英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇
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外伝~白き魔女の新たなる軌跡~
~???~
ゼムリア大陸とも、ディル=リフィーナとも異なる世界の城らしき屋上で様々な立場の戦士たちが黒く染まりつつある空が、白き魔女の魂によって浄化される様子を見守っていた。
「なぜ……なぜ、そんなに優しくなれる………肉体を捧げ……そしてまた、魂を捧げ………この世界がお前の為に何をしてくれたというのだ……」
「…………」
「私、わかるような気がする。」
白き魔女の魂が消える様子を見守っていた壮年の男性は悲痛そうな表情を浮かべている中少年は静かな表情で見守り、少女は男性の疑問を聞くと静かな表情で呟いた。
「………?」
「きっと、この世界とか異界とか……分けて考えちゃいけないのよ。」
「どちらかが助かればいい……そんな解決の仕方なんて、きっと……ウソなんだ。」
「この最後のチャンスをゲルドは信じていたのね。」
少年と少女がそれぞれの推測を答えたその時、白き魔女の魂は黒き空と共に消え、青空が広がり、少年達はそれぞれの未来に向けて歩み始めた。
――――悲しい運命を受け入れてもなお、優しくあり続けた貴女だからこそ、絶対に幸せになるべきだよ………
少年達が去った屋上に少女の声が突然響いたが、その場には誰もいなかった為誰も少女の声に気づかなかった。
七耀歴1206年、4月24日、午後16:20―――
並行世界の新Ⅶ組がヴァイス達との面会を始めたその頃、リーヴスの第Ⅱ分校専用の宿舎でも異変が起ころうとしていた。
~リーヴス・第Ⅱ分校専用宿舎~
「さてと………そろそろ、夕食の下ごしらえを始めましょうか、アルフィン。」
「そうね。約束通り皆さん全員無事に戻ってきてくれたし、初めての”演習”を終えたご褒美代わりに今夜は御馳走を作ってあげないとね。――――あ、リィンさんだけは特別に精力がたくさんつく食事の方がいいかしら?帰って来たリィンさんにわたくしもそうだけど、貴女も会えなかった分リィンさんに愛されたいでしょうし♪」
「アルフィン、貴女ねぇ………そんなあからさまな事をしたら、さすがに鈍感な兄様でも気づく上、引くと思うわよ?」
アルフィンと共に宿舎に戻って来たエリゼはアルフィンの提案に呆れた表情で指摘したその時
「―――二人とも、下がって!」
「凄まじい時空間の”歪み”を感じます。もうすぐ”何か”が現れますので、念の為に戦闘準備を。」
アルフィンの身体からベルフェゴールが、エリゼの身体からリザイラが現れた後二人に警告すると同時に結界を展開し
「え………」
「!」
二人の警告にアルフィンは呆け、エリゼが血相を変えてそれぞれ武装を構えたその時、突如閃光が走った!
「キャアッ!?」
「ッ!?」
突然の出来事にアルフィンが悲鳴を上げ、エリゼが驚いた後閃光が消え、閃光が消えた場所に旅用と思われる外套つきのローブを身に纏い、まるで雪のような白い髪を腰まで靡かせ、整った容姿を持つエリゼ達と同年代と思われる娘が倒れており、娘の傍には娘の所有物と思われる杖が落ちていた。
「この方は一体………?」
「状況を考えると”彼女” が転移魔術の類でこの場に転移してきたのだと思うのだけど……」
突然現れた娘にアルフィンは戸惑い、エリゼは真剣な表情で推測し
「―――いえ、意識を失っている様子からすると先程の転移術は彼女の意志ではなく、”何者かの意志”によるものでしょう。」
「問題はその”何者か”が何を考えてこの娘をここに転移させた目的だけど………あら?その娘の傍に落ちているのは……」
エリゼの推測をリザイラが訂正し、ベルフェゴールが娘が現れた事について考え込んだその時、ベルフェゴールがは娘の傍に落ちている杖に気づいた。
「”杖”……という事はまさか目の前の女性はエマさんと同じ”魔女”なのかしら……?」
「………とにかく、このまま放っておく事はできないから………――――ベルフェゴール様、お手数ですがこちらの方を私の部屋のベッドまで運んでください。リザイラ様はリアンヌ様にこちらの方についての報告をお願いします。」
「了解。」
「わかりました。」
娘の正体についてアルフィンが考え込んでいる中すぐに気を取り直したエリゼはベルフェゴールとリザイラに指示をし、指示をされた二人はそれぞれの行動を開始した。
~20分後・エリゼの私室~
「……ん……」
「あ……」
「――――どうやら目覚めるようですね。」
20分後ベルフェゴールによってエリゼの私室のベッドに運ばれた娘が目を覚ます様子を見たアルフィンが呆け、リザイラからの連絡を受けて宿舎に戻って来たリアンヌ分校長は静かな表情で呟いた。
「…………?え………どうして、私が生き返って……?それに貴方達やここは一体………?」
目が覚めた娘は起き上がると困惑の表情を浮かべたがエリゼ達に気づくと不思議そうな表情で首を傾げた。
「ここはエレボニア帝国の帝都近郊の町――――リーヴスにあるトールズ第Ⅱ分校の専用宿舎の私―――――第Ⅱ分校専用宿舎の管理人の補佐を務めるエリゼ・シュバルツァーと申します。」
「”エレボニア帝国”……?”トールズ第Ⅱ分校”……??」
「えっと……貴女の名前は何と言う名でどういった立場の方なのでしょう?」
不思議そうな表情で首を傾げ続けている娘にアルフィンは戸惑いの表情で尋ねた。
「…………ゲルド。ゲルド・フレデリック・リヒター。それと私がどういった人物かだけど………私が今いるこの世界は”ティラスイール”?」
「ティ、”ティラスイール”……?い、いえ……わたくし達が今いるこの世界の名前はゼムリア大陸ですわ。」
娘――――ゲルドの問いかけにアルフィンは戸惑いの表情で答え
(リアンヌ様。まさかこちらの方―――ゲルドさんは………)
(ええ……彼女はディル=リフィーナでもなく、ミント達の世界でもない異なる世界の出身なのでしょうね。そして彼女がこの世界に来た方法は恐らく”零の御子”殿が関係しているでしょうね。)
その様子を見守っていたエリゼはリアンヌ分校長に小声で囁き、囁かれたリアンヌ分校長は静かな表情で頷いてゲルドの正体等を察した。
「え…………えっと………一応念の為に聞くけど、”エル・フィルディン”、”ヴェルトルーナ”、”ガガープ”。この3つの言葉のどれかに聞き覚えはない?」
一方アルフィンの反応に驚いたゲルドはアルフィンに新たな質問をし
「は、はい。どれも初めて聞く言葉ですわ。」
「そう………………(一体どうして”魂ごと消滅したはずの私が生き返って”ティラスイールでもなく、エル・フィルディンやヴェルトルーナでもない異なる世界に…………)」
「――――ゲルドと仰いましたね。正直信じられない話と思いますが、貴女が今いるこの世界は貴女がいた世界とは全く異なる世界です。」
アルフィンの話を聞いて考え込んでいるゲルドにリアンヌ分校長は静かな表情で話しかけ
「ええ………それについては何となく気づいていたわ。」
「その……随分と落ち着いていらっしゃるようですけど、ゲルドさんは御自分が自身がいる世界とは全く異なる世界―――異世界に来たことに不安や驚き等はないのですか?」
リアンヌ分校長の言葉に落ち着いた様子で頷いたゲルドの様子を不思議に思ったエリゼはゲルドに訊ねた。
「うん。私は元々一人ぼっちで旅をしていたし………――――そもそも、私は”自分がいた世界では既に私自身が死んでいる”から、むしろこうして私自身が今生きている事の驚きの方が大きいもの。」
「ええっ!?」
「………………なるほど。という事はやはり元の世界では死んでいたはずの貴女が甦り、こうして我々の前に現れた事は零の御子殿が起こした”奇蹟”が関係しているのでしょうね。」
「”因果の操作”、ですか…………しかし、キーアさんの力は1年半前の件でほとんど消え、もはや”奇蹟”は起こせないはずですが………」
ゲルドの口から出た驚愕の事実にアルフィンが驚いている中リアンヌ分校長は静かな表情で答え、リアンヌ分校長の答えを聞いてある人物を思い浮かべたエリゼは新たなる疑問を口にした。
「それについては恐らくこことはまた異なる次元――――”並行世界”に存在する御子殿によるものなのでしょう。」
「それは………」
「えっと……わたくしもその方――――キーアさんの事はリィンさんやエリゼ達からも話には伺っていましたが………どうして、”並行世界”のキーアさんは異なる世界で命を落としたゲルドさんを蘇生させてこの世界に移動させたのでしょう……?」
リアンヌ分校長の推測にエリゼが真剣な表情を浮かべている中アルフィンは戸惑いの表情でリアンヌ分校長に訊ね
「さて……それについては並行世界の御子殿の意図ですからこちらの世界の御子殿に聞いたところでわからないでしょうが………彼女―――ゲルドを蘇生させ、この世界に移動させた何らかの理由はあるはずです。」
「えっと………その”キーア”、だったかしら?話を聞く限り、その人が私を蘇生させてこの世界に転移させたように聞こえるけど………その人って、一体何者なの?」
アルフィンの疑問にリアンヌ分校長が答えたその時、ゲルドは不思議そうな表情である人物の事を訊ねた。そしてリアンヌ分校長達はそれぞれ自己紹介をした後1年半前に起こった”クロスベル動乱”について説明をした。
「”因果の操作”………だから、死んだはずの私がこの世界―――――ゼムリア大陸でこうして生きているのね……………フフ、そのキーアって娘が何を考えて私を蘇生させてこの世界に転移させた理由はわからないけど………私はその娘に心から感謝しているわ。為すべき事を終えて世界から消滅するはずだった私をこうして生き返らせて、新たなる人生をくれたのだから………」
「ゲルドさん…………」
「……………以前いた世界の貴女の”為すべきこと”がどのような内容かはわかりませんが……これから、どうするおつもりですか?」
事情を聞き終えた後優し気な微笑みを浮かべたゲルドの様子をアルフィンは辛そうな表情で見つめ、目を伏せて黙り込んでいたリアンヌ分校長は静かな表情でゲルドに問いかけた。
「そうね………………――――――!」
リアンヌ分校長の問いかけにゲルドが考え込んだその時、ゲルドの脳裏にリィンを始めとした新Ⅶ組の面々と一緒に何気ない日常の学院生活を送っている”第Ⅱ分校の制服を着ている自分”や新Ⅶ組だけでなく旧Ⅶ組や特務部隊の面々と共に凄まじい瘴気を纏った竜らしき存在に挑んでいる様子の自分、リィン達が凄まじい瘴気を纏った獣らしき存在と戦っている間に美しい女性に見間違えるような夕焼けのような髪の男性が神剣らしき神々しい剣を構えて力を溜めている間に自分が知るある特別な”歌”を歌っている様子の自分、そして成人に成長した自分らしき女性が自分同様成長してそれぞれのウエディングドレスを身に纏ったエリゼやアルフィンらしき女性や多くの女性達のように自分の雪のような真っ白な髪に似合う純白のウエディングドレスを身に纏い、幸せそうな表情を浮かべてリィンらしき男性と結婚している様子の光景が浮かんできた。
「(今のは……………)……………えっと、リアンヌさん。リアンヌさんの学校に入りたいのだけど、どうすればいいのかしら?」
「ええっ!?という事はゲルドさんは第Ⅱ分校に編入させるおつもりなのですか……!?」
「………一体何故この学院に編入しようと決められたのですか?」
ゲルドの問いかけにアルフィンが驚いている中リアンヌ分校長は落ち着いた様子でゲルドに問い返した。
「……私には”見える”の。私がこの学校でたくさんの友達と笑い合っているとても暖かくて明るい光景や、この学校の友達と一緒に呪われた竜や黒き獣に挑んでいる私、そして、私自身が好きになったと思われる男性と結婚して幸せそうな顔を浮かべている私が…………」
「”見える”、ですか。ゲルドさんが先程仰った話はまるでご自分の未来を見ているような口ぶりでしたが………」
「”未来を見ている”………――――!まさか、貴女には”予知能力”があるのですか?」
ゲルドの答えにエリゼが考え込んでいる中察しがついたリアンヌ分校長は僅かに驚きの表情を浮かべてゲルドに問いかけた。
「えっと……”予知能力”とは一体どういうものなのでしょうか?」
「”予知能力”とはその名の通り今後起こり得る未来を予知する能力――――つまり、”未来を見る能力”です。」
「ええっ!?み、未来を……!?」
「という事は先程ゲルドさんが仰った事が今後起こる可能性が非常に高い出来事になりますが……その中でいくつか気になる事がありましたね。」
自分の質問に答えたリアンヌ分校長の答えにアルフィンが驚いている中エリゼは真剣な表情で考え込んでいた。
「彼女がこの第Ⅱ分校で絆を結んだ者達と共に呪われた竜や黒や獣に挑むという話ですか。(”呪われた竜”に”黒き獣”………――――!まさか………)」
「えっと、ゲルドさん。ちなみにゲルドさんが見た未来でゲルドさんがお友達になったという第Ⅱ分校の方々はどのような特徴の方々でしょうか?」
ゲルドが見た未来について考え、察しがついたリアンヌ分校長が目を細めている中アルフィンはゲルドに質問をした。
「えっと………ピンク色の髪の女の子に銀髪の女の子、蒼灰色の髪の男の子と……後は金茶髪の男の子とミント色の髪の女の子ね。」
「ピンク色の髪の女子と銀髪の女子、それに蒼灰色の髪の男子という特徴があるメンバーは恐らく………」
「”特務科”――――新Ⅶ組ですか。金茶髪の殿方は第Ⅱ分校の生徒の方々の特徴を考えると恐らくアッシュ・カーバイドさんと思われますが……」
「そ、それにミント色の髪の女の子は恐らく”あの娘”の事だと思いますけど……どうしてあの娘とアッシュさん、それにアルティナさん達がその竜や獣に挑んでいるのでしょう……?」
ゲルドが口にした人物達の特徴を聞いて誰の事かそれぞれ察したリアンヌ分校長は静かな表情で答え、エリゼは真剣な表情で考え込み、アルフィンは戸惑いの表情をしていた。
「………………」
「え、えっと………?」
「私達に何か他にも聞きたい事があるのでしょうか?」
興味ありげな様子で自分達を見つめてきたゲルドの行動にアルフィンが戸惑っている中エリゼはゲルドに訊ねた。
「うん。えっと、一つ聞きたいのだけど……この世界は一人の男性が複数の女性と結婚する事ができるの?」
「え?はい。現にわたくしはこの学院の教官の一人―――リィンさんの妻の一人で、こちらにいるエリゼはリィンさんの婚約者の一人でリィンさんの”正妻”になる予定ですわ。ですがどうしてそんな事をお知りになりたいのですか?」
ゲルドの質問に戸惑いの表情で答えたアルフィンは不思議そうな表情でゲルドを見つめた。
「さっき、私が”見えた”未来に私が好きになったと思われる男性と結婚している話もあったでしょう?その時に見えた光景に貴女達によく似た女性達がウエディングドレスを着て、私が結婚する男性と同じ男性と結婚している様子が”見えた”の。」
「!!!!???」
「ええっ!?という事はゲルドさんが見たという”未来”は……!」
「ふふふ、十中八九ご主人様と私達の結婚式の事でしょうね。」
「あらあら、まさかこんな形でご主人様の新たなるハーレムメンバーになる可能性が高い女の子が現れるなんて、さすがはご主人様と言った所かしら♪」
ゲルドの答えにエリゼが血相を変え、アルフィンが驚いたその時それぞれの身体から出て来たリザイラは静かな笑みを浮かべ、ベルフェゴールはからかいの表情でゲルドを見つめていた。
「…………ゲルドさん。一応念のために聞きますが、未来のゲルドさんが私達によく似た女性達と結婚する相手の特徴は黒髪の男性ですか?」
「うん。――――あ、そう言えばその男性はリアンヌさんの学校で私や私の友達の先生として、何かの授業をしていた未来も見えたわ。」
ジト目になったエリゼの問いかけにゲルドは静かな表情で答え
「ふふふ、今の話でその男性が誰なのかもはや確定したようなものですね。」
「うふふ、教師と生徒の恋愛という禁断の恋まで実行するなんて成長したじゃない、ご主人様♪」
「ハア………私達だけに飽き足らず、生徒にまで手を出すなんて、兄様は一体どれ程の女性に手を出せば満足されるのですか?うふふふふふふ………!」
ゲルドの答えにリザイラとベルフェゴールが興味ありげな表情をしている中疲れた表情で大きな溜息を吐いたエリゼは膨大な威圧を纏って微笑み始め、その様子を見守っていたアルフィン達は冷や汗をかいた。
「フフ、貴女達の伴侶の件は一端置いておくとして…………――――いいでしょう。リウイ陛下に事情を説明し、貴女が第Ⅱ分校に編入できる手配をしましょう。」
「……本当にいいの?自分で言うのもなんだけど、私って貴女達からしたら凄い怪しい存在だと思うのだけど。」
リアンヌ分校長の申し出を聞いたゲルドは不思議そうな表情でリアンヌに問いかけ
「これでも人を見る目は備わっている自負はありますし、知り合いがいないどころか生きていた環境すらも全く異なる世界であるこの世界に迷い込んできた貴女を放置するような真似は力無きもの達を守る立場である騎士の一人として……そして、陛下とイリーナ様の騎士の一人としても決してできませんので。」
「そう………ありがとう…………」
リアンヌ分校長の答えを聞いたゲルドは優し気な微笑みを浮かべた。そして1週間後――――
5月1日、AM8:40――――
~トールズ第Ⅱ分校・特務科Ⅶ組~
「――――みんな、おはよう。いつも通り、一人も遅刻や欠席もせず全員揃っていて何よりだ。」
「突然になりますが今日はⅦ組に新しい仲間が増えますわ。」
1週間後朝のHRを始める為に教室に入って来たリィンはユウナ達新Ⅶ組が全員いる事を確認し、セレーネはユウナ達にとって驚きの事実を口にした。
「へっ……!?」
「本当に突然ですね………」
セレーネの言葉にユウナは呆け、クルトは困惑の表情を浮かべた。
「ああ―――入ってくれ。」
「――――はい。」
クルトの言葉に頷いたリィンが廊下に視線を向けると第Ⅱ分校の制服を身に纏ったゲルドが教室に入って来た。
「キレイ………」
「銀髪……―――いや、純白の髪とは随分と珍しい髪の色だな…………」
「はい………まるで雪を思い浮かべるような純白の髪ですね……」
「ゲルドさん、まずは自己紹介をお願いしますわ。」
ゲルドの容姿や髪の色にユウナが見惚れている中クルトとアルティナは興味ありげな様子でゲルドの雪のような真っ白な髪を見つめ、セレーネはゲルドに自己紹介を促した。
「はい。―――――ゲルド・フレデリック・リヒター・パリエ。国籍はメンフィル帝国で”諸事情”で、この学校に編入したわ。学校を通うのは初めてで色々とわからない事もあって迷惑をかける事もあるかもしれないけど、1日でも早く慣れるつもりで頑張るから、よろしくね。」
「しょ、”諸事情”ってどんな事情よ………」
「国籍がメンフィル帝国という事は君は何か知っているのか?」
「いえ、生徒側の追加の人員が来るような連絡は来ていません。……お二人共、これは一体どういう事ですか?まさかわたしだけ意図的に知らされていなかったのでしょうか?」
ゲルドの自己紹介に冷や汗をかいたユウナは呆れた表情で指摘し、クルトに視線を向けられたアルティナは静かな表情で答えた後ジト目でリィンとセレーネに訊ねた。
「アハハ………そう思うのも無理はありませんけど、わたくし達にとってもゲルドさんの第Ⅱ分校への編入は青天の霹靂の出来事で先程知ったばかりですから、わたくし達もアルティナさんと同じですわよ。」
「そもそもゲルドの第Ⅱ分校への編入はメンフィル帝国政府は関わってはいるけど、編入した事情は俺達と違って単なる親族の厚意によるものだ。」
「”親族の厚意”、ですか?」
アルティナの指摘にセレーネが苦笑しながら答えた後に説明したリィンの説明を聞いたアルティナは不思議そうな表情で首を傾げた。
「ああ。先程名乗ったゲルドの名前の中に”パリエ”があっただろう?”パリエ”の名前に聞き覚えは無いか?」
「へ……?そ、そう言えば”パリエ”って名前はどっかで聞いたような………」
「”パリエ”………――――まさか……君は”癒しの聖女”ティア・マーシルン・パリエ皇女殿下の親族なのか……!?」
リィンの説明に呆けたユウナが考え込んでいる中ある事を察したクルトは驚きの表情でゲルドを見つめた。
「ええっ!?い、”癒しの聖女”って確かシズクちゃんの義理のお姉さんになった癒しの女神教の聖女様じゃない……!」
「”癒しの聖女”――――ゼムリア大陸側の癒しの女神教を纏める司祭長にして、”英雄王”の娘の一人でもあるメンフィル帝国の皇女ですね。………ですが確か、ティア皇女―――”パリエ”家の親族は父親の”英雄王”を除けば義母のセシル様と義妹のシズクさんだけだったはずでは?」
クルトの言葉を聞いたユウナが驚いている中アルティナは冷静な様子である人物の情報を口にした後新たなる疑問を口にした。
「これはエリゼお姉様達から伺った話ですが………ゲルドさんは先週の”特別演習”の最終日に突然、何者かの仕業によって第Ⅱ分校の宿舎に転移させられたそうなんです。」
「ええっ!?あ、あたし達が”デアフリンガー号”でリーヴスに帰っている間にそんな事が!?……あれ?でも、あたし達がリーヴスに戻った時、宿舎でその娘は見かけませんでしたけど……」
セレーネの説明を聞いて驚きの声を上げたユウナだったが、ある事を思い出して首を傾げた。
「分校長の話だと、ゲルドはゼムリア大陸ともメンフィル帝国の本国がある異世界――――”ディル=リフィーナ”とも異なる世界からやってきたそうなんだ。それで事情を聞いた分校長はゲルドがエレボニア帝国に彼女の存在を察知される前にメンフィル帝国に保護された方がいいと判断して、リウイ陛下に連絡して俺達がリーヴスに戻ってくる前に転移魔術で迎えに来たペテレーネ神官長と共にゲルドはリベール王国のロレント地方にあるメンフィル帝国の大使館に転移で移動して、大使館に保護されていたんだ。」
「?何故エレボニア帝国に彼女の存在が察知される事を恐れてそのような事をしたのでしょうか?」
「えっと………幾らゲルドさんの意志ではないとはいえ、ゲルドさんはエレボニア帝国に無許可で入国――――密入国をしたという問題が発生しているのですから、そんなゲルドさんがエレボニア帝国に察知されて捕まってしまえば戸籍も存在しないゲルドさんは中々自由の身になれない可能性が十分に考えられましたので。」
リィンの話を聞いて新たな疑問が出て来たクルトの質問にセレーネは困った表情で答え、セレーネの答えにユウナ達は冷や汗をかいた。
「た、確かに言われてみればそうよね………」
「というか転移魔術でゲルドさんを迎えに来たペテレーネ神官長も何気に”密入国罪”を犯している気がするのですが。」
「……それで話を戻しますけど、何故メンフィル帝国に保護された彼女が”癒しの聖女”の親族になったのですか?」
我に返ったユウナは苦笑し、アルティナはジト目で呟き、クルトは気を取り直して新たな質問をした。
「エリゼやアルフィンから聞いた話によるとゲルドはある”異能”を持っていて、メンフィル帝国がその”異能”を持ったゲルドを利用しようと考える悪意ある勢力がそう簡単にゲルドに手出しできないように、ゲルドをメンフィル皇女の一人であられるティア司祭長の親族にしたとの事だ。」
「”異能”というと、先週の”特別演習”でリィン教官が時折見せてくれたような能力の事ですか?」
「いえ、ゲルドさんの”異能”はお兄様の”異能”とは全く異なる能力ですわ。――――それどころか使いようによっては、戦争の勝敗すらも変えかねない凄まじい能力をゲルドさんは持っているのですわ。」
「せ、戦争の勝敗すらも変えかねない能力ってどんな能力よ……」
「―――――”予知能力”よ。」
ゲルドが持つ異能の凄まじさを軽く説明したセレーネの説明にクルトやアルティナと共に冷や汗をかいて表情を引き攣らせたユウナが疲れた表情で疑問を口にしたその時、ゲルドは静かな表情で答えた。
「ちなみに”予知能力”とは今後起こり得る未来を予知する能力――――つまり、”未来を見る能力”との事だ。」
「ええっ!?み、”未来を見る能力”……!?」
「……確かに未来を見る事ができれば、セレーネ教官の仰る通り戦争の勝敗すらも変えかねないですね。………まあ、ゲルドさんの出自も含めて非常識過ぎる内容ばかりですが。」
「そしてそんな能力を持っているゲルドの存在を大規模な軍拡を行い続けているエレボニア帝国が知れば、ゲルドを軍事利用する可能性が考えられたから分校長はメンフィル帝国にゲルドの保護をさせたのか………しかし、何故君は第Ⅱ分校――――”軍”の士官学院に編入を?学術機関に通いたいのならば、他にも軍とは無関係の学校があると思うのだが………」
ゲルドの”異能”を軽く説明したリィンの話にユウナが驚いている中真剣な表情で呟いたアルティナはジト目になり、クルトは複雑そうな表情で呟いた後ある事に気づき、不思議そうな表情でゲルドに問いかけた。
「……私の”予知能力”で”見えた”の。この学院に通えば、ずっと一人で旅をしていた私にたくさんの友達ができて、共に笑いあっている暖かい光景が…………だから、リアンヌさ―――ううん、リアンヌ分校長に頼んでこの学院に編入できるようにしてもらったの。」
「ゲルドさん…………」
「………………」
ゲルドの説明を聞いたセレーネとリィンは静かな表情でゲルドを見守り
「それと私は”魔女”でもあるわ。私が”魔女”である事に加えて”予知能力”があった事から私のいた世界ではそんな私を恐れる人達もいたわ…………やっぱり、迷惑かな?普通の人とは異なる存在の私がこのクラスに来て。」
自分の事についての説明を終えたゲルドは寂し気な笑みを浮かべてユウナ達に訊ねた。
「そ、そんな訳ないでしょう!?幾ら貴女が特別な能力を持っていたり”魔女”とかいう存在だったとしても、貴女もあたし達と同じ”人”でしょう!?むしろ、何も知らずに貴女を恐れていた貴女のその世界の人達の考えがおかしいわよ!」
「人を見かけだけで判断する事に反対なのは僕も同意見だ。――――そもそも、このゼムリア大陸にはメンフィル帝国を始めとした異世界―――”ディル=リフィーナ”との交流によって人間以外の様々な異種族が生きているのだから、君に多少普通の人とは違った事情があったとしても、それを理由に君の事を差別する等毛頭ない。」
「ユウナさん………クルトさん…………――――わたしも貴女程―――いえ、見方によっては貴女以上の普通の人間とは異なる事情があります。ですから、わたしは最初から貴女の事を新たなクラスメイトとして認識しています。」
ゲルドの問いかけにそれぞれ真剣な表情で答えたユウナとクルトの答えに驚いたアルティナも二人に続くように普通の人とは異なる存在のゲルドを受け入れる意志を伝えた。
「みんな…………ありがとう…………!これから、よろしくね………!」
ユウナ達の意志を知ったゲルドは嬉しさのあまり一筋の涙を流した後涙をふいて優し気な微笑みを浮かべてユウナ達を見つめた。
「フフ、よかったですわね、お兄様……」
「ああ………(それにしても”魔女”か。ハハ、世界が違うとはいえ、ゲルドと同じ”魔女”のエマが彼女の事を知ればどういう反応をするだろうな……?)」
ゲルド達の様子をセレーネと共に微笑ましく見守っていたリィンはある人物の顔を思い浮かべていた。
こうして………ゼムリアともディル=リフィーナとも異なる世界で背負っていた宿命から解放された”白き魔女”の自分自身の幸せを掴む為の新たなる軌跡が始まりを告げた―――――
後書き
という訳で予告していたレギュラーキャラになる新クロスオーバーキャラは運命の本編でも登場したガガープシリーズの重要人物の一人である”白き魔女”ゲルドです!ただし、今回の話を読んでお気づきと思いますが運命の本編と違ってこの物語のゲルドは記憶喪失にはなっていません。なので、最初から魔法チートキャラ(まあ、記憶喪失状態でも十分チートだった気がしますが(苦笑))ですwwというか、運命の本編のゲルドのレベルを見て貰えばわかると思いますが、ゲルドだけ新Ⅶ組のメンバーでありながら現時点でも新Ⅶ組どころか旧Ⅶ組のレベルよりも遥かに上というおかしな状況にwwなお、ゲルドの新Ⅶ組入り後に第ⅡOPとして閃ⅢのED”嘆きのリフレイン”が流れて並行世界でのED前のラストイベントの様子が流れた後並行世界のユウナ達が星見の塔で空を見上げているシーンと第Ⅱ分校の宿舎の前で空を見上げているゲルドのシーンが同時に映り、ユウナ達のそれぞれの学院生活の様子が映った後並行世界のユウナ達が魔導巧殻陣営のキャラ達と模擬戦をしている様子が映り、曲が一番盛り上がる所である場所の屋上でデュバリィ達と戦うリィン達、リウイとヴァイスの号令でそれぞれの国の軍がヘイムダルに突撃するシーン、黒キ星杯でリィン達と並行世界のユウナ達が共闘しているシーン、ルトガーと戦うフィーとサラ、幻燐陣営のある二人のキャラ達、シャロンと戦うアリサ、レーヴェ、ヨシュア、戦女神陣営のセリカの使徒の中のあるキャラ、ジークフリートと戦うリィンを含めたメンバー、カンパネルラと戦うメンバー、レクターと戦うロイド達、クレアと戦うメンバーが次々と映った後、ラスボスをリィン達が包囲している中ゲルドが歌を歌っている所と力を溜め終えたセリカがアストライアの力を解放している所が映った後、エイドスとある人物が数秒だけ映り、最後に新旧Ⅶ組&特務部隊が全員映るシーンになると思ってください。
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