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187部分:ラグナロクの光輝その四十一


ラグナロクの光輝その四十一

「そしてヴァルハラへの道が」
「明らかになるというのか」
「だが。罠ではないのか?」
 ヴァルターが言った。
「罠か」
「そうだ、奸智にも長けたニーベルングのことだ。その可能性は否定できない」
「それはあるかもな」
 ローエングリンがそれに頷いた。
「少なくともヴァルハラには策がある」
「それが。ファゾルトとファフナーか」
 トリスタンが呟いた。
「二匹の竜で迎え撃つか」
「そしておそらくは帝国軍も全軍を以って」
 ジークフリートも口を開いた。
「ラインにいる。それを倒すのは」
「容易ではない」
 次にタンホイザーが言った。
「まさしく運命の戦いになるだろう」
「最後で最大の戦いってわけかよ」
 ジークムントが口の端を歪めて軽口を叩いた。
「ラグナロクってわけだな」
「そうです、ラグナロクです」
 そしてパルジファルが。ラグナロクという言葉に頷いた。
「神々の黄昏」
「神々と巨人達の最後の戦い」
 それを知らない者はこの銀河にはいなかった。三年にも渡る長い冬の後神々と巨人の軍勢は最後の戦いに入る。そして最後は神々も巨人達も戦場に倒れ炎に包まれた世界は一度なくなる。それから次の時代がはじまると言われている。それが神々の黄昏、ラグナロクであった。
「それがヴァルハラで行われます」
「神話のままに」
 神話では神々の城であるヴァルハラもまた焼かれるのだ。一人の戦乙女が放った炎が炎の神ローゲを呼び出し、彼は全てを浄化する。そこから生まれるのは新たな世界、次の時代なのだ。破壊であると共に創造の炎なのだ。
「炎に焼かれるのは我々か彼等か」
「若しくは神話にある様に両方か」
「それがはっきりします」
「そうか、ではどちらにしろヴァルハラに行くしかないな」
「はい」
 パルジファルは六人に頷いた。
「とりあえずはここでの戦いは終わりましたが」
「最後の戦いへの前奏に過ぎなかったな」
「ですが道は開けました」
「そうだな」
 この言葉には六人全てが頷いた。
「ヴァルハラへ」
「はい、神々の城へ」
 パルジファルも頷いたその時だった。ワルキューレ達が祭壇にやって来た。七人はそれを迎える。こうしてムスッペルスヘイムでの戦いは幕を下ろした。そして彼等はすぐに次の戦いへと移るのであった。
「そうですか、終わりましたか」
「はい」
 七人とワルキューレ達はグラールの会議室で対面していた。そのうえでブリュンヒルテはパルジファルの話を聞いていたのである。
「そしてヴァルハラへの道も」
「それは貴女達も御存知だと思いますが」
「その通りです」
 ブリュンヒルテもそれを認めた。
「我々の本拠地はノルンにありますから」
「やはり」
「そこが我々アース族の故郷だったのです」
「そしてそこからこのノルン銀河に広がった」
「はい」
 こくりと頷いた。
「それも思い出されましたか」
「それだけではありませんが」
 パルジファルは述べた。
「これまでの四つの帝国のことも。おおよそは」
「第一帝国及び第二帝国はアース族の帝国でした」
 ブリュンヒルテは述べた。パルジファル以外の六人はその話を黙って聞いている。
「それはニーベルング族との、そしてホランダー族等との戦いで滅び」
「第三帝国はホランダー族の帝国でした」
「ええ」
 ブリュンヒルテはまたパルジファルの言葉に頷いた。
「ですが第三帝国はアース族の復活によって滅び」
「第四帝国が出来上がった」
「それが銀河の歴史です。果てしない権力闘争の歴史なのです」
「このノルン銀河、いえ宇宙がはじまって以来の」
「そこまで記憶を取り戻しておられたのですか」
「それはね。最初に」
 彼はワルキューレ達に答えた。
「戻っていました。そして」
「そこから今まで。記憶を甦らせて」
「おおよそのことがわかりました。この銀河についても四つの帝国についても」
「そこまで」
 感嘆すべきことだった。実際にパルジファル以外の六人は感嘆した顔になっていた。
 
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