英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇
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外伝~槍の聖女流特訓法~後篇(1章終了)
~トールズ第Ⅱ分校・グラウンド~
「まずは小手調べです!」
戦闘開始早々リアンヌ分校長は一瞬でリィン達の目の前に現れた!
「っ!ランディ、ランドロス教官、レン教官!手分けして防ぐぞ!」
「「おうっ!」」
「仕方ないわ……ねぇ!」
「ハァァァァァァァァ………!!」
「構えて――――九重陣!!セレーネちゃんは駆動時間が短くて足元から攻撃するアーツをお願い!」
「わかりましたわ!」
リアンヌ分校長が放った目にも止まらぬ速さの怒涛の連続突きをリィンとランディ、ランドロスとレンははそれぞれ協力して傷つきながらも防いでいた。一撃一撃が凄まじい威力を秘めていたリアンヌ分校長の怒涛の連続斬撃だったが、リィン達はトワが発動した敵の攻撃をある程度防ぐ防御結界を展開すると共に受けたダメージを大幅に回復させるブレイブオーダー――――九重陣によって傷つきながらもリアンヌ分校長の一軍も退かざるをえない怒涛の攻撃に耐えられていた。
「みんな、今助けるね!―――エナジーレイン!!」
そしてリアンヌ分校長の攻撃が終わるとトワが回復エネルギーを降り注がせる弾丸を空へと放つクラフト―――エナジーレインを放って傷ついたリィン達の傷を回復させ
「アークス駆動――――ブルーアセンション!!」
「!」
セレーネは足元から水のエネルギーを発生させるアーツを放ったが、足元からの攻撃に気づいたリアンヌ分校長は一端後ろに下がる事によってアーツを回避すると共にリィン達から距離を取った。
「リィン君とランドルフ教官は左右から遠距離攻撃の戦技を!セレーネちゃんは直線上に放つアーツを!レン教官は広範囲かつ高火力の魔術の準備をしながらランドロス教官と共に私の合図があるまで待機していてください!アークス駆動――――」
「了解しました!」
「アイ・マム!」
「わかりましたわ!アークス駆動――――」
「うふふ、了解♪……………」
「おう!クク、音に聞く紅き翼の”才媛”の指揮能力、お手並み拝見させてもらうぜ?」
瞬時に指示を出したトワの指示にリィン達と共に返事をしたランドロスは不敵な笑みを浮かべていた。
「―――緋空斬!!」
「ハァァァァァ………喰らえっ!!」
リアンヌ分校長を正面にして左右に散ったリィンは炎の斬撃波を、ランディはスタンハルバードで炎の竜を解き放つ戦技―――サラマンダーをリアンヌ分校長目がけて放ったが
「甘い!」
リアンヌ分校長が襲いかかる炎の斬撃波と竜を槍による薙ぎ払いで無効化した後リィン達にとっての司令塔であるトワをまず無効化しようとトワに視線を向けたその時
「水晶の刃よ、貫け――――クリスタルエッジ!!」
「!」
アーツの駆動を終えたセレーネによって放たれた水晶の刃達がリアンヌ分校長に襲い掛かり、水晶の刃達を回避する為にリアンヌ分校長は側面に跳躍して回避した。
「裁きの十字を―――――エクスクルセイド!―――今です、レン教官!」
「了解♪深淵に呑まれなさい――――ティルワンの死磔!!」
するとその時トワがリアンヌ分校長の足元から光の十字架を発生させるアーツを放ち、アーツを放った後のトワの合図によって魔術の詠唱を終えたレンもトワに続くように超広範囲を闇で包み込む魔術を発動した足元からと戦場全体からによる逃げ場のない攻撃にさすがのリアンヌ分校長もダメージは少なくないダメージは免れないと思われたが――――
「荒ぶる雷よ………戦場に来たれっ!!」
リアンヌ分校長は上空より雷を呼び寄せるクラフト――――アングリアハンマーによる雷で相殺して自分へのダメージを最小限にした。
「今です、ランドロス教官!」
「待ってたぜぇ!オラア――――天震撃!!」
「!!」
アーツと魔術が終わり、無事な様子のリアンヌ分校長が姿を現したその時トワの指示によって跳躍したランドロスがリアンヌ分校長目がけて大剣を落下スピードによる威力を増強させながら振り下ろし、ランドロスの奇襲に気づいたリアンヌ分校長は槍でランドロスの攻撃を防いだ。互いの武器がぶつかり合った瞬間、あまりの凄まじい衝撃によってつばぜり合いをしている二人の周囲に凄まじい衝撃波が発生した!
「ほう、今のを手加減した状態で真正面から受け止めるとはさすがは名高き”断罪の聖騎士”サマと言うべきか?」
「フフ、貴方こそかのメルキア中興の覇王たる”簒奪王”と並ぶユン・ガソルの”暴君”と言うべき実力でしょうね。」
「おいおい、今のはただの”小手調べ”だぜぇ?”本気”のオレサマやヴァイスハイトは”この程度”だと思ったら、大間違いだぁ!」
「ランドロス教官、一端下がってください!今です、リィン君、ランドルフ教官、レン教官!」
つばぜり合いをして互いの顔を見て口元に笑みを浮かべた二人だったがトワの声を合図にそれぞれの武器を収めて互いに距離を取った。
「二の型――――疾風!!」
「…………」
カマイタチを纏って電光石火の速さで強襲してきたリィンの斬撃をリアンヌ分校長は槍で受け流し
「そこだぁ!」
「せーの………………パワフルスイング!!」
「ハァァァァァ………滅!!」
「ぐっ!?」
「キャッ!?」
跳躍して上空から強烈な一撃を放つランディのクラフト―――大切斬と転移魔術で自身の背後から現れた後力を溜めた大鎌の一撃で襲い掛かって来たレンの奇襲に対してリアンヌ分校長は凄まじい闘気を纏った回転斬り――――アルティウムセイバーで防ぐと共に襲い掛かって来た二人にダメージを与えると共に吹き飛ばした。
「構えて―――九重陣!!アークス駆動――――空の祝福を―――フォルトゥナ!セレーネちゃん、今だよ!」
「はい!出でよ、銀の塔よ―――――ガリオンフォート!!」
するとその時トワが再びブレイブオーダーを発動してダメージ減少の結界を展開すると共にリアンヌ分校長の反撃を受けたランディとレンの傷を回復し、更に支援アーツを発動して自分とセレーネの魔法能力を上昇させてセレーネに指示をし、指示をされたセレーネがアーツを発動すると銀色の塔が戦場に現れた後銀色の塔から現れた砲台がリアンヌ分校長目がけて幻属性のレーザーを解き放った!
「貫け―――――シュトルムランツァー!!」
襲い掛かるレーザーに対してリアンヌ分校長は全身に闘気を纏った突撃攻撃―――シュトルムランツァーによる自身の闘気でレーザーを無効化しながらアーツを放ったセレーネ向けて突撃したが、転移魔術でセレーネの傍に現れたレンが再び転移魔術を発動してセレーネとトワと共に別の場所に転移した為、リアンヌ分校長の反撃は空振りに終わった。
「フフ、”予め全ての連携が防がれる事まで想定した上で彼女による転移魔術の救出まで連携前に指示を出していた”のでしょうね。彼女ならば、いずれはゼムリア―――いえ、ディル=リフィーナでも指折りの軍師になれるでしょうね。」
反撃が空振りになった理由をすぐに察したリアンヌ分校長は感心した様子でリィン達と共にいるトワを見つめ
「ま、まさか今の連携まで完全に防ぐなんて、流石は元結社最強の”鋼の聖女”にしてかの”獅子心帝”と並ぶ”槍の聖女”にして”メンフィルの守護神”の生まれ変わりというべきか………」
「分校長がシルフィア様の生まれ変わりであった事で、結果的にわたくし達の味方になってくれて本当によかったですわね………」
「ったく、あれで半分の力だなんて、絶対詐欺だろ!つーか、1年半前に戦った時よりも更に強くなっているんじゃねぇのか!?」
「うふふ、それは強くなっているに決まっているでしょ?分校長さんがメンフィルに寝返ってから、”シルフィアだった頃よりも更に強くなって”、今度こそパパ達を守る為にために第Ⅱ分校に来るまでパパ達――――メンフィルの様々な使い手との鍛錬を繰り返して続けていたもの。」
「ほう。という事は1年半前よりも更に強くなっているという事か。更に面白くなってきたじゃねぇか!だぁっはっはっはっ!」
「ううっ、今の連携なら最低でも一撃は与えられると思ったけど…………よし、切り換えなくちゃ!リィン君は―――――」
対するリィンとセレーネは冷や汗をかいて苦笑しながらリアンヌ分校長を見つめ、ランディは疲れた表情で溜息を吐いた後声を上げ、ランディの反応を面白がっているレンの説明を聞いたランドロスは不敵な笑みを浮かべた後豪快に笑い、トワは疲れた表情で肩を落としたがすぐに立ち直ってリィン達に新たなる指示を出してリアンヌ分校長との戦いを再開した。
「な、何、この戦い……!”特別演習”で教官達が”紅の戦鬼”達と戦った時とも比べ物にならないわよ!?」
「というか近代兵器でもあんな威力は出せないと思うのですが。」
「それに教官達が束になって連携して、何とか互角に持ち込んでいる状況でありながら、分校長はまだ半分の実力しか見せていないのか………分校長もそうだが、教官達も”本気”を出してぶつかり合えばどのような凄まじい戦いになるんだ……?」
リィン達の自分達の次元とは遥かに違う凄まじい戦いを見守っていた生徒達がそれぞれ驚いていたり信じられない表情をしている中驚きの声を上げたユウナの言葉に続くようにアルティナは疲れた表情で答え、クルトは真剣な表情で呟き
「…………ハッ、どいつもこいつも”英雄”と称えられているだけの力は持っているって事か。」
(ふふ、”騎神”や異種族の方々を呼ばず、更に自身も”本気”を出していない状況であれ程とは……………クスクス、ますます貴方が欲しくなってきましたわ。)
アッシュは鼻を鳴らした後目を細めてリィン達を見つめ、ミュゼは静かな笑みを浮かべた後意味ありげな笑みを浮かべてリィンを見つめた。そしてユウナ達が戦いを見守っているとリアンヌ分校長は突如戦闘の構えを解き、リアンヌ分校長の行動を不審に思ったリィン達もそれぞれリアンヌ分校長を警戒しながら武装を構えていた。
「――――ミハイル少佐。終了の合図を。制限時間の10分は経っているはずです。」
「え……………――――!!も、申し訳ございません……!制限時間を過ぎた為双方、模擬戦を終了せよ!」
リアンヌ分校長の指摘を聞いて一瞬呆けた後腕時計に視線を向けて10分経った事に気づいたミハイル少佐は慌てた様子で模擬戦の終了を告げた。
「ハア、ハア………何とか耐えられたか……!」
「ハア、ハア………というか、あれ程の激しい戦いをしながら制限時間まで測っていたなんて、信じられませんわ………」
「ぜえ、ぜえ……だがあの”化物”―――”鋼の聖女”ならそのくらいの事を平気でやってもおかしくないと思うぜ………」
「クク、今回の模擬戦のMVPは間違いなく紅き翼の才媛殿だな!」
「うふふ、そうね。本気を出していないとはいえ、伝説の”槍の聖女”相手にレン達に的確な指示を出して、互角の戦いまで持ち込んだのだから。」
「ハア、ハア………アハハ………さすがに褒めすぎですよ………それに、分校長には何度も私の予想を覆されて何度か危ない状況に陥りかけましたし……」
ミハイル少佐の終了の合図を聞き、ランドロス以外の教官陣は全員疲労した様子で地面に跪いている中、ランドロスとレンの称賛にトワは苦笑しながら答えた。
「フフ、見事です。―――では今私と戦った教官陣は一端下がり、次にミハイル少佐と生徒達全員が前に出てください。」
「”ミハイル少佐と生徒達全員”って事は………」
「まさか………分校長お一人で、連戦で僕達全員とミハイル教官をお相手するつもりなのですか……?」
リアンヌ分校長の指示に生徒達全員が驚いている中ある事を察したカイリは信じられない表情をし、スタークは困惑の表情でリアンヌ分校長に訊ねた。
「ええ。ただし、教官陣と違って貴方方には”ハンデ”と言った何らかの条件は付け加えませんので各自全身全霊を持って私に挑んでください。なお、私は”ハンデ”として先程の条件に加えて10分間、防御並びに回避に専念します。」
「じ、10分間防御と回避に専念するという事は………」
「いや~、分校長の優しさには驚くばかりだぜ。要は分校長はオレ達のサンドバッグになってくれるって事なんだろう?」
リアンヌ分校長の説明を聞いてある事を察したタチアナが信じられない表情をしている中アッシュは不敵な笑みを浮かべてリアンヌ分校長に確認した。
「ふふ、あくまで自発的に攻撃を仕掛けないだけですから、カウンター程度はさせてもらいます。なお、10分経てば私も自発的な攻撃を開始しますが…………先に宣言しておきます。”私が攻撃を開始すれば、10秒以内かつ本来の5分の1の力で貴方方全員を無力化します。”」
「じゅ、10秒以内で……しかも教官達と戦った時よりも更に力を落として僕達全員を無力化するって………!」
「……随分と舐められたものだね。」
「だけど、先程の教官達との戦いて見せた分校長の実力の一端を考えると、分校長なら本当にやりかねないかもしれないわ……」
リアンヌ分校長が口にしたとんでもない宣言にその場にいる多くの者達が血相を変えている中ウェインは信じられない表情をし、レオノーラとゼシカは厳しい表情でリアンヌ分校長を見つめ
「むっかー!確かにハンデ付きで教官達と互角以上に戦った分校長ならあたし達なんてあっという間に無力化できるでしょうけど、幾ら何でもあたし達生徒全員とミハイル教官を10秒以内で、しかも5分の1の力しか出していない状態で無力化なんてできませんよ!」
「…………そうですね。確かに分校長はとんでもない”化物”ですが、さすがに私達を過小評価し過ぎだと思われるのですが?」
「―――――――」
「ヴァンダール家の剣士の一人として……そして、第Ⅱ分校の生徒としても、貴女のその宣言、覆させてもらいます……!」
「はうう~……アガットさんやお姉ちゃん達もいないのにシルフィアさんに挑んで10秒も耐えられるかな……?ううん、わたしもあれから成長したって事をシルフィアさんにも知ってもらう為にもがんばらなくっちゃ!」
(フフ、さすがに皆さん、先程のサンドロッド卿の言葉には頭が来たみたいね。)
(それはそうでしょう……たった一人で、しかも手加減した状態で自分達全員を無力化すると宣言されたんだもの………)
怒り心頭の様子で声を上げてガンブレイカーを構えたユウナに続くようにアルティナはユウナの言葉に頷いた後クラウ=ソラスを自身の背後に現れさせ、クルトは決意の表情で双剣を構え、ユウナ達に続くように他の生徒達も戦意を高めて武装を構えている中唯一人リアンヌ分校長の化物じみた強さを正確に理解していたティータは疲れた表情で溜息を吐いたがすぐに気を取り直して自身の武装である導力砲を構え、生徒達の様子を見守っていたアルフィンの小声にエリゼは苦笑しながら答えた。
「ハーシェル教官、戦闘開始と終了の合図、そして時間の計測をお願いします。」
「は、はい……!えっと……双方、構え!」
リアンヌ分校長の指示に頷いたトワが開始前の言葉を口にするとユウナ達はそれぞれ戦闘の構えをした。
「――――戦闘中の指示は全て私が出す!決して私の指示無しに動くな!」
「イエス・サー!」
「―――始め!」
そしてミハイル少佐の指示に生徒達がそれぞれ頷いたその時、戦闘開始の号令がかかり、ユウナ達はリアンヌ分校長に攻撃を仕掛けた。奇襲を受けたとはいえ、結社の人形兵器を撃退する事ができた第Ⅱ分校の生徒達に加えて鉄道憲兵隊のエリートであるミハイル少佐の指示や援護に対してリアンヌ分校長は本気を出していない状況に加えて一人だった為、ダメージは受けるかと思われたが、リアンヌ分校長は生徒達の攻撃に加えて指示の最中に時折後方から銃やアーツによる攻撃を仕掛けてきたミハイル少佐の攻撃も全て回避するか、防ぎ続けていた。
「セイッ!」
「うわっ!?」
「っ!?」
「キャアッ!?いたた………ど、どうなっているのよ………!?さっきから絶え間なく、しかも必ず複数で攻撃を仕掛けているのに、全部避けられるか防がれてばっかりじゃない!大地の癒しよ――――大地の恵み!!」
リアンヌ分校長のカウンター攻撃によって他の生徒達と共にふっ飛ばされたユウナは信じられない表情でリアンヌ分校長を見つめた後治癒魔術を発動してリアンヌ分校長のカウンター攻撃によって受けたダメージを回復し
「というかアーツや魔術、クラウ=ソラスや導力銃のレーザー、更には導力砲の砲撃すらも戦技で全て無効化するとか、どう考えても物理法則を無視しているとしか思えないのですが。アークス駆動――――」
「しかもあれでまだ5分の1の実力しか出していないそうだからな………伝承通りまさに”至高の武”を示す強さだな、”槍の聖女”は………風の祝福を――――加速!!」
アルティナは疲れた表情で答えた後オーブメントを駆動させ、クルトは真剣な表情で絶え間なく繰り出される生徒達の攻撃を次々と回避するか防ぎ続けるリアンヌ分校長を見つめた後支援魔術を発動して自身の身体能力の強化をした。
「―――10分経過!」
するとその時時間を計測していたトワがその場にいる全員に聞こえるように大声で時間の経過を告げた。
「じゅ、10分が経過したという事は………」
「ぶ、分校長が攻勢に……!」
「落ち着け!まず接近戦用の武装を持つ者達は――――」
トワの宣言によってその場にいる全員が血相を変えている中サンディやシドニーが不安そうな表情をし、生徒達の動揺に気づいたミハイル少佐が生徒達を落ち着かせて新たな指示を出そうとしたが
「――――終わりです。」
「へ――――」
「え…………」
「な―――――」
リアンヌ分校長は一瞬で力を溜め終えた槍を一振りし、リアンヌ分校長の攻撃にユウナやアルティナ、クルトが呆けた声を出したその時リアンヌ分校長の槍の一振りを受けた生徒達全員とミハイル少佐は全員大ダメージを受けて吹き飛ばされ、地面に膝をついた!
「―――そこまで!勝者、リアンヌ分校長!」
「槍の一振りで起こした衝撃波によるい、”一撃必殺”………」
「えっと……わたくし達はその場にいませんでしたけど、ランディさんやロイドさん達も湿地帯の奥地で分校長によってあっという間に無力化されたとの事でしたけど……先程のような攻撃だったのですか?」
「いや………俺達の場合は一呼吸で数十放った超高速の突きだから、あいつらの方がまだマシだ………ったく、相変わらずの”化物”っぷりだぜ。」
「クク、しかし主任教官殿もそうだが、”リベールの異変”や”影の国”を経験していたラッセル家の才媛まで瞬殺するとはさすがは元結社最強の使い手にして、”メンフィルの守護神”の生まれ変わりじゃねえか!」
「ふふっ、幾ら他の生徒達と比べると実戦経験が豊富で、体力もついているティータでも相手が悪すぎたわ。まあ、”影の国”の時みたいに”オーバルギア”を使えばもうちょっと耐える事はできると思うわよ?」
トワが終了の合図をするとリアンヌ分校長の攻撃によって無力化されたユウナ達を見たリィンは口をパクパクさせ、表情を引き攣らせたセレーネに視線を向けられたランディは疲れた表情で答え、興味ありげな表情を浮かべているランドロスの言葉にレンは苦笑しながら答えた。
「は、はうう~……”オーバルギア”が使えればもうちょっと耐えられたかな……?」
「分校長―――”槍の聖女”が凄まじい強さである事はわかっていたつもりだったけど、予想―――いえ、予想以上の強さだったわ………”次元が違う”とはこの事を言うのでしょうね……」
「しかも”本気”を出していない状態であんな威力とか、分校長が”本気”を出せば一体どんな威力になるんだい………」
「ハハッ、まさに伝承通りの強さの一端を体験した気分だ……!」
戦闘不能になった生徒達がそれぞれうめき声を上げている中ティータとゼシカ、レオノーラは疲れた表情で呟き、フレディは感心した様子でリアンヌ分校長を見つめ
「クッ、5分の1の実力でこれ程の戦闘能力だと………?分校長を過小評価し過ぎていた情報局の連中には後で抗議と分校長の推定脅威度の変更を要請しておく必要がありそうだな………!―――ハーシェル教官、分校長が攻勢に出て、我々を何秒で無力化した!?」
ミハイル少佐は唇を噛みしめて情報局に対する恨み言を呟いた後ある事を思い出してトワに訊ねた。
「え、えっと………8秒05です………」
「じゅ、10秒どころか、たった8秒であたし達全員を無力化って……!」
「ク………ッ!」
「やはりクラウ=ソラスの障壁でも防げませんでしたか………宿舎に戻ったらセティさん達にクラウ=ソラスの障壁の強化を依頼する手紙を書いた方が良さそうですね………」
「――――――」
トワの答えにその場にいる全員が驚いている中ユウナは信じられない表情をし、クルトは悔しさによって唇を噛みしめ、静かな表情で呟いたアルティナの意見にクラウ=ソラスは機械音を出して返事をした。
「―――お疲れ様でした。では今戦った方達は下がり、エリゼとアルフィン殿は前に出てください。今日最後の模擬戦を始めます。」
「―――かしこまりました。」
「―――今日もお願いしますわ。」
(今日”も”………?)
「おい、リィン!幾ら何でも手加減した状態とはいえ、”鋼の聖女”相手にたった二人で挑むのはヤベェんじゃねえのか!?止めた方がいいんじゃねぇのか!?」
「そ、そうですわよね……?手加減した状態とはいえ分校長に挑むのでしたら、最低でも4人は必要と思いますし……」
リアンヌ分校長に名指しされた二人がそれぞれ会釈をしている中アルフィンが呟いた言葉が気になって考え込んでいるリィンにランディは焦った様子で訊ね、ランディの意見にセレーネは戸惑いの表情で頷いた。
「心配は無用よ、セレーネ。”私達の場合は慣れている”もの。」
「な、”慣れている”って、一体何に”慣れている”んですか……?」
(まさか………)
セレーネの心配に対して答えたエリゼの答えが気になったユウナが戸惑っている中ある事を察したクルトは信じられない表情を浮かべ
「ふふっ、それについてはすぐにわかりますわ。―――リィンさん、最後の模擬戦の合図はリィンさんにお願いしていいですか?」
「あ、ああ。分校長、制限時間はどのくらいで二人の勝利条件はどういう条件ですか?」
アルフィンに促されたリィンは頷いた後リアンヌ分校長に訊ねた。
「制限時間は10分で、二人の勝利条件は制限時間が過ぎるまで先程の模擬戦同様力を5分の1に抑えた私との戦いで、どちらとも戦闘不能にならずに耐える事です。」
「な――――………わかりました。――――双方、構え。」
リアンヌ分校長の答えを聞いたその場にいる多くの者達が驚いている中一瞬絶句したリィンだったがすぐに気を取り直して開始前の言葉を口にした。
「――――始め!」
そしてリィンの開始の合図によってエリゼとアルフィンはリアンヌ分校長との模擬戦を始めた。5分の1の力しか出していないとはいえ、生徒達を一瞬で無力化したリアンヌ分校長の猛攻をたった二人で耐える事はできないとその場にいる多くの者達が予想していたが、その予想は大きく外れる事になった。
「ハァァァァァ………ッ!」
「聖なる守護を――――聖護の結界!!」
リアンヌ分校長による超高速の連続突きに対してアルフィンは神聖魔術による光の結界を展開して防ごうとしたが、結界はリアンヌ分校長の攻撃によって罅が入り始めた。
「貫け―――レイ=ルーン!!」
「!」
リアンヌ分校長の攻撃によってアルフィンが展開した結界が破壊されようとしたその時、エリゼは片手から収束した魔力のレーザーを解き放ち、襲い掛かる魔力レーザーを見たリアンヌ分校長は回避する為に攻撃を中断して側面に跳躍し
「疾風の爪にて引き裂かん―――ガスティーネイル!!」
「セイッ!ハアッ!」
更にアルフィンが発動したアルフィン専用の魔導杖による特殊魔法の一つであり、敵の空間の周囲から発生させた風の爪による連続攻撃に対してリアンヌ分校長は槍を振るって襲い掛かる爪を斬り裂いた。
「貫け―――――シュトルムランツァー!!」
「!」
「えいっ!」
二人の攻撃を全て防いだリアンヌ分校長は反撃にクラフト―――シュトルムランツァーで二人に襲い掛かったが、エリゼは大きく側面に跳躍し、アルフィンは転移魔術を即座に発動してリアンヌ分校長の反撃を回避した。
「……………」
「う、嘘………あたし達みたいに瞬殺されるどころか、たった二人で耐えているじゃない……!」
「エリゼ様はともかく、アルフィン様まであのような戦闘能力があった上転移魔術まで習得していたとは………シュバルツァー家に来てからのアルフィン様は時折ベルフェゴール様達によって鍛えられて様々な魔術を習得していた事は知っていましたが、まさか転移魔術まで習得した上レン教官のように転移魔術を戦闘中でも使いこなせるほどの使い手になっていたとは……」
エリゼ達の戦いをその場にいる全員が驚きや信じられない表情で見守っている中クルトは驚きのあまり絶句した様子で戦いを見守り、ユウナとアルティナはそれぞれ驚きの表情で呟いた。その後模擬戦は膠着し………制限時間を過ぎた事を確認したリィンの終了の合図によってエリゼ達は模擬戦を終了した。
「ハア、ハア………何とか耐えられたわね………」
「ハア……ハア………ふふっ、記録更新、ですわね………」
戦闘が終了すると安堵や疲労によってエリゼとアルフィンはそれぞれ地面に膝をついて息を切らせ
「お、驚きましたわね………手加減していたとはいえ、たった二人で分校長の攻撃に10分も耐えたなんて……」
「うふふ、しかもアルフィン夫人はレンやエヴリーヌお姉様みたいに転移魔術を戦闘に組み込める程魔術師として成長していたとはレンも予想外よ。」
「クク、ひょっとしたら1年半前の支援課(お前達)よりも実力はあるんじゃねぇのか?」
「いや、さすがにそれは過剰評価………とも言えなくはないか……?手加減した状態とはいえ、あの”鋼の聖女”相手に10分も耐えた所か反撃までしたしな………おい、リィン。このままエリゼちゃん達が強くなり続けたら、お前、将来絶対嫁達に尻にしかれる事になるんじゃねぇか?」
「ハ、ハハ…………」
「アハハ………そ、それよりも、さっき皇女殿下は”今日もお願いしますわ”と仰っていましたけど、もしかしてお二人は既に分校長との模擬戦を何度も経験しているのですか?」
二人の様子をセレーネは目を丸くし、レンは感心した様子で見守り、口元に笑みを浮かべたランドロスの指摘に苦笑したランディだったがすぐに表情を引き攣らせ、そしてリィンに同情し、同情されたリィンが乾いた声で笑っている様子を苦笑しながら見守っていたトワはアルフィンにある事を訊ねた。
「ええ。皆さんが学院に通い、宿舎に戻ってくるまでの間はわたくしとエリゼは鍛錬する時間を作れるくらいの余裕はありましたから、その時にサンドロッド卿にお付き合いしてもらったのです。1年半前の内戦でわたくしは嫌と言うほど自分の無力さを思い知りましたから………また1年半前のような出来事が起こった時自分の身は自分で守れる為にサンドロッド卿に鍛えて頂いたのですわ。お陰様で、猟兵のような裏の使い手達に襲われてもある程度自衛できるくらいまでは実力をつけられたと思っていますわ。」
「分校長相手に10分も耐えた時点で、”ある程度自衛できる”というレベルをとっくに超えていると思うのですが。」
「ハハ……今の皇女殿下を見れば、父上達もそうだが、皇帝陛下達もきっと驚かれるだろうな……」
アルフィンの答えにその場にいる多くの者達が冷や汗をかいている中アルティナはジト目で指摘し、クルトは苦笑していた。
「さて………――――今の二人の戦いを見て理解できたはずです。雛鳥の貴方方も1年半前までは対人戦どころか魔獣との戦いも経験した事がなかったアルフィン殿が先程見せた強さのように成長できる可能性がある事に。入学式の時の言葉を今この場でもう一度だけ繰り返しましょう。――――自らを高める覚悟なき者は今、この場で去りなさい。先日の”特別演習”の時のように教練中に気を緩ませ、冥府へと旅立ちたくなければ、今すぐこの場から去るのが貴方達の為です。」
リアンヌ分校長の言葉を聞いた生徒達全員はそれぞれ血相を変えて黙り込んだ後それぞれ決意の表情でリアンヌ分校長を見つめ
「フフ、その意気です。―――雛鳥である生徒達、そして雛鳥の見本となる為に自らを高め続ける教官陣の今後の成長を期待しています。」
リアンヌ分校長は静かな笑みを浮かべて答えた。
こうして………第Ⅱ分校は教官陣、生徒達の双方が強くなるために翌日から毎日授業が終わった後の”補習”を開始した―――――
後書き
ようやく1章を終わって、書くのを楽しみにしていた2章に移れる……とは言っても3章も書くのを楽しみにしているのですが(ぇ)ちなみに暁ですがまさかの10連でキャプテンリーシャが来てくれました!まあ、チアガールクロエは底引きでゲットしましたから、結局溜めていたBCはかなり消耗してしまいましたが(遠い目)
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