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ドリトル先生と和歌山の海と山

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第一幕その三

「空海上人と最澄上人はね」
「その人達の中でもなんだ」
「特に重要な人達なの」
「高野山と比叡山も開いて」
「凄い人達なのね」
「そのせいかね」
 ここでこうもです、先生は皆にお話しました。
「京都、都があるね」
「ああ、あそこね」
「京都は日本の昔の首都だったわね」
「それも千年の間」
「そうだったね」
「その京都にね」
 まさにというのです。
「結界、霊的に守る為のそれを築く為にね」
「高野山と比叡山があったの」
「そうだったの」
「仏教では鬼、邪なものが出入りする方角があるとされているんだ」
 このことからお話する先生でした。
「全部の方角を東西南北、十二の干支で十二の方角に円で分けているけれど」
「そういえばそんなのもあったね」
「中国から来た教えだったね」
「その教えが日本にもあって」
「それでなのね」
「都の結界にもその考えが入って」
「そう、それは北東と南西だけれど」
 その方角だというのです。
「そこにそれぞれ比叡山と高野山があるんだ」
「鬼が出入りする方角に」
「それぞれお寺を置いて」
「そうして都に鬼が出入りするのを防ぐ」
「そうしているんだ」
「そうだよ、その南西にあるのが高野山なんだ」
 まさにそこにというのだ。
「北東が比叡山でね」
「じゃあお二人はそこまで考えてなんだ」
「それぞれのお寺を置いたんだ」
「都、つまり国を護る為に」
「宗派も開いたのね」
「そうだよ、だからこの人達は重要なんだ」
 日本の仏教の中でもというのです。
「空海上人と最澄上人はね」
「成程ね」
「じゃあね」
「高野山に行く時があれば」
「是非だね」
「先生も学びたいんだね」
「そう考えているよ、高野山に入ったら」
 まるで少年みたいに目をキラキラとさせて語る先生でした、先生は学問についてはいつもこうした目になります。
「もう隅から隅まで見てね」
「そうしてだね」
「フィールドワークをじっくりと学んで」
「そうしてだね」
「隅から隅まで学んで」
「また論文を書くのね」
「そうするよ、そして論文を書いてね」
 そのうえでというのです。
「さらにだよ」
「さらに学ぶ」
「真言宗、そして日本の仏教のことも」
「学んでいくんだね」
「そのつもりなのね」
「学問に終わりはないからね」
 これはどの学問でも同じというのが先生のお考えです。
「だからね」
「それでだね」
「今回論文を書いてもだね」
「先生は仏教の勉強を続けていくのね」
「仏教学を」
「そして他の学問も」
「そうしていくつもりだよ、ただ今はね」
 どうかと言う先生でした。 
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