英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇
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第34話
5月15日――――
~格納庫~
翌日、機甲兵教練の為にⅨ組の生徒達が機甲兵のメンテナンス等をしている中その様子を見守っているランディにリィンは近づいた。
「なんだかんだ、主計科の連中も様になってきたじゃねえか。トワちゃんやレン嬢ちゃん、それに爺さんの指導が適切なのかもしれんが。」
「どの人物も非凡な人だからな。博士はまあ、放任主義みたいだが。生徒達も頑張っていると思うし……前回よりは上手くこなせると思う。」
「ああ……ここでの違いは緊急時の対応を左右するからな。戦術科や特務科の連中も負けずに仕上げるとしようぜ。」
「ああ……!」
ランディの言葉にリィンは力強く頷いた。
「そういや―――話は変わるが、あの後、大変だったんだって?」
「ああ……もう少し上手い断り方ができたと思うんだが……」
ランディの指摘で昨日のセドリック皇太子の勧誘の件を思い出したリィンは困った表情を浮かべた。
「はは、人気者はツラいねぇ。それにしても……あれがエレボニアの皇太子か。オリヴァルト皇子やアルフィンちゃんと比べたら親しみは感じにくかったな。というか正直あの皇太子とアルフィンちゃんは双子らしいが、似ているのは容姿だけで性格に関してはなんつーか、真逆だな。まあ、誰が皇族っぽいかといえば、皇太子の方かもしれんが。」
「そうだな………」
ランディのセドリック皇太子に関する感想にリィンは静かな表情で同意した。その後準備を終えたリィン達は2度目の機甲兵教練を開始した。
2~4限 機甲兵教練
~グラウンド~
「―――ウェイン!重心移動には気をつけろ!咄嗟の旋回ができれば前回みたいな対戦車砲の直撃もギリギリ回避できるぞ!」
「りょ、了解であります……!」
「マヤ、お前の持ち味はアウトレンジでの行動だ!狙撃、支援、移動―――常に距離を保ちつつ即行動に移れるようにしろ!」
「イエス・サー。」
「………………」
「昨日の事……まだ引きずってる?」
「殿下のお誘いについて迷っているんですか?」
「えっと……セドリック皇太子はクルトの実家の事についても言っていたけど……それも関係しているのかしら?」
生徒達と共に機甲兵教練を見守っていたクルトは複雑そうな表情を浮かべて黙り込み、クルトの様子に気づいたユウナやアルティナ、ゲルドはそれぞれクルトに訊ねた。
「まさか……今更考えられないさ。……それでもいつか一命を賭してでもお守りしようとしていた方だ。本校行きを辞退した事が本当に良かったのか……つい考えてしまってね。」
「そっか………」
「…………………」
「………少なくてもクルトが本校に行かなかった事はクルトの人生にとっては、よかったと思うわ。」
クルトの答えを聞いたユウナとアルティナが静かな表情でクルトを見つめている中ゲルドは静かな口調で指摘し
「?それはどういう意味―――――」
ゲルドの指摘が気になったクルトがゲルドに訊ねかけたその時、格納庫からトワやティータ、本校の卒業生で臨時整備員として就任したミントが出て来た。
「も~、強引だなぁ。」
「あのあの……!いきなりっていうのは!」
「と、とにかく分校長を呼んできますから……!」
「……?何かあったのかしら。」
格納庫から出て来たミントとティータが格納庫に向かって反論している中トワはARCUSⅡを取り出して誰かに通信を始め、その様子に気づいて生徒達と共にトワたちの様子を見ていたレンは眉を顰めた。するとその時格納庫から何かの音が聞こえ
「この音は……」
「機甲兵の移動音……?」
「え、でも機甲兵ってここにあるの以外は……」
格納庫から聞こえてきた音にクルトと共に眉を顰めたアルティナの推測を聞いたユウナが首を傾げたその時、格納庫から真紅の機甲兵を先頭に3体の機甲兵が現れた。
「ええっ!?」
「赤い……機甲兵……」
「ドラッケン―――いや。」
「上位機に相当する”シュピーゲル”ですね。」
突然現れた3体の機甲兵にユウナは驚き、ゲルドは呆け、クルトとアルティナは真剣な表情で赤い機甲兵を見つめた。
「へぇ……?」
「トールズの紋章……?」
「ええ……!しかもあのデザインは――――」
新たに現れた機甲兵に刻まれている”トールズ本校の紋章”に気づいたアッシュは興味ありげな表情をし、グスタフは眉を顰め、何かに気づいたゼシカは血相を変えた。
「そこの3機、止まれ!」
するとその時ヘクトルを操作しているランディが3体の機甲兵に声をかけた。
「お前ら……どっから沸いてきた?」
「どうやら貨物列車で到着したみたいだが……所属と名前を名乗ってもらおうか?」
「――――ええ、それは勿論。」
「あら、この声は……」
「ほう~?」
リィンの問いかけに対して答えた赤い機甲兵の操縦者の声を聞いたリィンとランディが驚いている中、レンは目を丸くし、ランドロスは不敵な笑みを浮かべた。
「トールズ士官学院”本校”所属、セドリック候補生以下3名です。第Ⅱ分校の機甲兵教練への特別参加を希望し参上しました。」
「………!」
「ええっ……!?」
「”特別参加”ねぇ?」
「”飛び込み”とは、中々わかっているじゃないか。だぁっはっはっはっ!」
「い、一体何が目的で………―――――あ。」
「おいおい……昨日の今日でかよ。」
赤い機甲兵――――シュピーゲルの操縦者であるセドリック皇太子の答えを聞いたリィンとユウナは驚き、レンは意味ありげな笑みを浮かべ、ランドロスは感心した後豪快に笑い、セレーネは戸惑っていたがすぐにセドリック皇太子の目的を悟ると呆けた声を出してリィンが操縦するドラッケンに視線を向け、ランディは呆れた表情で溜息を吐いた。
「殿下……!一体どうして……!?」
するとその時クルトが前に出てセドリック皇太子に真意を問いかけた。
「言っただろう。返事を聞かせてもらうって。それと―――今の僕の実力を君やリィンさんにも知ってもらいたくてね。」
「え………」
「3機、出してください。本校と第Ⅱの親善試合と行きましょう。――――できれば相手は”Ⅶ組”を希望しますが。」
セドリック皇太子の要求にその場にいる全員は血相を変えた。
「おいおい、皇太子殿下。無茶言わないでくださいよ。こっちはしかるべき手順と安全を考えてやってるんでね。」
「………自分達の権限ではとても認められません。せめて自分達教官が稽古をつける形ならば――――」
一方ランディとリィンはセドリック皇太子の要求を断ろうとしたが
「構いません――――私が許可します。これもまた常在戦場。互いによき刺激になるでしょう。存分にやり合いなさい。」
「……ううっ………」
「こ、こんな事が上に知られたら……!」
「うふふ、分校長さんの事だからそう言う事になると思っていたわ♪」
「クク、さすが分校長殿はよくわかっているじゃねぇか!」
何といつの間にミハイル少佐と共に現れたリアンヌ分校長がセドリック皇太子の要求に答える答えを口にし、リアンヌ分校長の答えを聞いたトワは疲れた表情で肩を落とし、ミハイル少佐は頭痛を抑えるかのように片手で顔を覆い、レンは小悪魔な笑みを浮かべ、ランドロスは不敵な笑みを浮かべていた。
「…………」
「―――行こう、クルト君!ここまで言われて引き下がってもいいの!?」
セドリック皇太子が操縦する機体を見つめて考え込んでいたクルトに声をかけたユウナはアルティナやゲルドと共にクルトに駆け寄った。
「っ………―――わかった。畏れ多くはあるが……!」
「でしたらわたしかゲルドさんを入れてちょうど3人ですか。」
「わたしはまだ基本操作くらいしかできないから、アルティナがユウナとクルトと一緒にセドリック皇太子達と試合をした方がいいわよね……?」
「ハッ、こんな面白いイベント、てめえらで独占すんじゃねえよ。」
セドリック皇太子達との親善試合のメンバーをⅦ組のメンバーが決めかけたその時、アッシュが制止の声をかけてユウナ達に近づいた。
「もう一人は俺がやる。お前達はどいてな、チビ兎と白髪魔女。――――ランドルフ教官!ヘクトルを貸してもらうぜ!」
「アッシュ……」
「チビ兎……まあ異存はありませんが。」
「白髪魔女……この髪は白髪じゃなくて地毛なんだけどね………でも3人とも、頑張って……!」
「誰だっていいわよ!ギャフンと言わせてやりましょ!」
「ああもう、マジかよ……!?」
「……事故だけは起こらないよう注意するしかないな。」
既に親善試合の空気になっている事にリィンと通信をしていたランディは疲れた表情で声を上げ、リィンは静かな表情で呟いた。その後それぞれの機甲兵に乗り込んだユウナ達はセドリック皇太子達が操縦するシュピーゲル達と対峙した。
「……第Ⅱ分校、せいぜい全力で来るがいい。」
「フフ、本校のレベル、存分に見せてあげますわ。」
ユウナ達と対峙したセドリック皇太子と共にいる本校の生徒達はそれぞれユウナ達に対して挑発をし
「クク、面白ぇ。」
「どうやら本校のエース級の生徒みたいだな……しかも全員、上位機か。」
「ちょっとの性能差なんか実戦じゃ関係ないわよ!こっちが潜った修羅場、エリートに見せてやるわ!」
挑発に対してアッシュは不敵な笑みを浮かべ、クルトはセドリック皇太子達の戦力を分析し、ユウナは闘志を高めた。
「―――これよりトールズ本校、第Ⅱ分校の模擬機甲兵戦を開始する。両者、練習用武装を使用、コックピットへの直接攻撃は禁止!小破以上で戦闘不能判定とする!それでは――――尋常に勝負!」
そしてリィンの号令を合図にユウナ達はセドリック皇太子達との試合を開始した!その後ユウナ達は苦戦しつつも、協力してセドリック皇太子達を戦闘不能に追いやった。
「勝負あり―――そこまで!」
「よっしゃああっ!」
「って、皇太子殿下に勝っちゃったりしたら……」
「さすがにそこに文句は言わないだろうさ。」
ユウナ達の勝利にパブロが無邪気にはしゃいでいる中、不安そうな表情を浮かべたカイリの推測にレオノーラは苦笑しながら否定し
「はあっ、はあっ……」
「や、やったね……!」
「……ハッ……こんなところか……」
勝利したクルト達はそれぞれ疲弊した様子で自分達の勝利を喜んでいた。
「……さすが腐ってもヴァンダールといった所か。そちらの二人も”分校”の生徒にしては悪く無かった。」
するとその時セドリック皇太子達がクルト達の通信に割り込んでクルト達を評価した。
「……っ……」
「き、君ねぇ……!」
「クク、スカした面して意外とかますっつーか……」
「―――クルト。今日は負けを認めておこう。だが、入学して2ヵ月で僕はここまで強くなった。剣もろくに使えなかった僕がね。―――君も成長しているだろうが2ヵ月後にはどうだろう?」
「そ、それは………」
セドリック皇太子の問いかけに何も返せないクルトは言葉を濁していた。するとその時他のシュピーゲル達と共に立ち上がった赤いシュピーゲルはランドロスの方向に機体を向けた後剣をランドロスに突き付けた。
「へえ?」
「こ、皇太子殿下……!?一体何を………」
「クク、これは何の真似だ?」
セドリック皇太子の行動にレンは意味ありげな笑みを浮かべ、トワは戸惑い、ランドロスは不敵な笑みを浮かべてセドリック皇太子に問いかけた。
「ちょうど良い機会ですので、先程あったリィン教官の申し出―――第Ⅱ分校の教官の方にも”稽古”をつけて頂こうと思いまして。自治州だったクロスベルをこのエレボニアと同格―――いえ、それ以上の”国家”を作り上げる礎となった名高き”六銃士”の一人に今の僕達の力がどこまで通じるか、試してみたいのですよ。」
「な――――――」
「ちょ、ちょっと……!?」
「おいおい………その仮面のオッサンの正体を知っていて、自分が何者なのか自覚していて言っているんですかい、皇太子殿下。」
「こ、皇太子殿下!幾ら何でも、お戯れがすぎます!」
セドリック皇太子の提案にリィンは絶句し、ユウナは信じられない表情で声を上げ、ランディは目を細めてセドリック皇太子が操縦するシュピーゲルを見つめて問いかけ、ミハイル少佐は慌てた様子でセドリック皇太子を諫めようとした。
「フフ、僕は”トールズ”に連なる分校の教官に”稽古”をつけて頂くという滅多にない機会を逃したくないから、この場に来て”稽古”をつけて頂きたい教官本人に頼んでいるだけですよ?何かおかしな事でも?」
「だ、だからといって、よりにもよってランドロス教官に”稽古”をつけて頂くなんて……」
「うふふ、どう考えてもランドロス教官がどこの誰かを”確信”していて稽古をつけてもらいたいのでしょうね。」
セドリック皇太子の説明にセレーネは不安そうな表情をし、レンは小悪魔な笑みを浮かべた。
「クク、俺の二つ名は”仮面の紳士”で、あのクロスベルの大英雄と称えられている”六銃士”じゃないんだがな………ま、そっちがお望みなら、遠慮なく”躾けて”やるよ、エリート気取りの悪ガキ共。」
「エ、”エリート気取りの悪ガキ”……!?私達を侮辱しているんですか……!?」
「……自分達は本校でも選りすぐりのメンバーだ。その言葉、取り消してもらおう。」
ランドロスの挑発に対して本校の生徒達はそれぞれランドロスを睨み
「そういう訳だから、このエリートに酔いしれた悪ガキ共の鼻っ柱はオレサマが叩き折る!―――構わねぇよなぁ、分校長殿!」
「――――構いません。皇太子殿下を含めた本校の生徒達も”世界は広い”事を知るべきです。」
「ほ、本気ですか、分校長……!?」
「こ、こんな事、絶対に上に知られる訳にはいかん……!」
不敵な笑みを浮かべたランドロスに許可を求められたリアンヌ分校長は許可をし、リアンヌ分校長の許可を聞いたトワは驚き、ミハイル少佐は疲れた表情で頭を抱えた。
「ルールはさっきと一緒でいいな?ちなみに俺に勝つ条件は俺に一撃入れる事ができればいいぜ?」
「ええ。そちらこそ本当によろしいのですか?幾らランドロス教官が凄まじい使い手とはいえ、生身で機甲兵に挑むのは無謀かと思われるのですが?」
ランドロスの問いかけに対してセドリック皇太子は不敵な笑みを浮かべて問い返し
「おいおい、”某自治州の某警備隊司令”は生身で”某帝国ご自慢の戦車を模擬戦用の武装で真っ二つにした例”があるんだから、オレサマにとってはお前達みたいなガキ相手はコイツがあれば十分だよ。」
「な―――――ぼ、”木刀”………!?」
「い、幾ら何でも生身で、しかも木刀で機甲兵3機に挑むなんて無茶じゃありません!?」
「ア、アハハ……常識で考えればそうなのですが……」
「………ランドロス教官はその”常識”に当てはまりませんから、実際に試合をしてみないとわからないかと。」
(今までの話からするとランドロス教官はもしかしてデュッセルさんみたいな凄い使い手なのかしら……?)
「つーか、本当に正体を隠すつもりがあるんだったら、わざとらしく正体に気づかれる話をするんじゃねぇ……!」
「クスクス………―――それじゃあリィンお兄さん、引き続き号令をお願いね♪」
ランドロスが構えた武装が模擬戦用の武装や実戦用の武装ではなく木刀である事を見たその場にいる全員が驚いている中クルトは絶句した後ユウナと共に信じられない表情で声を上げ、セレーネとアルティナの推測を聞いたゲルドは考え込み、ランディは疲れた表情で声を上げ、その様子を面白そうに見ていたレンはリィンに声をかけた。
「わ、わかりました。これよりトールズ本校生徒、第Ⅱ分校教官の模擬試合を開始する。双方、構え!」
「わ、私達を子供扱いした所か生身で、しかも木刀で3機の機甲兵に挑むなんて、どこまで私達の事をバカにしているのですか……!?」
「その無謀さ、その身を持って味わされる事を後悔しないで下さい、ランドロス教官……!」
「フフ、それでは見せてもらいますよ?”クロスベルの大英雄”―――――”六銃士”の”力”とやらを?」
リィンが号令をかけてそれぞれ戦闘の構えをした本校の生徒達はそれぞれ怒りの表情でランドロスを睨み、セドリック皇太子は不敵な笑みを浮かべ
「だぁっはっはっはっ!纏めてかかってこい、悪ガキ共!全員纏めて”世界の広さ”ってヤツを教えてやるよ!」
ランドロスは豪快に笑ってセドリック皇太子達が操縦するシュピーゲル達を見つめ
「―――始め!」
リィンの号令を合図にランドロス達は模擬戦を開始した!
「速攻で決めますわ!―――喰らいなさい!」
銃を持つシュピーゲルはランドロス目がけて銃を連射した。シュピーゲルの銃から放たれた無数のエネルギーの弾丸はランドロスを襲ったが
「クク、遅ぇ遅ぇ!オレサマからすればまだハエの方が速いぜっ!?」
何とランドロスは襲いかかる弾丸を全て木刀で弾いた!
「な――――な、生身で、それも木刀で模擬戦用とはいえ機甲兵用の銃の銃弾を弾くなんて非常識ですわ……!」
「さすがは音に聞く”六銃士”の中でもトップクラスの使い手と言われているだけはあるという事か……――――ならば、これはどうだ!?」
攻撃を無効化された事に銃を撃った機甲兵の操縦者である眼鏡の女子が驚いている中両腕にこん棒のような武装を持つシュピーゲルを操縦する厳つい男子はシュピーゲルを操縦してランドロスに近づき、両腕のこん棒をそれぞれ同時にランドロス目がけて振り下ろした!しかしランドロスは前方に跳躍して振り下ろしたこん棒の攻撃を回避した。
「手応えはない……躱されたか。どこに行った……!?」
「足元だ、フリッツ!」
自身の攻撃を躱された事にすぐに気づいたシュピーゲルが周囲を見回しているとセドリック皇太子が忠告をしたが
「まずは1体だ。オラアッ!!」
「ぐっ!?バ、バカな……一撃で……それも木刀で両脚の関節を無力化しただと……!?無念……!」
ランドロスは跳躍して木刀でクラフト――――豪薙ぎ払いを放ってシュピーゲルの関節部分を攻撃して一撃でシュピーゲルを戦闘不能に追いやり、ランドロスの常識外の凄まじい攻撃に驚いた厳つい男子は悔しそうな表情を浮かべた。
「……………」
「な、ななななななな……っ!?」
機甲兵の中でも上位機であるシュピーゲルが木刀で瞬殺された一連の流れを見たセドリック皇太子は呆然とし、眼鏡の女子は混乱していた。
「クク、次はお前だ。」
「ヒッ……!?」
そして獰猛な笑みを浮かべた後自分に向かって突撃し始めたランドロスに視線を向けられたシュピーゲルを操縦する眼鏡の女子は悲鳴を上げた後ランドロスに牽制射撃をしようとしたが獰猛な笑みを浮かべたランドロスに視線を向けられた瞬間、まるで蛇に睨まれた蛙のように身体が動かなかった為操縦席で硬直し続け
「好きにはさせませんよ!」
セドリック皇太子の赤いシュピーゲルは眼鏡の女子のシュピーゲルを庇うかのように眼鏡の女子のシュピーゲルの前へと移動した後突撃してくるランドロスに騎士剣による斬り払い攻撃を仕掛けたが
「そらよっ!」
「な――――」
「あ――――」
何とランドロスはギリギリのタイミングで跳躍して攻撃を回避すると共に赤いシュピーゲルの頭の部分を足蹴にして跳躍して赤いシュピーゲルを飛び越えて硬直し続けている眼鏡の女子のシュピーゲルの肩に着地すると攻撃を仕掛けた!
「沈めやぁっ!」
「あぐっ!?こ、今度は素手で、しかもまた一撃でシュピーゲルを無力化するなんて……!あ、ありえませんわ……!?」
ランドロスが放った凄まじい闘気を拳に集束して装甲すらも破壊する一撃を放つクラフト――――延髄砕きで頭を攻撃されたシュピーゲルは頭から伝わってくる凄まじい衝撃によって地面に倒れて戦闘不能になり、シュピーゲルの操縦者である眼鏡の女子は信じられない出来事の連続に混乱していた。
「クク、お供はいなくなったが、まだ続けるか、皇太子殿?」
「…………当然じゃないですか。貴方は今の僕達では絶対に敵わない相手である事は理解できましたが………――――それでもせめて一矢は報いないと本校生徒として……そしてアルノール家の者として、自分を許せません!」
ランドロスの問いかけに対して静かな怒りを全身に纏った後ランドロスを睨んで声を上げて答えたセドリック皇太子は赤い機甲兵を操縦して”溜め”の構えをさせ
「だぁっはっはっはっ!そうこなくっちゃなぁっ!」
対するランドロスはセドリック皇太子の答えに豪快に笑った後ランドロスも”溜め”の構えをした。
「ハァァァァァァァ………ッ!」
「オォォォォォォォ………ッ!」
それぞれ”溜め”の構えをした機甲兵とランドロスは全身に闘気を纏い
「紅き刃よ――――フレイムエ―――」
赤い機甲兵が先に動いてランドロスに炎を纏った騎士剣で攻撃を仕掛けたその時!
「大地よ、吼えやがれ――――天震撃!!」
「な―――――ガッ!?………くっ………これ程とは……っ!」
ランドロスは莫大な闘気を収束した木刀を地面に叩き付けて空にも届く程の強烈な衝撃波を発生させ、真正面から衝撃波に突撃してしまった赤い機甲兵はランドロスが発生させた衝撃波にぶつかった瞬間ふっ飛ばされて地面に叩き付けられて戦闘不能になり、赤い機甲兵の操縦席にいるセドリック皇太子は悔しそうな表情を浮かべた。
「勝負あり―――そこまで!!」
「「………………」」
「ランドロス教官が宣言した通り、生身かつ木刀であっという間に機甲兵を操縦するセドリック皇太子達を無力化したわね……」
「はい。相変わらずの”化物”っぷりです。………まあ、その”化物”を超える”化物”もこの場にいますが。」
「ア、アハハ……予想通りの結果でしたわね。」
「うふふ、相変わらずエステルとは別方向で突き抜けているオジサンね♪」
「つーか、1年半前より更に無茶苦茶さが上がってねぇか、あのオッサン!?」
リィンが終了の合図を出すとその場にいる一部の人物達を除いた全員は驚きのあまり絶句するか口をパクパクしている中、クルトやユウナも周りの生徒やトワやミハイル少佐のように絶句するか口をパクパクさせ、呆けた表情で呟いたゲルドの言葉に頷いたアルティナはジト目になり、セレーネは苦笑し、レンは小悪魔な笑みを浮かべ、ランディは疲れた表情で声を上げた。
「だぁっはっはっはっ!今回の”稽古”は中々勉強になっただろう、悪ガキ共!」
「くっ……生身で、それも木刀で3機もの機甲兵を一瞬で無力化するなんて、ランドロス教官は私達と同じ”人間”なんですか……!?」
「音に聞く”六銃士”………まさか、こんなとてつもない”化物”だったとは………今日からより精進する必要があるな………」
「………っ!―――御指導、ありがとうございました、ランドロス教官。」
豪快に笑ったランドロスはセドリック皇太子達に問いかけ、それぞれの機甲兵の操縦席にいる眼鏡の女子は信じられない表情で声を上げ、厳つい男子は真剣な表情を浮かべて新たなる決意をし、セドリック皇太子は悔しさのあまり身体を震わせて唇を噛みしめたがすぐに気を取り直してランドロスに対する感謝の言葉を述べ、そして操縦席から外に出て機甲兵の頭の部分まで昇って行ってその場にいる全員を見回して宣言をした。
「―――負けは負けですから今日は大人しく退散しましょう。クロスベルでの演習の準備を邪魔するつもりもありません。ですが僕は貴方を諦めませんよ。リィン・シュバルツァー教官――――」
「………!」
セドリック皇太子の宣言にリィンが息を呑んだその時セドリック皇太子は機甲兵の操縦席へと戻った後2体の機甲兵と共に格納庫へと入って行った。
「―――こちらミハイル!02方面隊に繋いでくれ!皇太子殿下を運ぶ列車の運行計画が来ていないぞ!?」
セドリック皇太子達の様子を見守っていたミハイル少佐はARCUSⅡを取り出して誰かと通信をし
「2ヵ月……それであれだけの剣技を……」
「クロスベルでの演習って………どういうこと………?」
「クク……皇太子か。なかなかイカれてるが………暴君の方がもっとイカれてやがったな。」
クルトは複雑そうな表情を浮かべて格納庫に視線を向け、セドリック皇太子の宣言のある内容が気になっていたユウナは困惑の表情を浮かべ、アッシュは不敵な笑みを浮かべていた。
「はあ……ゴメンね。分校長を説得できなくて。」
「仕方ありませんよ………そういう人なんでしょうから。」
一方リィンとセレーネにアルティナとゲルドと共に近づいたトワはリィンに謝罪し、謝罪されたリィンは苦笑しながら答え
「―――ところで次の演習地は報告通り、クロスベルなんですね?」
「クロスベル………ユウナの故郷だったわね。どんな所かしら……?」
アルティナはリィン達に次の演習地について確認し、アルティナの問いかけを聞いたゲルドは考え込んだ。
「う、うん……午後に説明する予定だけど。」
「生徒達を動揺させないよう、気を配る必要がありそうですね。」
「はい………特にユウナさんには………」
アルティナのマイペースさに冷や汗をかいて脱力したトワは苦笑しながら答え、リィンの言葉に頷いたセレーネは心配そうな表情でユウナの操縦するドラッケンに視線を向けた。
「うふふ、あの変わりよう………”駒”となるか”指し手”となるか、貴方はどう見立てるかしら……?」
「ふふっ、そうですね。――――”子供達”の一人としてどう取り込まれているか次第かと。」
一方レンはミュゼに問いかけ、問いかけられたミュゼは静かな笑みを浮かべて答えた。
午後――――本校舎の戦略会議室で生徒達に演習地の発表が行われた。合わせて同時期に”三帝国交流会”がクロスベルで開催される事も伝えられ……先月のサザ―ラント州での騒ぎも踏まえ、生徒達に檄が飛ばされるのだった。
~本校舎・戦略会議室~
「万が一の時こそ、諸君の出番だ!本校に劣らぬ事を示す為にも日頃の成果を見せてもらいたい!」
「…………うそ…………」
ミハイル少佐が生徒達に檄を飛ばしている中ユウナは信じられない表情をした後ランディに視線を向けたが、視線を向けられたランディは苦笑しながら肩をすくめた。
「…………っ………」
(ユウナ………)
ランディの様子を見て息を呑んだ後複雑そうな表情で黙り込んでいるユウナをゲルドは心配そうな表情で見守っていた―――――
後書き
という訳でセドリックのドヤ顔の話のはずがまさかの暴君による大暴れ……じゃなくて小暴れ?の話でしたww木刀で機甲兵を一撃で戦闘不能にするどころか、籠手を付けているとはいえ素手でも一撃で機甲兵を戦闘不能にする某仮面の紳士ならではの説得力かとww
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