リング
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208部分:ラグナロクの光輝その六十二
ラグナロクの光輝その六十二
「最後の一撃まで」
「敵を倒す」
「わかっているのならいいわ。それじゃあ」
九機の戦闘機が大きく旋回した。そして目の前の帝国軍の大艦隊に向かう。
「撃て!」
ブリュンヒルテの戦闘機がビームを放った。ミョッルニルに匹敵する一撃が帝国軍の戦艦を襲った。
光が艦を貫く。暫し動きが止まったかの様に見えたがそれはほんの一瞬のことであった。瞬く間に炎があがりその艦は光の中に消えていった。だがブリュンヒルテはそれを見届けるまでもなく次の目標に向かうのであった。
この九機の参戦は連合にとって実に大きかった。絶大な攻撃力と機動力で敵を次々と倒していく。これにより帝国軍はその数を大きく減らしていく。そこに連合軍の攻撃が加えられる。勢いは完全に連合軍のものとなっていたのであった。
「このまま押し切れ!」
ジークムントがジークリンデの艦橋で言う。
「敵が怯んだらそのまま潰してしまえ!いいな!」
「はい!」
「了解です!」
部下達もそれに頷く。ジークムントの軍はそのまま敵に飛び込み次々と攻撃を仕掛けるのであった。
「総帥、宜しいのですか?」
そのあまりにも激しい、無鉄砲とも言える攻撃を見てパルジファルの部下達が主に問うた。
「提督は突出し過ぎでは」
「いえ、あれでいいのです」
だがパルジファルはそれにはこだわらなかった。
「提督はああではなくては」
「そうなのですか」
「はい、それで」
パルジファルはここでモニターを指差した。
「それに続いてヴァルター執政官とローエングリン司令の軍が左右に展開しています」
「はい」
見ればその通りであった。二人の軍勢が帝国軍の左右に移動してきていたのだ。
「このまま側面を押さえよ!」
「一隻たりとも逃がすな!」
ヴァルターとローエングリンはそれぞれの部下達に指示を出していた。そして動いているのは彼等だけではなかったのであった。
タンホイザーは上に、トリスタンは下に。帝国軍を取り囲もうという動きを見せてきていたのだ。
「ニーベルング、これで終わりだ」
「ラグナロク、我等の勝利だ」
二人もまた帝国軍を覆おうとしていた。そして正面にはジークフリートがいた。
「ジークムント提督に伝えろ!後ろは任せろとな!」
「了解!」
海賊時代からの部下達がそれに応える。彼等は息のあった見事な攻撃で帝国軍を覆おうとしていた。それはまるで手で握り潰すかの様であった。
「ニーベルング様」
それは当然ながらクリングゾルもわかっていた。だがそれでも彼は動じた様子はなかった。
「ならば退け」
それが彼の言葉であった。
「手の中から逃れよ」
「は、はい」
「よいか、この程度で驚くことはない」
そのうえでこう述べた。
「まだ戦える」
「それでは」
「戦いとは最後に立っていればいい」
それがクリングゾルの考えであった。
「どれだけ負けようとな」
「しかし既に竜も」
「それがどうしたというのだ」
部下の言葉を一蹴してしまった。
「確かに竜達は残念だった。だがまだ私がいる」
「閣下が」
「私がいる限り帝国が敗れることはないのだ」
恐ろしいまでの轟然とした自信を以って言っていた。
「このクリングゾル=フォン=ニーベルングがいる限りな。ではわかったな」
「は、はい」
その威圧感に部下達は完全に押されていた。だが気を取り直して応えた。
「まずは後方に退く。そして」
「それから反撃と」
「よいか、まずは逃げる」
彼はまた言った。
「それからだ。拳を潰すのは」
連合軍が覆い被さろうとしている。だが帝国軍はそこから逃れていく。そして全ての艦艇を後ろに逃がしたところで陣をすぐに整えていた。その前では連合軍が円どころか球体になっていた。
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