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リング

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215部分:ラグナロクの光輝その六十九


ラグナロクの光輝その六十九

「そこに彼はいるでしょう」
「冥界ですね」
 パルジファルは述べた。
「彼がいるのは」
「そうですね」
 その言葉の意味はワルキューレ達も他の六人にもわかった。ニブルヘイムとはかっての神話における冥府の国のことである。半分が生者、半分が死者の身体を持つヘルの館であるとされている。
「巨人達も小人達も最早おらず」
「そこにいるのはニーベルング族のみ」
「彼は巨人も小人も併呑してしまったのです」
 パルジファルはさらに言う。
「ファゾルトとファフナー」
 これはかっての巨人達の名である。
「そしてニーベルング」
 言わずと知れていた。この名前の意味は小人である。
「彼は。かってアースに抗じた者達の集まりです」
「はい」
「それを合わせアースに対抗しようとした」
「それが帝国の崩壊であり」
「ラグナロクだったのだな」
 これまで沈黙していた六人が言った。
「そして最後の一戦がもうすぐ行われる」
「あのラインにて」
「そこにはまたあの者達がいるでしょう」
「ベルセルク」
「そして純粋なニーベルング族の者達が」
「ニーベルング族ももう殆ど残っていないのだな」
「悠久の時の間に彼等も私達と同じく」
 ワルキューレ達は語る。
「消えていったのです」
「残るはもう僅かです」
「アースもニーベルングも。それぞれ終わろうとしているのか」
「我等は純粋なアースではない」
 六人はアースの血を確かに引いている。だがそれは純粋なものではないのだ。ジークフリートにしろ。
「それが運命なのです」
 だがそのアースの一人であるパルジファルが彼等に対して言った。
「このラグナロクによりアースもニーベルングもなくなるでしょうが」
「その先には何があるのか」
「新しい時代が。全てのしがらみから解き放たれた時代があるのです」
 彼は言う。
「最後の戦いの先にか」
「そうです、ラグナロクの先に」
「では詳しい話はここでな」
「はい」
 奥の扉が開かれた。そこには巨大な白亜の円卓が置かれていた。
 七人の戦士達と九人の戦乙女達がそこに座る。そしてそこで最後の戦いの前の会議に入った。その後。ラインへ向けて最後の艦隊が向かったのであった。
 この艦隊はそれまでのような大艦隊ではなかった。最早ラインは包囲しており降下するだけだったからだ。だが彼等は決して油断してはいなかった。
「ラインは完全に要塞化されています」
 ブリュンヒルテが戦闘機の中から七人に対して声をかけてきた。七隻の戦艦の前に九機の戦闘機が舞っていた。
「例え宇宙から攻撃を加えたとしてもそう容易には陥落することはありません」
「下手な攻撃距離に入ったならばそれで要塞からの攻撃を受けそれで全滅しかねません」
「何だよ、最後の最後まできてそれかよ」
 ジークムントはジークリンデの艦橋でそれを聞き顔を顰めさせた。
「ったくよお、ふざけた話だぜ」
「それに帝国軍はまだ多くの艦隊を持っています」
「要塞との複合攻撃を受けたならばそれでこちらが大きなダメージを受けます」
「ですから。今は慎重にお願いします」
「その為に今我々がラインに向かっているのだな」
「はい」
 ワルキューレ達はタンホイザーの言葉に応えた。
「そうです」
「おそらく彼等は我々に対して大規模な攻撃を仕掛けてくるでしょうが」
 彼女達はタンホイザーに対して説明する。
「それを一気に掻い潜り」
「ニブルヘイムに入ります」
「ニーベルングのいる宮殿にだな」
「それしかありません」
 またタンホイザーに言った。
「最後の勝利の為には」
「私としてはこのままライン周辺を押さえて持久戦に持ち込んでもいいと思うのだがな」
 ローエングリンの言葉は現実的なものであった。
「それは駄目なのか」
「それはあの惑星に関しては無駄です」
 ワルキューレ達はそう述べる。
「要塞の奥深く、惑星の深部に大規模な農業プラント及び工場を持っていて」
「資源も無尽蔵です。持久戦もあまり効果がありません」
「だからニーベルングは今までアースと戦ってこれたというのだな」
 トリスタンがそれを聞いて言った。
 
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