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真田十勇士

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巻ノ百三十一 国崩しの攻めその二

「それではな」
「本丸で震えておられ」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「やがてはな」
「まさかと思いますが」
「うむ、その通りじゃ」
「講和を」
「それを言われるわ」
「この状況で講和なぞしても」
「わかるな、それは」
「はい、とても」
 まさにと言う大助だった、まだ元服したばかりの彼にもこのことはよくわかることだった。
「幕府の言うがままにです」
「講和をさせられてな」
「どうなるかわかったものではありませぬ」
「この大坂を出ることになるぞ」
「豊臣家は」
「幕府は豊臣家を出してですな」
「そうじゃ、大坂を治めるつもりじゃ」
「豊臣家自体はですな」
「大坂が必要だからな」
 そう思っているからだというのだ。
「そこまでは考えておらぬが」
「それでもですな」
「大坂は出るしかなくなる」
「茶々様は大坂から出られるおつもりは全くないですが」
「それも適わなくなる」
 間違いなく、というのだ。
「そうなるわ」
「それでは」
「我等もじゃ」
 幸村達もというのだ。
「これではな」
「敗れますか、しかし」
「ここはじゃな」
「明日うって出ることは決まっています」
 それ故にと言う大助だった。
「ですから」
「それを口実にしてじゃな」
「うって出れば」
「それが出来ればするが」
 しかしというのだった。
「出来ぬわ」
「それもですか」
「そうじゃ、茶々様がそうなっては大蔵局殿達が何というか」
 茶々の側近中の側近である彼女達がというのだ。
「そう考えるとな」
「うって出ることはですか」
「出来ぬわ」
「そうなのですか」
「うむ、この戦決まったわ」
 苦い顔で言う幸村だった。
「最早な」
「左様ですか」
「残念じゃがな」
「まさか明日だというのに」
「それがそうなるとはな」
「はい、無念です」
 大助もこう言った。
「あと一日早ければ」
「大坂城の堀は広い」
 幸村は大助にもこのことを話した。
「風に乗せて弾を撃っても精々外堀のところの壁や櫓に届くのみ」
「それでもですな」
「音で攻めるとな」
「茶々様は雷がお嫌いだとか」
「つまり大きな音に苦手じゃ」
「それで砲の音に攻められては」
「終わりじゃ」
 そうなるというのだ。
「今拙者が話した通りにな」
「左様ですか」
「そうじゃ、もう今の時点で茶々様は動けなくなっておられる筈じゃ」
 砲撃の音が響いている今はというのだ。 
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