駄目なアクセサリー
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第三章
「こちらの商品は安くて色も」
「私の好きな赤ですね」
「はい、それにデザイナーも」
アクセサリーのそれもというのだ。
「いつもお客様がいいと言われている」
「はい、これもです」
「デザイン自体はですか」
「いいと思います」
それはというのだ。
「どれも。ですが」
「それでもですか」
「はい、それを買うのは」
どうしてもとだ、美優は言葉だけでなく顔でも言った。
「私はです」
「ないですか」
「はい」
そうだとだ、美優はまた答えた。
「申し訳ないですが」
「いえ、それはいいですが」
「それでもですか」
「お客様はこちらは買われると思っていました」
「値段も色もデザインもですね」
「まさにと思ったのですが」
「その生きものでなかったら」
美優は店員に難しい顔で答えた。
「私も買っていました」
「あの、ひょっとして」
「ムカデ、ですから」
顔を顰めさせてだ、美優は店員に答えた。
「私ムカデは駄目なんです」
「そうですか」
「はい、ムカデ大嫌いなんです」
このことを言うのだった。
「子供の頃から」
「それで、ですか」
「そのアクセサリーだけは」
どうしてもというのだ。
「無理です」
「そうですか、ムカデはですか」
「私駄目なんです」
「わかりました、それではこれからも」
「ムカデをモチーフとしたアクセサリーはですね」
「お勧めしません」
店員は美優に真面目な顔で答えた。
「そうさせて頂きます」
「それでお願いします」
美優も正直に答えた、そしてだった。
美優はムカデのアクセサリーだけは買わなかった、それで新たに買ったスカラベのアクセサリー等を家で観て言うのだった。
「スカラベもいいわね」
「今度はエジプトね」
「クレオパトラとか」
「そのアクセサリーにしたの」
「そうなの、これだって思って買ったけれど」
美優は妹達に微笑んで応えた。
「やっぱりいいわね、じゃあお父さんとお母さんが帰ってきたら」
「アメリカからね」
「二人共アメリカでお仕事してるけれど」
「こっちに帰ってきたら」
「プレゼントしようかしら」
見ればスカラベのアクセサリーは三つある、それで言うのだった。
「一個ずつね」
「あっ、いいわね」
「スカラベのアクセサリー三つあるしね」
「それならね」
妹達も美優の今の言葉に頷いて賛成の意を示した。
「お父さんとお母さんに一個ずつね」
「プレゼントすればいいわ」
「そして最後の一個はお姉ちゃんが持つ」
「そうすればいいわ」
「それで私達もね」
「お父さんとお母さんに何かプレゼントするわ」
妹達もこう言うのだった、美優は妹達と和気藹々と話していた。そして自分の胸にある赤い馬のブローチを見てこうも言った。
「やっぱり赤いアクセサリーはね」
「お姉ちゃんにとってはラッキーアイテムね」
「幸運を招くものね」
「そうなのね」
「ええ、そう思うわ」
妹達ににこりと答える、そうしてスカラベのアクセサリーのうち二つを収めた。両親が帰ってきた時にプレゼントする為に。
駄目なアクセサリー 完
2018・4・22
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