異世界にやってきた俺は、チート能力を駆使して全力でスローライフを楽しむ!
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平和な証
こうして俺は騎士団に所属? しているらしい少女を出し抜くことに成功した。
まさか女の子で俺を落とそうと狙ってくるとは……なかなか敵も侮れない。
「女の子に頼まれると、断り辛いんだよな」
俺は小さくため息をつく。
断らなければならない時に断り切れず、そのせいで敵の罠にかかってしまったこともある。
あの時は仲間を危険に曝してしまい、時には心を鬼にしないといけないと反省した記憶がある。
ただあの時も仲間に、男に言われても同じような行動をとったんじゃない? と言われた気がする。
助けを求められて、見捨てられなかったのがその時の出来事だから、確かにそうかもしれない。
実際に今だってスローライフをしようと決意もしたのに、いざ誰かが傷つこうとしていたなら俺は、“助ける”行動をとってしまった。
「損な性格だよな……でもこれを変えると、場合によっては卑怯者だしな……やはり、人知れず人助けをしたり問題を解決してスローライフに突入する……そうすれば目立たず、俺に降ってくる厄介ごとも少なくなるはず」
そう俺は頷く。
きっと大丈夫なはず。
何せ俺は“巻き込まれ主人公”ではないはずだから!
今回はこの世界に、別世界の“英雄”もいるようだし、俺はそんなに活躍しなくていいはずだ。
はずだよな?
心の中で俺の中にふと湧いて出た疑問。
だが今回は大変な思いはしたくない、そう決意をしつつ、そこで走る速度を徐々に弱めていく。
すぐそばに小川の水が流れて行く音が聞こえる。
穏やかな朝の森、といった雰囲気ではあるが……。
「そういえばこちらの方の水源である湖の方には、人はあまりこないのか? 先ほどから全然他の人と遭遇しないな……水源なのに」
俺は嫌な予感を覚えながら呟く。
案の定、あるものが道に敷かれていた。
その魔法を大まかに見て俺は、
「分かれ道の片方に、もう片方の道に行きたくなる魔法がかけられていて、偽装までされ普通では気づかないか。かなり高度な魔法だが、認識を操作する方向か。来た人間を“皆殺し”にする方法での証拠隠滅ではないのは……この世界がまだ平和な証だな」
俺はそう一人頷きながら、まだまだ俺のスローライフへの可能性が眠っていると嬉しくなる。
戦乱状態になれば……否が応でも戦わないといけなくなりそうだからだ。
前の世界のように。
そう思いながら更に進んでいくと、
「今度は木と木の間に細い侵入者探知用の糸か。触れると同時に魔力を少量吸い取って術者に伝えるタイプ……これは前の世界でも見たな。そう、前の世界でも……」
俺は小さく呻いて考える。
世界が違うといっても、同じような魔法は存在するだろう。
だが、“ここまで全く同じ”な魔法は、どうなのだろうか?
「まだあいつらが関係していると決まったわけではないし、考えすぎないようにしないとな。あいつらが来ているのなら、ここに来た時点で“殺す”と選択しそうだし。えっとここの糸はこの位置だから……」
そう呟きながら張り巡らせた糸に触れないように俺は、その隙間を通っていき更に進んで……やがて、湖にまでたどり着いたのだった。
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