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リング

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139部分:ヴァルハラの玉座その二十


ヴァルハラの玉座その二十

「何かな」
「その何かは」
「そこまではわからない」
 彼は述べた。
「だが。これでラインゴールドまでの道は開けた」
「はい」
「全軍集結し、補給を整え次第ラインゴールドへ向かうぞ」
「わかりました。それでは」
「うむ」
 ワルキューレはラインゴールドへ向かうことになった。そしてその手前まで順調に勢力を広げ、遂にはその前まで達した。
「帝国軍の動きは?」
 ワルキューレはもうラインゴールド手前のクラーゲンフルトに集結していた。そしてそこで最後の作戦会議を開いていた。
「敵艦隊の数は五個だな」
「はい」
 ポネルがそれに答える。
「数においても我等とほぼ互角です」
「そうか」
「ただ、ここで一つ問題があります」
「問題!?」
「ラインゴールドに向かっているのは我々だけではないということです」
「我々だけではない」
「はい。オフターディンゲン公爵の軍もラインゴールドへ向かっております」
「彼の軍もか」
「そういえば奇妙な噂を耳にしました」
「噂!?」
 フリードリヒの言葉に顔を向けた。
「公爵が我々を敵視しているとか」
「我々をか」
「はい。理由はどうも公爵の奥方にあるようなのです」
「公爵の」
 ジークフリートはそれを聞いて考え込んだ。
「確かヴェーヌスと言ったな」
「そうです。先のチューリンゲンの脱出劇で行方不明になられたとか」
「あの時にか」
「それで。どうやら我々がその奥方を拉致したと思い込んでいるようなのです」
「妙な話だな」
 ジークフリートはそれを聞いて述べた。
「何故私が」
 彼も女は嫌いではない。だがそれでもそうした略奪行為をしてまで手に入れることはない。彼が狙うのはあくまで帝国相手である。武器を持たない者に剣を向けることは決してないのだ。
「確かに妙な話ですが」
「何かの手違いでそういう話になったのだろうか」
「さて」
 それにはこの場にいる誰もが首を傾げさせた。
「何故でしょう」
「だが彼の奥方が今彼の下にいないのは確かなのだな」
「ええ、それは」
 クプファーが述べた。
「既に確かな情報を掴んでおります」
「そうか」
「奥方がいないのは事実です」
「では。何処にいるのだ」
「これもまた噂ですが」
 フリードリヒがまた述べた。
「帝国軍にいるとか」
「帝国軍にか!?」
「はい。あくまで噂ですが」
「ではクリングゾル=フォン=モンサルヴァートが」
「何の為かわかりませんが」
「また一つあの男に関する謎が出て来たか」
 そしてこう呟いた。
「何処までも謎の多い男だ」
「そのニーベルングがラインゴールドに来ているとの情報もあります」
「ここにか!?」
 ジークフリートの反応はこれまで以上であった。それがどれだけ重要な情報であるのかわかっているからだ。
「はい。彼の旗艦であるハーゲンが確認されております」
「ハーゲン、か」
 ジークフリートはその名を聞いて少し複雑な顔をした。先程自らが倒した帝国軍の提督と同じ名であったからだ。
「では間違いないか」
「どうされますか?」
「ニーベルングが来ているとなれば作戦が違ってくる」
 彼は言った。
 
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