孔雀王D×D
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12 裏荒野での惨劇
かつて八葉の老師達が孔雀の姉・朋子を要し、この世を地獄に変えようとしたアルマゲドン戦争が起きた。が、その前には、序章というべき事件が、孔雀を中心として巻き起こった。
六道衆と言われた闇の密法者集団は、阿修羅を復活させ、黄幡星まで呼び寄せた。が、ここで裏高野はしくじりを犯した。
それは、誕生日が同じ時に生まれた子供たちの大量虐殺だった。
殺された子供達は、黄幡星の子、闇の子と呼ばれ、世界を滅ぼす存在とも呼ばれていた。
当時の裏高野座主であった薬師大医王は、密かにその子供たちを裏高野に集め、処分することを決定し、実行にうつした。
それが、過ちの原因だった。が、それは仕方ないことだったのかもしれない。
なぜなら、薬師如来は、病気を治す神と言われている。
そう考えると、闇の子と言われる黄幡星の子たちは、この世界の病とこじつけることができる。
薬師大医王は、その考えよりこの世の病魔である子の達を切り捨てるといった行動をとることは、たとえこじつけでも納得させられる。
が、それは蛮行であり、それに気づいた夜叉王が裏高野に反旗を翻し、倶摩羅と呼ばれた少年と脱走。が、その途中で夜叉王は、倶摩羅とともに暗殺されてしまった。
それを行ったのが、孔雀の師匠である慈空だった。
「孔雀、王仁丸、阿修羅、久しぶりね」
薬師大医王一派が潜む高野山奥の院を結界で封じ込めていた五輪坊の長となった嵐は孔雀一行が到着するや否や挨拶を交わした。
「嵐おねえちゃん、久しぶり」
阿修羅が嵐に抱き着いて再会を喜んだ。
「こ、これ、阿修羅。抱き着くな、結界が乱れる」
嵐は、印を結び気を集中していながらも阿修羅に抱き着かれたことにも嬉しさを感じていた。
「生きてやがったのか、嵐。五輪坊の長になったと聞いたが、随分、出世したじゃねえか」
王仁丸もまた、皮肉めいた台詞を吐いたが、再会を喜んでいるようだった。
「ふん、相変わらずだな、王仁丸」
嵐はそんな王仁丸の言葉に顔を赤らめて答えた。
「う、うん。再会を喜ぶのは、その辺にしろ」
日光は、咳払いを一つして言った。
「ところで、嵐。やはり、父上達は、奥の院に?」
月読が、日光の後に続いて嵐に聴いた。
「はい。辛うじて結界で封じていますが、どこまでもつか。それに・・・・」
嵐は言いよどみ、顔を曇らせた。
「よい。報告しろ、嵐」
日光は、いいよどむ嵐に向かって報告を求めた。
「は、はい。なんとか生き延びてきた仲間の報告では、中はひどい有様だと聞きました」
嵐は、顔をしかめて日光に報告した。
「どんな様子なの?」
月読には、心当たりがあった。が、あえて嵐に問いかけた。
「そ、それが・・・・・・・」
嵐は月読の心痛を察してか答えに詰まった。
「いいから、報告しろ」
日光は、ちらりと月読を見つめたが、強い口調で嵐に答えを求めた。が、嵐は月読への想いが強く答えることが出来ないでいた。
「よいのですよ、嵐」
月読は優しく嵐に微笑んで日光に顔を向けた。
「兄上、実は、女人堂の僧たちが数名行方不明になっているのです」
月読は、きりっとした目つきで日光に言った。
「な、なんだと!!そんな報告は受けておらぬぞ、月読」
日光は、月読を怒鳴りつけた。
「申し訳ありません」
月読の代わりに嵐が、誤った。
「職務怠慢だぞ、月読」
日光は、月読を睨み付けた。
「まぁまぁ、日光さんよ。月読の嬢ちゃんを叱る前に、まずは嵐の報告を聞こうじゃねぇか」
しょぼくれた嵐の様子をみかねた王仁丸が、救いの手を差し伸べた。
「そうだよ、日光様。今は内輪もめしている場合じゃないよ」
続いて、阿修羅が、言った。
「そ、そうだな。嵐、報告しろ」
日光は、一つ咳払いをして、嵐に求めた。
「はい」
嵐は、返事をすると同時に月読を見つめた。
月読は、その視線を受け止め、軽く頷いた。
「実は、女人堂の修行者が、数人行方不明になったことから、月詠様は、独自に調査を開始しておられたのです」
嵐はゆっくりとした口調で報告を始めた。
「私をはじめ、私の隊である五輪坊の風の軍団を動かし、隠密行動部隊の蓮花の今協力を得、月読様の命を受けて、動いていたのです」
孔雀一行は、嵐の報告を粛々と聞いていた。
「そして、判明したことが、前座主の薬師大医王様が、いまだ即身仏としていないこと。それと、医王様を再び座主にとする反日光様の一派が、再び黄幡星を復活させることでした」
誰もが予測していたことだったが、本当のことだったは、思いもよらず、皆が嵐の報告に固唾をのんだ。
「だけどよ、そんなことをして何の意味があるんだ?」
王仁丸が素直な疑問を投げかけた。
「そ、それは・・・・・・・」
王仁丸の問いに嵐は言葉に詰まった。
「それは、父の。いや、旧座主の歪んだ正義感からなのです」
月読は、顔を伏せて答えた。
「え?どういうことなのです?」
孔雀が、今度は月読に問いかけた。
「孔雀殿、前倶摩羅戦争は当事者であったあなた方も知っていますね?」
月読は、見えない目を孔雀に向けた。
倶摩羅戦争とは、前記したとおりなので、割愛する。が、月読は、孔雀にその旨を説明した。
「ですが、何故また、倶摩羅戦争を起こそうとしているのか、はっきりとわかりませんが」
孔雀は、腕を組み、合点がいかないといった風に言った。
「父は、また、黄幡星の子の大量虐殺をしようとしているのです」
月読は、目を大きく広げ、孔雀をはじめ全員を見つめた。
「な、なんだって!!」
「そんな馬鹿な!!」
各々は驚愕し、大声を出した。
「月読、それは本当のことなのか?」
全員が膠着してる中、日光は月読に問いかけた。
「そのことは、私が説明いたします」
嵐は月読をちらっとみると、月読は軽く頷いた。
「月読様は、みんなが知っている通り星見が出来ます。
星見とは、星の動きによって将来の起こりうる事象を予言できることです。
たとえは、星海様は、裏高野一の星見僧です」
嵐は、その場にいるみんなの顔を見渡していった。
「それは知っている。星海殿は、早急に黄幡星を察知し、俺や慈空に報告に来たからな」
「あぁ。俺はじじぃに唆されて、この依頼を引き受けちまったからな。まったく、再び黄幡星に関わるとは、憑いてねぇぜ」
日光に続いて王仁丸も言った。
「も、もしや、黄幡星の子を皆殺しにすることが、歪んだ正義ということですか?」
孔雀は、怒りに声を震わせた。
「その通りです、孔雀殿。私の父の所業をお詫びするしかない」
月読は、目を伏せ孔雀に心の底から謝った。
「お姉ちゃんが、悪いんじゃないよ。じじぃが、悪いんだよ」
阿修羅は、月読の瞳から涙がこぼれそうなのを見て、月読の背中に手を置いて慰めた。
「ありがとう、阿修羅ちゃん」
月読は、阿修羅に向かって微笑んだ。
「だけどよ。じじぃのその策略と女僧の失踪事件も関係しているのか?」
王仁丸は、嵐に向かって問いかけた。
「あぁ、蓮華の報告では、行方不明になった女僧達は、凌辱され惨殺されていたとのことだ」
嵐は、あまりにも凄惨な光景を想像して吐き気を覚えた。
「それで、蓮華は、どうだったんだ?」
孔雀は、続けて問いかけた。
「なんとか、命からがら逃げ延びたが、多くの部下を失い、自分自身も重傷を負っていた」
嵐は孔雀を見つめて答えた。
「許さん」
孔雀は、怒りに燃え、歩き出した。そして、阿修羅と王仁丸はうなずき合い後に続いた。
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