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真田十勇士

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巻ノ百三十五 苦しい断その八

「くれぐれも」
「そして修理殿は」
「それがしですか」
「どうされますか」
「決まっております、右大臣様さえご無事なら」
「戦の責を取られて」
「はい、腹を切ります」
 木下家の者にもこう言うのだった。
「そうする次第であります」
「左様でありますか」
「この様に至った責もありますし」
「それで、なのですか」
「そう致します」
「では」
「右大臣様をお願い申す」
 自分はいいと言うのだった、木下家の者とこうした話もした。彼もまた打てる全ての手を打っていた。
 戦が再び近付く中でも時は動き昼になれば夜にもなる、そして夜になると星も出るがその星を見てだった。
 幸村は十勇士達と大助に眉を曇らせて言った。
「多くの将星が落ちておるな」
「将星が」
「落ちておりますか」
「西のな」
 そちらのというのだ。
「逆に東の将星はじゃ」
「そちらはですか」
「西とは違い」
「殆ど落ちておらぬ」
 そうした有様だというのだ。
「これはな」
「戦の流れですな」
「それを示していますな」
「これからの戦の」
「それをですな」
「うむ、しかし右大臣様の星と思われる一際大きな星はな」
 その星はというと。
「落ちず我等もじゃ」
「我等の星はですか」
「落ちておらぬ」
「そうなのですか」
「うむ、拙者の星もお主達の星もな」
 十勇士達にも大助にも話した。
「落ちておらぬ」
「では」
「我等は次の戦では」
「死なぬ様じゃ」
 星が示す限りではというのだ。
「どうやらな」
「そうなのですか」
「相当な将の方が死のうとも」
「殿とそれがし達は」
「誰も死にませぬか」
「それはどういうことか」
 幸村は考えつつ彼等に述べた。
「考えてみたがな」
「はい、どういうことでしょうか」
「我等の星が落ちぬのは」
「死なぬのは」
「ことを果たせということであろう」
 こう家臣達に話した。
「我等が果たすべきな」
「それでは」
「この戦の最後で」
「右大臣様をですか」
「お救いせよと」
「そうであろう、しかし何としてもじゃ」
 彼等はというのだ。
「戦がはじまればな」
「その時はですな」
「勝ちを目指す」
「その勝ちの為には」
「何としてもですな」
「大御所殿の首を取るしかなくなった」 
 幸村は十勇士達に強い声で告げた。 
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