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インフィニット・ゲスエロス

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18話→兄と弟(前編)

 
前書き
~姉妹の結婚式終了の次の日の話~

『世界を救うために兎の機嫌をとってきますbye太郎』

太郎、束と共に行方不明開始(終了時期不明)

更識家前当主、卒倒。 

 
IS学園に行く一夏の足に迷いはない。

なんせ、一時期この道には足しげく通ったのだから。

何でかって?

IS学園という名の通り、IS≪インフィニット・ストラトス≫の操作、開発等を行うために設立された学園は、兄貴の母校、その敷地を買い上げて作った学園だからさ。

今でも時々思い出される兄貴や千冬姉がここの高校に通っていた時代。

千冬姉の忘れ物を届ける度に、兄が財布から多目に交通費を出してくれたのものだ。

なぜ、兄の学校がIS学園になったかって?

それは、一言で言えば『政府の都合』さ。

七年前、結果的に人的被害も少なく(避難で怪我をした人間もいたため皆無ではないが)終わった事件後、世界中がISに夢中になっているあいだ、日本もまた、決断を迫られていた。

日本もまた、ISを主体とした国防体制を整えるか否か、である。

だが、その話し合いは直ぐに纏まった。

『たまたま』事件前より山田太郎と親交の篤かった『更識』家が、幾ばくのノウハウと共に幾つかのISコアを保有していることを開示し、いくつかを国に譲渡したからである。

思わぬ棚ぼたに、日本は、歓喜と共にそれを受け入れ、IS産業に参入を決める。

だが、一つだけ困った事があった。

ISの開発に多大な貢献をした(というか造り上げた)二人が、事件直後行方不明になってしまったのである。

ちなみに、一縷の望みをかけて千冬姉に聞いたところ、『知らない、二人に聞け』と言われたらしい。

無論、方々手は尽くしたのだが、不思議と二人の足取りは捉えられず、非常に悩ましい状況に。

とりあえず日本は、『今手に入る』情報の断片を集める事にした。

まず、最後に二人が通っていた学校と、会社である。

別に当事者じゃなかったので週刊紙等の又聞きになるが、『話し合い』の結果、紆余曲折あった末に、交渉は纏まる。

多額の金銭や権力の行使のもと、皆が通った『ただのマンモス校』だったはずの学校には、政府直轄のIS研究室が設置された。(ついでに兄や姉が使用していたパソコン等も接収された)

山田太郎が勤務していた会社は、国防関連という形で少々強引にISの研究部門を独立させ、『倉持技研』という名で別会社として独立させた。

他にも兄と係わりのあった人間を直接スカウトするなどもあったらしいが、こっちは分かっていない。

兄貴の人間関係広すぎるからしょーがないね。

知っている人は、兄貴から事前にISを渡されていた麻耶姐さんくらいだ。

話を戻そう。

ここまでだけ見ると『IS関連は日本の一人勝ちじゃん』だが、そうは問屋が卸さなかった。

国連を通じて、世界各国が日本の対応を非難。

今回のウイルステロ問題は世界中の人々の安全を脅かすものであり、ISはその解決策である。

それの中心的知識を独占することは、他国の防衛権の侵害につながるとして、日本のIS産業に介入しようとしてきたのだ。

日本を攻めてきた奴等がどの面下げてと言いたいが、ここで喧嘩腰になるのもあまり経済的観点ではよろしくない。

日本は悩んだ末に、結論として、日本に最大限のメリットを享受できるシステムを構築した上で、国内に国連加盟国の共同開発&訓練所を設立した。

それが、今、俺の目の前にあるIS学園である。

さて、着いた事は着いたけど…………。

まあ当然、ISという軍事機密の塊を保管している学園である。警備はただの高校とは比べ物にならない。銃器すら保持しているガードマンがいるくらいだ。

昔みたいに『あ、お疲れ様です』とか言って中に入ろうものなら、そのまま蜂の巣にされそうである。

うーん、かけ直せば良いのかな。

ショートメールが送られてきているなら、この番号にかけ直せば兄に繋がるはずである。

(でも仕事中だったら迷惑だし…………)

そうやって暫し悩んでいると、一人の少女が、一夏に駆け寄ってきた。

「織斑、一夏君だよね?」

「あ…………はい」

見知らぬ相手に急にフルネームを呼ばれたことには困惑するが、別に間違っていないのでとりあえず頷く。

同時に、自分を呼んだ相手を再度眺めた。

水色のシャギーのかかった髪に、チシャ猫を思わせる切れ目の瞳を持つ美少女。

(うーん、分からないなあ)

一夏は頑張って記憶を手繰ってみるが覚えがない。

そのため、返事はしたものの、どう反応するか悩んでいると、一夏の心情を見抜いたのか、彼女は手を軽く振って言葉を紡いだ。

「あー、ごめんごめん、私たち初対面で合ってるわ。だん……いや太郎から頼まれて、迎えに来たの」

一瞬言い淀んだ言葉も気になったが、それよりも気になる事を一夏は彼女に問いかける。

「なんで、兄貴は俺がこの時間に来るって分かったんですか?」

ある程度待つつもりで早めに来た筈なのに。

その疑問に、彼女は首もとを差して答える。

「太郎のペンダントは今、持ってる?」

その返答に一瞬ぎょっとするも、そういえば兄の関係者だと思い直し、なるべく動揺を表に出さず、答えた。

「ええ、兄貴のプレゼントですから、肌身離さず持ってますよ」

ペンダントの『中身』についてはおくびにも出さず答える。

兄との約束だ。例え誰であっても『それ』については話す気はなかった。

自分の動揺に気づいているのかいないのか、彼女はサバサバと言葉を重ねた。

「そ、それ。それの機能の一つで、君の現在位置を把握したの。ま、GPSみたいなもんね」

そう答えると、彼女は自身のスマホを弄り、一夏に背を向けた。

「さて、立ち話もなんでしょうし、招待するわ。太郎の元へ。」

そう言って彼女が手で何かの合図をすると、厳重な門が開かれ、ガードマン達が警戒を解き、その手を敬礼の形に変える。

その間をゆっくりと歩きながら、彼女は目だけ一夏に向けて、言葉を放つ。

「自己紹介が遅れたわね。私の名は更識楯無。この学校の生徒会長よ、『義弟』(おとうと)君?」

「あ、はい」

その言葉を受け、一夏は歩を進める。

兄の待つ学園、その中へと。
 
 

 
後書き
~その日の太郎と千冬の会話~

「その……太郎、少し不味い事をしたんだが助けて貰っていいか?」

「あん?別にいーけど」

「弟に太郎と子供の事言うの忘れてた。」

「…………俺がドイツに凄まじい借りまで作った件を忘れた……だと。…………死ぬまで一夏に謝れば(プツッ)」

「おい!太郎、ちょっと太郎!」 
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