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リング

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16部分:ファフナーの炎その十五


ファフナーの炎その十五

「また会う日までな」
 ヴァルターはモンサルヴァートの艦隊を見送っていた。その横にいた部下の一人が声をかけてきた。
「どうやら味方であったようですね」
「ああ、同志だ」
 彼は言った。
「同じものを求めている同志だ。そうした意味で戦友だな」
「そうでしたか」
 部下はそれを聞いて頬笑みを浮かべた。
「どうやら戦っているのは我々だけではないのですね」
「そうだな。それだけでもかなり心強い」
「はい」
「ニーベルングは敵もまた多い。それに付け込むこともできる」
「ですね」
「戦いはまだまだこれからということだ。では進撃を再開するぞ」
「はい」
「敵は今何処に展開しているか」
「ナイティングに集結しております」
「ナイティング。ナイティング星系のか」
 ナイティングとはナイティング星系の主要惑星である。星系の名と主要惑星の名が同じなのであった。
「はい。どうやら当初から帝国軍はあの星系に拠点を置いていたようです。そしてそこから艦隊及びファフナーを送り込んでいたそうです」
「ファフナーまで。ではあそこにファフナーがいるのか」
「はい。そして残る敵艦隊も」
「そうか。よくわかった」
 彼はそれを聞いて頷いた。
「ではそこで決戦となるな」
「ナイティングにおいて」
「うむ。まずは周辺の星系を制圧していく」
「はい」
「そしてそれにより力を蓄え艦隊を増設する。もう二個必要だ」
「二個艦隊ですか」
「そうだ。三個艦隊で敵艦隊を迎え撃ち」
「はい」
「残る二個艦隊でファフナーを倒す。よいな」
「わかりました。それでは」
「ただ、私はファフナーに向かう」
「司令自らですか」
「そうだ。あれを倒せるミョッルニルはこのザックスにしか装填されていない」
 彼は言った。
「だからだ。私自身でケリをつけたい。エヴァの為にもな」
「左様ですか」
「ところで一つ情報が入っております」
「何だ」
「ジークムント=フォン=ヴェルズングがメーロト=フォン=ヴェーゼンドルクの艦隊と遭遇、そしてこれを殲滅したそうです」
「ヴェーゼンドルクの艦隊をか」
「はい」 
 巨大な戦力を率い帝国に歯向かう者達を次々と滅ぼしていっていると言われていたその艦隊が殲滅されたというのである。これは大きな情報であった。
「そして彼はそのまま壊滅した艦隊の掃討に移っております」
「そうか。これは帝国にとって大きな痛手だな」
「おそらくは。ただヴェルズング提督はまだ軍事行動を続けているそうです」
「今は何処に向かっているか」
「ナイティングです」
 幕僚の一人が答えた。
「我等と同じ星系に向かっているそうです。ただあちらの艦隊は空母が主体だそうですが」
「そうだろうな」
 これにはヴァルターも頷くものがあった。ジークムントは元々エースパイロットとして名を馳せた男である。ローエングリンの下にいた時も独立心が強くしばしば上司であるローエングリンとも衝突を繰り返していたと言われている。その彼が指揮する艦隊ならば空母が多いのが道理だと容易に想像がついたのである。
「どうされますか」
「衝突する可能性はない。気にしなくていい」
 ヴァルターはそれを不問とした。
「今はそれよりも帝国軍を叩くことを考える。いいな」
「はっ」
「了解しました」
 部下達がそれに頷き敬礼をする。
「それでは準備が整い次第出撃しましょう」
「うむ。この際補給路には気をつけるようにな」
「補給路を」
「そして反乱にだ。今民衆の不満はそれ程ないがな。それでもだ」
 ヴァルターはここで執政官の顔に戻った。
「帝国軍は今劣勢にある。ならば工作やゲリラ戦に切り替えてこちらの戦力を削っていくことが考えられる」
「正攻法ではなく、ですか」
「そうだ。勝つ為には手段を選んではいられないだろう。ならばそうした戦術も考えられる」
「わかりました。それでは」
「フランケンに残していた艦隊を補給路の防衛に向けよ」
「はい」
「そして各星系では治安維持を強化せよ。よいな」
「わかりました。それでは」
「まずは後顧の憂いをなくしてから先に進みたい」
 彼は静かに言った。
 
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