艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~
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第五十八話
前書き
どうも、因幡の白うさぎ美味しかったです。弟が食ってたときは、なんだこのグロ映像とか思いましたね。
―車内―
あのあと、今日の晩飯の材料や日用品やらをスーパーやドラッグストアで買った後、迎えの車に拾ってもらった。
「もう少しで到着しますよ。」
スーツを着た少し歳を取った運転手の男の人は、俺達にそう言った。
「あ、ありがとうございます。」
車に乗ってから三十分。
たった三十分のはずなのに、新幹線のなかでも寝てたはずなのに。
「なんでこいつら全員爆睡できんだよ…………。」
助手席の拓海。俺の右隣の春雨。左隣の冬華。全員例外無く寝てる。なぜだ。なぜそんなに寝れるんだ。
「まぁ、拓海くんは貧弱だし、夕立さんはなんか夕立さんですし、春雨さんはそもそも乗り物に乗らないですからね。」
運転手の人は(拓海にたいしてだけやけに辛辣に)丁寧に解説してくれた。
「…………あの、運転手さん。」
「相模でいいです。」
「…………相模さん。あなたは、俺達の組織の総本部の人間…………で、いいんですよね?」
俺は相模さんとなにか会話しようと話題を振る。分かりきったことを聞いてしまったかな。
「違いますね。私はあくまで外部の人間です。普段はタクシードライバーをしてますが、本部からの依頼で、提督さんや艦娘さんを乗せたりしております。」
…………あれか。社会に俺達の関係者はかなり居るってことか。
拓海の食料やらなんやらの話にも合点がいった。
「…………この仕事を初めてから、十年になりました。今まで、そこそこの人数の艦娘になった女の子を乗せました。最近は、かなり送る頻度が増えてきました。」
つまり、それだけの数の犠牲者が出たと言うことなのだろう。
「…………大丈夫です。俺達は死にませんよ。」
改めて理解したが、民間人のなかにも深海棲艦との戦争を終わらせてほしいと思う人は多いのだろう。
そりゃあ、人生の半分どころか、下手したら四分の一も終わってないような女の子が戦ってるなんて知ったら、マトモな神経してたら心が痛むはずだ。
…………俺達が頑張らないと。
「…………期待してます。さてと、そろそろ皆さんを起こしたほうが良いですよ?」
相模さんはそう言うと、ハンドルを左に切った。
―佐世保鎮守府―
「…………来たね。」
俺達はどこかで見たことのある赤レンガの建物の前にやって来た。
「…………ここが、佐世保鎮守府か…………。」
ただ、呉鎮守府よりかなりぼろっちいというか、手入れがされてない感じが凄い。
「…………お迎えなしか?」
「…………艦娘の皆は、会議室に集まってもらってる。僕たちは自分の部屋で着替えるよ。」
拓海は俺達三人に部屋の位置を教えてくれた。
「さてと、先に指示しとくけど、僕は挨拶が終わったら事務作業をしてくる。ふゆっ…………夕立と春雨は皆と親睦を深めてくれ。千尋は食堂の片付けと晩御飯の準備。だれかに手伝を頼んでもいいいよ。」
…………なんで俺は言い直さねぇんだよ。
「さてと、全員、部屋で着替え!」
拓海の号令と共に、俺達は鎮守府の中に入っていった。
―佐世保鎮守府 内部―
…………いやこれ、ホントに掃除しなきゃ駄目だろこれ。
俺は佐世保鎮守府に入り、皆と別れて自分の部屋に向かってる最中、廊下をキャスターつきの鞄を引っ張って歩きながらそんなことを思った。
この辺りは使われてないのか、かなり埃っぽい。
多分だけど、明日は大掃除だろうなぁ…………いつ以来だよ大掃除。夏休み以来か。
「そういや、もう艦娘になってから三ヶ月か…………。」
色々ありすぎて、あっという間だったなと思う。
艦娘になったり。
学校辞めたり。
化け物みてぇなやつに出会ったり。
ピンク髪に出会ったり。
ライダーキッ〇見たり。
とL〇VEったり。
ドイツ語教えたり。
摩耶さんと戦ったり。
提督のピンク雑誌貰ったり。
寝坊したり。
キスしたり。
…………網羅できる気がしねぇ。
「まぁ、流石に一番の出来事はこれだろうなぁ。」
俺は自分の左腕を見た。
銀色に輝く義手。
…………自分で切り落としたとはいえ、何度見ても見慣れない。今日もいろんな人に見られてたなぁ…………。
あの日から異動するまで、呉鎮の奴等にかなり気を使われたのはいい思い出だ。
「っと、ここか。」
色々と考えているうちに、目的の部屋に着いた。
俺は扉を開けて中に入った。
「…………わぉ。」
俺は部屋の中に置いてある家具を見て、思わず声が出た。
布団とちゃぶ台しかねぇ。
しかも、この部屋も埃っぽい。
…………掃除は夜にやるとして、取りあえず着替えるか。
―会議室前―
「…………そのネックウォーマー、やっぱり着けるんだね。」
俺が会議室の前にやって来ると、既に拓海は着替えてやって来ていた。
俺は寒くなってきて冬仕様になった制服(長ズボンにセーター)に、レ級から貰ったネックウォーマーを着けてきた。
「…………忘れないようにな。」
あの場は退けたとはいえ、ぼろ負けしたのは悔しかった。戒めの意味も込めて、日常的に着けることにした。
意外と暖かい。
「まぁ、僕は大輝さんからしかその時の話を聞いてないけどさ。災難だったよね。色々と。」
「最後の一言にいろんな意味を込めてるだろお前。」
まだ拓海で良かった。悠人だったらもっと弄ってきてた筈だ。俺、死にかけてたのに。
「まぁ、暫くは出撃どころじゃ無いだろうから、気を引き締めてね。」
出撃は無いのに、何の気を引き締めると言うんだろうか…………。
「お待たせしました!」
「っぽーい!」
俺達がそんな感じで立ち話をしていると、冬華と春雨がやって来た。二人ともそれぞれベージュと淡いピンクのカーディガンを着ていた。クッソ似合ってた。
「どうでもいい話だけどさ、夏から冬に代わりかけの頃の女の子のこーゆー少し厚着の服装って来るものがあるよね。」
「分かる。」
本人たちの前で堂々とこんな会話をする野郎二人。同意見の人間は多い筈だ。
「えへへ~。」
「そ、そんなことより、早く入りましょうよ!」
照れる冬華と春雨。あーもう、春雨可愛すぎじゃ無いですかね?
「さてと、それじゃあ入るか。」
拓海は俺達を一瞥すると、扉に手を掛けた。
後書き
読んでくれてありがとうございます。最近はゲームの時間を全て創作活動に当ててるからか、一時期と比べると異常なペースでの投稿になっております。多分、明日か明後日にはまた投稿するんだろうなぁ…………。
それでは、また次回。
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