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大阪心霊巡り

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第三章

「木の陰に隠れてね」
「落ち武者が出て来たら見ましょう」
「そうよね、刀持てるっていうし」
「それならね」
「隠れた方がいいわね」
「若し見付かったら切られかねないから」 
 その刀でというのだ、陽菜の話では落ち武者は刀を持っているというのでこのことを警戒しているのだ。
「それじゃあね」
「見付からない様に物陰に隠れて」
「そうして出て来るの待ちましょう」
 友人達は口々に言い陽菜も頷いた、そしてだった。
 陽菜達は桜の木の陰に隠れてそうして落ち武者の亡霊が出て来るのを待った。十二時になりそれから十五分程過ぎたが。
 落ち武者の亡霊は出て来なかった、それで友人達は桜の木の陰から出て来るという場所を覗き込みながら陽菜に言った。
「出て来ないみたいよ」
「どうもね」
「帰った方がいいわよ」
「それじゃあね」
「そうね、こうしたこともね」
 心霊スポットを巡っていればとだ、陽菜はその友人達に答えた。
「結構どころかね」
「多いというか殆どでしょ」
「お目当ての幽霊が出ないとか」
「そうしたことは」
「そうなのよ」
 実際にというのだ。
「これがね。だからね」
「出て来ないなら仕方ない」
「それじゃあね」
「もう帰りましょう」
「そうしましょう」
「ええ、皆でね」
 陽菜も言ってだ、そしてだった。
 一行は自転車を置いた場所に向かって自転車に乗ってだった、それぞれの家に帰った。だがその直後だった。
 陽菜達がさっきまでいたその場所に落ち武者の幽霊が出た。その幽霊は観られるのをわかっていて出て来るものかと呟いた。
 陽菜達は大阪城の落ち武者の幽霊には出会えなかった、だが陽菜はそれでめげなかった。その数日後だった。
 陽菜は友人達に今度はこう言った。
「何でも淀川に出るらしいのよ」
「あそこにもなの」
「出るの」
「女の人の幽霊がね」
 今度はそうした幽霊だというのだ。
「出て来るらしいから」
「今度は淀川に行くの」
「そうするの」
「ええ、そうしてみるわ」
 こう言うのだった、大阪城の幽霊は観ることが出来なかったが陽菜の心霊スポット巡りは終わらなかった。彼女はその趣味を心から楽しんでいた。例えお目当ての幽霊に出会えずとも。


大阪心霊巡り   完


                 2018・4・23 
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