ロボスの娘で行ってみよう!
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第20話 第三次ティアマト会戦 前編
前編です。
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第20話 第三次ティアマト会戦 前編
宇宙暦789年1月9日
■自由惑星同盟首都星ハイネセン 統合作戦本部 参事官室
帝国軍迎撃案が決定された翌日リーファはキャゼルヌの元を訪れていた。
「キャゼルヌ先輩いますか?居ないなら勝手に入りますよ」
「居るよ、入れよ」
「お邪魔します」
「ロボス大尉どうしたかね」
キャゼルヌが態と真面目そうに返答するのでリーファも真面目そうに返答する。
「はっ、参事官殿に愚痴を言いに参りました」
2人してニヤリとする。
「で、どうした。昨日の事だろ」
「まあ、そうですけどね、あとはダスティーのことで」
「まあ、アッテンボローの方は未だ実感が沸かないんだろうな、奴さんは未だ19だ。それに相手がお前だからな」
「まあ否定は出来ませんね」
「おいおい、そこは嘘でも【先輩酷いです】ぐらい言うものだぞ」
「センパイヒドイデス」
「ぷっ、台詞が棒読みだぞ、その辺は今度ヤンが帰ってきたら迎えをアッテンボローに任せて、家でオルタンスの手料理を御馳走するからそこでオルタンスに相談してみると良い」
「先輩の婚約者の方ですね、早くお会いしたいですね」
「まあ、暫くのお楽しみだな」
「待ってますよ」
軽口の後2人とも真剣な表情になる。
「昨日の迎撃案のことだろ」
「ええ、同数で正面決戦ですからね」
「無謀というわけだな」
「まあ、戦術さえ間違わなければ五分五分と言いたいところですがね」
「士気の差が出ると言う訳か」
「敵は必死ですからね、同盟のように失敗しても降格や予備役程度ならそこまで行かないでしょうが、帝国では自身の死だけでなく一族全てが死を賜るとかざらですからね」
「それだけ、敵は必死か」
「ええ、しかも今回は、門閥貴族の子弟を多く殺してますからね」
「恨み骨髄まで達するか」
「恐らくは、損害を考えずに遮二無二に攻撃してくると思いますよ」
「そうなると、勝ったとしても損害が大きいか」
「ええ、再建するのに時間がかかるのでは無いかと」
「まあ、俺には未だ何も出来ないがね」
「仕方がありませんよ」
「所で、今回はお前さんはでるのかい?」
「いいえそれが、総参謀長に嫌われましてね、統合作戦本部でお留守番だそうですよ」
「あの男も小心で狭量で自己陶酔タイプだからな」
「それって、後輩のフォークみたいじゃないですか」
「ああ、あのアンドリュー・フォークか、そうだなソックリだな、案外親子だったりしてな」
「嫌ですよ、あんなのが量産されてたら」
「ハハ、違いないな」
「で私の代わりに本来ならばヤン先輩が出るところですが」
「エル・ファシルの英雄に対するやっかみでエコニアの事後処理と言う口実で却下か」
「そう言う訳です、その為に臨時にワイドボーン先輩が出るそうです」
「あのワイドボーンがね。大丈夫なのか?」
「昨日話しましたが、意図を理解してくれましたよ」
「それなら、幾ばくかは安心できるか」
「まあ騒いでも仕方が無いですからね」
「違いない、ヤンが帰還するのが大体一ヶ月後ぐらいだな」
「2月の始めですか、戦闘が始まる直前ぐらいか」
「友人の話じゃ今回の出兵の準備で後方勤務本部も大忙しだそうだ」
「六万隻ですからね」
「補給だなんだで一週間は徹夜だそうだ」
「先輩が行けば、早いでしょうね」
「俺もそう思うがね」
話しているとノックがされて、亜麻色髪の大尉が入ってきた。
「中佐、そろそろお時間です」
「ああ、済まん。ロボス大尉済まんな此から会議なんだ」
「キャゼルヌ中佐、お時間をいただきありがとうございました」
柄にもない挨拶を行い2人は分かれた。
あれユリアンのお父さんじゃないか、なるほどよく似ているな。
宇宙暦789年1月15日
■自由惑星同盟 首都星ハイネセン 軍事宇宙港
青く晴れたこの日、迎撃の為に出発する艦隊員が盛大な見送りの中出発する。
ある者は婚約者と抱擁をし、ある者は妊娠した妻の腹に耳を充てて子供の動きを知り、ある者は妻や子供と抱き合う、またある者は退役後に始める店の話をしている。
軍楽隊の演奏の中、国防委員長の長い演説が終わると宇宙艦隊司令長官以下各艦隊司令官に花束が贈られ司令部要員が敬礼の後、シャトルに乗り込み発進していった。
軌道上には宇宙艦隊総旗艦FBB30アイアース、第二艦隊旗艦FBB34パトロクロス、第三艦隊旗艦FBB31ク・ホリン、第九艦隊旗艦FBB37パラミデュース、第十二艦隊旗艦FBB40ペルーン以下六万三千隻の艦艇が発進準備を終えており、宇宙艦隊司令長官ラムゼイ元帥の命令と共に発進した。
「各艦隊準備でき次第順次発進せよ」
帝国暦480年2月4日
■イゼルローン要塞
イゼルローン要塞に到着した遠征軍は此処で最終補給を受けていた。
帝国軍の編成は宇宙艦隊司令長官ベヒトルスハイム元帥一万五千隻、ミュッケンベルガー大将一万五千隻、メルカッツ中将一万隻、ゼークト中将一万隻、ヴァルテンベルク中将一万隻であった。またこの艦隊に後の名将達も含まれて居たのである。
ロイエンタール、ミッターマイヤー両中尉はメルカッツ提督の参謀として配属されていた。ビッテンフェルト大尉は巡航艦の副長として、ワーレン、ルッツ両大尉はミュッケンベルガーの参謀として、ファーレンハイト大尉はゼークト艦隊にケンプ大尉はベヒトルスハイム艦隊に配属されていた。
宇宙暦789年 帝国暦480年 2月10日
■ティアマト星域
イゼルローン要塞から6.2光年の距離にあるティアマト星域此処は幾度かの会戦の決戦場と成った星域である。そこで又大会戦が始まろうとしていた。
帝国軍側では会議を行っていたがその会議は普段の帝国軍と違い鬼気迫るものであった。
「敵の降伏を認めず、完全に撃滅し、もって皇帝陛下の栄誉をしらしむること」
今回勝たなければ後のないベヒトルスハイム元帥の言葉は非常に鬼気迫っていた。
「では、他に意見もないようだし、戦勝の前祝いとしてシャンペンをあけ、陛下の栄光と帝国の隆盛を、卿らとともに祈ることにしよう」
拍手と歓声が上がり、やがて提督たちはシャンペングラスの輝きを右手に高々とかかげた。
「皇帝陛下の御為に」
同盟側では、敵を嘲り軽視する姿が見られた。
「今回の迎撃は遮二無二押すだけで充分勝てる。敵はエル・ファシルで負けた弱兵だ」
「今回も大勝利で飾りましょう」
同盟軍は完全に敵を舐めた状態で全軍が緊張感が弛緩していたのである。
2月11日13時
両軍は11光秒の距離に接近した。暗黙の了解のうちに戦闘が開始される距離に達したのだ。
「フォイアー」
「ファイヤー」
両軍でほぼ同時に攻撃命令が始まった。
数十万に及ぶビームの奔流が宙空を引き裂き両軍に叩きつけられたのである。
後に第三次ティアマト会戦と呼ばれる戦いが始まったのだ。
同盟軍は鶴翼の陣形であり対して帝国軍も鶴翼の陣形である。
同盟軍◎総司令部 ○第二艦隊 △第三艦隊 □第九艦隊 ◇第十二艦隊
帝国軍☆ベヒトルスハイム艦隊 ▽ミュッケンベルガー艦隊 ⊿ゼークト艦隊 凸ヴァルテンベルク艦隊 凹メルカッツ艦隊
⊿
凸 ▽ ☆ 凹
○ △ □ ◇
◎
同盟軍は各艦隊一万五千隻正面戦力六万隻後方戦力三千隻に対して帝国軍は正面戦力五万隻後方戦力一万隻であったが、その一万隻が遊撃戦力として待機しているのである。
帝国軍の正面戦力は同盟に対して一万隻減であるが、全く劣ることなく逆に十分な圧力をかけまっていくその為同盟軍としては次第に焦りが出始めてきていた、更に同盟軍の予備兵力が僅か三千隻であり総司令部直属艦隊なために自由に動かせないのに対して帝国軍のそれは一万隻であることと単なる中将の艦隊で自由に動かせる事の差もあるのである。
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