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160部分:ラグナロクの光輝その十四
ラグナロクの光輝その十四
「そこに辿り着くのは十二月に」
「今は十月だ」
ヴァルターが言った。
「作戦開始には丁度いい時間だな」
「そうですね」
「しかし」
だがここでローエングリンが述べた。
「ムスペッルヘイムまでには敵の防衛ラインと艦隊が多数展開している。これを破りながらムスペッルヘイムまで向かう」
「それは決して容易なことではない。二ヶ月で辿り着けない可能性もあるな」
「いえ、その心配はありません」
彼はローエングリンとトリスタンにそう返した。
「何故だ?」
「確かに彼等はムスペッルヘイムまでに防衛ラインを敷き、艦隊を多数展開しております」
これはパルジファルも認識していた。
「ですが」
「ですが!?」
四人がそれに問う。
「今の我等の敵ではありません」
「敵ではない、か」
「まずはこちらの戦力です」
パルジファルは述べる。
「中立星系の取り組みとローエングリン司令の軍政の結果我等の力は飛躍的に上昇しました」
「まずはそれか」
「はい」
そのローエングリンの言葉に応える。
「そして我等七人、かって帝国の軍勢を退けてきた貴方達がおられます」
「そして卿もな」
タンホイザーが彼に言った。
「将も揃っている、と言いたいのだな」
「左様です」
「確かに一連の取り組みと軍政で我々の力は設立当初とは比べ物にならないまでになった」
ヴァルターが述べる。
「三十五個艦隊が六十を動員出来るまでにな」
「一人当たり七個艦隊を率い、残りの艦隊で防衛にあたる。それだけでもかなりのものだ」
トリスタンも言う。
「戦力的には申し分ない」
「しかし」
だが四人にはまだ不安があった。
「我等のことはわかった」
「だが敵はどうなのだ」
「帝国は」
四人の問いたいことは他でもなかった。敵に対するものであった。
「帝国ですか」
それにまずはトリスタンが応える。
「そうだ。クリングゾル=フォン=ニーベルングは得体の知れない出自から帝国軍宇宙軍総司令官、元帥にまでなった男だ。容易な相手ではない」
「その戦術は司令官時代で実証されている」
ローエングリンは艦隊司令として彼の下にいる立場であった。だからそれはわかっていた。
「卓越したものだ」
「そして戦略もな」
今度はヴァルターが言った。
「帝国がここまで伸張したのは彼の戦略故だ。並大抵のものではない」
「それだけの戦術、戦略の持ち主を相手にする。卿はそれについて危惧はないか」
タンホイザーが最後に問うた。四人はあえてパルジファルの識見を試す様に問うてきたのであった。
「彼は動きません」
「何故だ」
「それは彼がどうやらアルベリッヒ教団と深い関係にあるからです」
「アルベリッヒ教団」
「御存知の方もおられると思いますが」
「今ここにはいないが」
ヴァルターが話しはじめた。
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