入る。
「突入可能になりました!」
「よし!」
タンホイザーはそれを聞いて頷いた。
「では行くぞ!」
「了解!」
それに従い部下達も動く。だがここでもう一つ衝撃が起こった。
「今度はどうした!?」
「ワルキューレも突進した様です!」
艦橋から報告があがった。
「ワルキューレも」
「はい。その旗艦ノートゥングがハーゲンに体当たりを仕掛けました。そして彼等もハーゲンの中に突入を敢行する模様です」
「そうか、彼等もか。やはりな」
「我等も遅れるわけには」
「わかっている。では」
最早迷うことはなかった。タンホイザーが先頭になりハーゲンの中へ踏み込む。すぐに敵がその剣で斬り掛かって来た。
「甘いっ」
しかしそれは何なくかわした。かわすと同時にその右手に持つ剣で斬り捨てる。
「その程度で。私を倒せると思うか」
「司令、油断は禁物です」
だがそんな彼の前にビテロルフが来た。彼を護りながら言う。
「ここは敵の大本営なのですから」
「そうだったな。では少しずつエリアを確保していくか」
「はい」
「それでは我等も」
ヴォルフラム達も艦内に入って来た。そして兵士達も。彼等はまず突入したエリアの確保を行った。そしてそこから少しずつ先へと進むのであった。
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