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寺巫女

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第一章

               寺巫女
 神戸祈はある寺で巫女をしている、しかし合コンで彼女の職業を他ならぬ本人から聞いて男性側の一人がこう言った。
「お寺で?」
「そうなのじゃ」 
 祈は赤髪のサイドテールにアホ毛という巫女には見えない髪型で答えた、今の服装もギャルチックで巫女には見えない。
「わらわは」
「いや、お寺でって」
「巫女はないか」
「巫女は神社だよ」
 このことを言うのだった。
「お寺は尼さんじゃない」
「仏教じゃからのう」
「自分でわかっているんだ」
「神宮寺なのじゃ」
 ここでこう返した祈だった、それも笑顔で。
「わらわはお寺の中にいる神社でじゃ」
「巫女さんをしているんだ」
「そうなのじゃ」
「それでお寺の巫女さんなんだね」
「うむ」
 その通りという返事だった。
「わらわはな」
「その辺りの事情わかったよ」
「だからお寺の巫女なのじゃ」
「お寺の中にある神社にいるから」
「神宮寺にのう」
 それにというのだ。
「そういうことじゃ」
「よくわかったよ。ただね」
「ただ。何じゃ」
「巫女さんでも合コンに出るんだ」
「わらわは出るぞ」
 笑って甘い酒、カルピスチューハイを飲みつつ応える祈だった。
「この通りのう」
「そうなんだ」
「そうじゃ、しかしじゃ」
「しかし?」
「管長さんからはよく思われておらん」
「ああ。お寺のね」
「もう極めつけの堅物でのう」
 祈がいる神社をその中に持つお寺の最高責任者である彼はというのだ。
「それで巫女のわらわが合コンに出ることはじゃ」
「快く思っていないんだ」
「うむ、しかしじゃ」
「それでもだね」
「わらわはこの通りじゃ」
 カルピスチューハイをごくごく飲みさらにイチゴパフェも食べつつ言うのだった。実に陽気な感じである。
「合コンに笑顔で出てじゃ」
「遊んでいるんだ」
「見ての通りじゃ」
 笑って言うのだった。
「信仰は心じゃしのう」
「心さえしっかりしていれば」
「いいではないか」
 こうも言うのだった。
「違うか」
「それはそうだけれどね」
 彼も否定しなかった、そのことは。
「お酒を飲んでもね」
「うむ、神道ではお酒はよいからのう」
「御神酒だね」
「そうじゃ、ちなみに仏教でもな」
 こちらでもというのだ。
「何だかんだでのう」
「般若湯だよね」
「そうした名前でじゃ」
 それでというのだ。
「飲んでおるしのう」
「そのことは有名だね」
「管長さんもよく飲んでおられる」
 祈が言う堅物極まる彼もというのだ。
「そうされておるわ」
「あれっ、敬語なんだ」
「礼儀作法はしっかりとじゃ」
 それはと言う祈だった。 
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