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190部分:ラグナロクの光輝その四十四


ラグナロクの光輝その四十四

「ファゾルトのデータが全く手に入らない以上仕方のないことですが」
「はい」
 直属の腹心の部下の一人であるティートゥレルがそれに応えた。
「ですがそれがないと」
「ええ。どうしたものか」
「出来れば改良されたであろうファフナーのデータも」
「問題はそこだけですが。ですがそこをクリアーしなければ」
「我等の勝利はおぼつきません」
 この問題に関しては手詰まりであった。天才科学者と謳われたトリスタンですらどうしようもなかった。こうして時間だけが過ぎていくと思われた。だがそれは突如として打開された。
「総帥」
 ある日パルジファルの下に報告が上がった。
「ワルキューレの方々から通信です」
「通信!?」 
「いえ、違いました」
 だがすぐにそれは訂正が入った。
「資料が届いております」
「資料が」
「はい、まずはヴァルハラ星系に関してです」
 その部下は述べた。
「ヴァルハラの宙図」
「ほう」
 パルジファルはそれを聞いて声をあげた。
「それは有り難い」
 決戦の場の宙図が手に入る。これは非常に大きかった。敵を知り己を知らば百戦危うからずというがその戦いの場を知るのもまた重要なのである。
「そして」
「まだあるのですか」
「はい、ファゾルト及びファフナーに関してです」
「黒竜に関して」
 竜につても述べられる。
「そうです、その戦闘力や特徴まで仔細に載っております」
「ふむ」
「御覧になられますか?」
「無論です」
 彼に躊躇はなかった。それだけの資料ならば是非見たかった。そして彼はそれを選んだ。
「では今からそちらに向かいます」
「はい」
 こうして彼は自ら資料を手に取った。それから自室でそれを見る。その内容はまずは驚くべきものであった。
「これがヴァルハラの宙図」
 実に不思議な星系であった。一つの恒星の周りに多くの惑星がある。だがその中でとりわけ目立つのが赤く塗られた星と青く塗られた星である。赤い星にはライン、青い星にはノルンと書かれていた。
「これがヴァルハラ双惑星」
 その二つの惑星は丁度向かい合いながら同じ軌道上を回っている。まさに双子であった。この二つの惑星こそがパルジファル達が目指す星系である。パルジファルはそれを思いながら宙図を眺めていた。
「思ったより複雑な星系ではないですね」
 これといった障壁はない。ムスッペルスヘイム星系の様に複雑な潮流もなかった。意外なまでに静かである。その静かな星系で彼等は戦うのだ。これから。
「そして」
 次に彼はファゾルト及びファフナーの資料を見た。まずはファフナーである。
 ファフナーはかつてバイロイトとニュルンベルグを破壊し、ヴァルターに倒されたものより速度と防御力が一ランクずつ上がっている形であった。それが六体あるという。確かに脅威ではある。
「ですが」
 だがパルジファルにはこの程度ならば対策があった。
 ミョッルニルを強化することにした。どのみち連射性と命中精度を確かなものにするつもりだった。それで充分に足りると思われた。そして彼はその通りにすることにした。ファフナーは問題ではなかった。
 だがファゾルトはそうはいかないようであった。資料を見たところファフナーのそれよりも遥かに強大である。数は一体だけであるが。それでも彼にとっては厄介な脅威であった。
「これはミョッルニルだけでは」
 対処出来ないのではないか、そう思った。その時だった。
 
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