レーヴァティン

「いい場所だしな」
「豊かで交通の便もよく」
「水のそれでな」
「陸のそれもいいそうなので」
「こうした場所にこそか」
「本拠地を築くべきです」
　順一はまた久志に話した。
「統一を迅速に進める為には」
「それも政治か」
「はい、むしろ本拠地を選べるなら」
「いいことか」
「そうはいかないことが多いですから」
　順一は久志にこうしたことも話した。
「代々その地にいる領主等は」
「ああ、日本の戦国時代でもそうだな」
「武田家や上杉家はその点不利でした」
　武田信玄や上杉謙信といった戦国に名を馳せた戦国大名達ですらというのだ。
「それぞれ都から国が離れていたので」
「天下統一が出来なかったか」
「その一面もあります」
「逆に織田信長は都に近かったからな」
「そうです、そうしたことも考えますと」
　まさにというのだ。
「拠点の場所は重要です」
「じゃあヨハネスブルグの家も」
　久志の今現在のこの家の場所のこともここで考えた。
「移すか」
「そうなるでしょうね」
「そうだよな、あの街もいい街だけれどな」
「拠点にすることを考えますと」
「選んだ方がいいな」
「そうなります」
「じゃあ奥さんにも話をしておくか」
　久志がハンナのことに言及すると清音が怪訝な顔になって問うた。
「奥さんって？」
「だから俺の奥さんだよ」
　久志はその清音にあっさりと答えた。
「こっちの世界でのな」
「ってあんた結婚してたの」
「そうなんだよ、言ってなかったけれどな」
「所帯持ちとは思わなかったよ」
「こっちの世界じゃそうなんだよ」
「それじゃあ子供のいるとか」
「それはまだだよ、将来は欲しいと思ってるけれどな」
　実際にそう思っていることである。
「今はまだだよ」
「そうなんだね、まあとにかくね」
「ああ、ミラノな」
「行きましょう、そこに」
　清音はあらためて次の行く場所の話をした、一同は水の都から素晴らしい歌劇場がある街へと向かうことにした。


第五十四話　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１８・２・１５