異世界にやってきた俺は、チート能力を駆使して全力でスローライフを楽しむ!
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女神さまのお願い
光の魔法陣を踏み込んでしまった俺。
逃げきれなかった……そう悲しい気持ちになっているとそこで、周りの景色が変わる。
そこは宇宙空間のような星空に満たされた場所だった。
ここはどこだ?
俺が警戒しながら周りを見つつ、この世界が一体何なのかを確認しようとしていると、
「ここは私たち女神が暮らす、個人的な空間です」
そういって現れたのは、長い銀髪に青い瞳の、白い服を着た女だった。
強い魔力を感じると俺は思うと同時に、
「女神?」
「はい。あなたをこの世界に呼び寄せた女神です。名前はプロセルピナと申します。お見知りおきを」
そう、胸のあたりをさり気なく強調しながら女神が俺に言う。
そのあたりはどうでもいいと俺は思いながら、
「今すぐ俺をもとの世界に返してください」
「それはダメよ。私たちの世界で、やって欲しいことがあるもの。……ハデスちゃんが何をしようとしているのか分からないけれど、私たちの世界を震撼させる行為はダメよ。もっとも、彼女が原因ではないかもしれないけれど」
このプロセルピナという女神が言うには、どうやらまた世界の危機を救えというらしい。
そう聞いた俺の脳裏に一月前の異世界での出来事がよみがえる。
時間軸の関係上、異世界の数年以上は俺の世界の時間は一秒程度でしかないらしい。
その関係で日常生活で大変なことにはならなかったのだが……。
とはいえ、あの異世界での大変な戦闘を思い出して俺は、
「絶対に嫌です。俺はゆっくり元の世界で平穏を楽しみたい」
「残念ね。これは決定事項なの」
「……」
「私を殺そうとしても無駄よ? 貴方にそれだけの力があるのは、お友達のツクヨミちゃんから聞いているけれどね」
「……別に殺しはしませんよ。逃げるだけです」
そう俺が言い返すと、女神様は不思議そうに目を瞬かせてから楽しそうに笑い、
「倫理観がしっかりしているわね。それとも貴方の能力のせいかしら? でもね……実は逃げられないように、ここに召喚した時複雑な魔法をつけておいたの」
「なんだって?」
「それを解くヒントは私の世界にあるわ。頑張って探してね」
「なんてことだ……こうなったら極力戦闘に従事しない方向で、スローラウフを頑張るしかない」
「ふふ、それでね、この世界での貴方のチート能力は……空間創作(クリエイティブ・ワールド)というものらしいわね」
そこで俺は、女神様だから見えるのだろう、この世界で発言してしまうチート能力を告げられる。
そこで女神様が、
「魔法を作れてしまう能力らしいわよ。……微妙な顔をしているわね。意味は分かるけれど、使い勝手のいい能力なのは確かよ? チート能力の使い方はすでに分かっていると思うから、後は送り込むだけ」
「……わかりました。今、元の世界に戻ろうとしてもうまくいかないので……諦めて送られた世界でスローライフでもしますよ」
そう俺が、暗に戦わないぞと言い返すと女神が愚か者を見るような目で、嗤った。
「かまわないわ。他にも何人も呼んでいるしね。でも……」
「でも?」
「そのチート能力をもつ貴方を、この世界の人間が逃がすと思っているのですか?」
そう笑った女神様の顔が、俺には悪魔の嘲笑に見えた。そして、
「まあ、何か困ったことがあったら呼んでね。時々遊びに行って様子を見るから」
「いえ、来なくていいです。というか、女神様本人がそう簡単に行き来できるなら自分でやってください」
「そうしたいのは山々だけれど、今回の件が私が触っても大丈夫なのか分からないのよ」
「……ひょっとして調査をしてほしいというのもあるのですか?」
「そうね。それもあるわ。でも……私としては、ツクヨミちゃんが自慢していた“英雄”の実力をこの目で見たいというのもあるわ」
「……」
「というわけでよろしく~」
そういって女神さまが俺の近くにまで来て、額にキスをする。
同時に再び光に包まれて俺は、どこかに転送される。
こ、こんなキス一つで誤魔化されると思うなよ、で、でも女神さまは美人だったが……などとそう俺は童貞の宿命たる、女耐性の低さを痛感しながら思ったのだった。
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