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世界に痛みを(嘘) ー修正中ー

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─ナミの心象Ⅱ─

 私の故郷であるココヤシ村を救ってくれたお礼をすべくローグタウンにてアキトを買い物に誘った。

 最初はルフィと海賊王の処刑台を散策に行く予定を立てていたアキトはルフィに断りの旨を伝え、自身の買い物を優先してくれた。

 私にとって自分の買い物を優先してくれるアキトの気遣いは純粋に嬉しいものだった。
 私のアキトに対する好感度が上昇した瞬間である。

 実は買い物はアキトと共に行動する名目上の理由である。
 アキトを誘った本当の理由はアキトにココヤシ村でのお礼を述べるのは勿論のこと、純粋にこの少年、アキトについて知りたいというものであった。

 時間が惜しいとばかりに私はアキトの手を握り、軽快な足取りでローグタウンの中へと入っていた。

 本音を言えばただ単純に買い物を楽しみたいという女の子らしい思いもあったことは否定できない。

 背後で騒ぐサンジ君とウソップがいたが私は気付かぬ振りをした。












 やってしまった……

 気付いたときには既に私はショッピングを心から楽しんでいた。

 アキトを長時間付き合わせるという形で。
 終いに私はアキトの前でファッションショーを披露してしまう始末。

 アキト自身文句を言うこともなく私が試着した服の感想を述べてくれていたことも原因であるとも言える。

まあ、心の底から楽しめる数年振りのショッピングであることも自分を抑制できなかった原因であることも否定できないが……。

 とにかく申し訳ない気持ちで一杯でアキトに掛ける言葉が見つからなかった。

 購入の旨を期待している疲労困憊の店員の提案を一掃し、アキトと共に店を出る。
 背後で崩れ落ちる店員に僅かな良心の呵責を感じながら。



 ローグタウンの景観を眺めながらアキトと並ぶ形で足を進める。

 気まずげな様子で横に視線を移せば、目に映るはアキトの横顔。
 その様子からは此方の内心の葛藤に気付いている様子は見受けられない。

 女性である私から見てもアキトは端正な顔立ちをしていると思う。
 私とは正反対の黒髪に深紅の瞳。
 身長も高身長であり、体格も男性にしては細身ではあるが服の下には筋肉がしっかり付いていることが伺える。
 素直にカッコイイ男性であると思う。

 だが私はその程度では動じない。
 見てくれが幾ら良くても中身が腐っている奴など腐るほど見てきたし、男などこの海賊時代では女を碌な目で見ていないことも知っている。
 
 ただ今はこの何とも言えないモヤモヤとした雰囲気を払拭するために話題の転換を図るのみである。

 そうだ、先程試着した服についてはどうだろうか。
 
 そう考えれば早速私は行動に移す。
 先程私が試着していた服がやけに露出が多かったことを指摘するアキトに対してからかうような笑みを浮かべた。
 上目遣いの形でアキトに自らの肢体を少し強調するような姿勢を見せたのである。

 これまで幾度も海賊達に使用してきた手段である。
 大抵の男ならこの仕草で籠絡できる。
 ルフィとゾロ以外の男性連中ならば照れること間違いなしだ。

 だが私の予想を大きく裏切りアキトは実に淡泊な反応を見せた。
 動揺を表すこともなく、照れの要素など皆無であったのだ。

 私は人知れず女としてのプライドが傷付けられたように感じた。
 矛盾した行為であると分かっていながらも私はアキトに対して拗ねた様子を見せてしまう。

 私は何をやっているのだろうか。
 私はただ此方の用事に付き合ってくれているアキトとの親睦を深め、アキトのことを知りたいだけなのに。

 見ればアキトが少し困ったように頬を掻いている。
 それだけに止まらずアキトは此方の拗ねた様子を見かねたのかショッピングの代金は自分が受け持つと提案してきたのだ。

 これには心底私は驚かされた。
 むしろ此方がアキトの時間を削っていることに感謝すべきなのに当の本人はただ純粋に私とのショッピングを楽しいものにしようと心掛けているのだ。

 逆に私の方が胸を密かにときめかせられてしまった。
 アキトの思いやりは純粋に私にとっては嬉しいもので、思わずショッピングのお金を奮発してしまう。
 言うまでもなくアキトのお金でだが。

 私は中々イイ性格をしているようだ。
 改めて自覚した。
 
 ショッピングの後も荷物はアキトが率先して持ってくれた。
 これでは今後の私のショッピングの付添人がアキトであると決まったも同然である。
 正にアキトは私のショッピングにおける永久指名同伴者だ。

 また店員であるおばさんにアキトの彼女なのかと唐突に尋ねられたことで思わず頬を赤らめ、動揺してしまう事態も起きたが問題ない。

 アキト自身余り気にしているようには見えなかったからノープロブレムなのだ。
 
 つい衝動的にアキトの恋愛経験を聞いてしまったが全く問題ない。
 本人曰く恋愛経験は無し。
 ココヤシ村に来る前は賞金稼ぎの経験有り。
 出身地はシャボンディ諸島の近くの島。

 思わぬ収穫だ。
 このショッピングの目的であるアキトとの親睦を深めることができた。

 アキト本人に特別な女性が存在しないことに心の隅で少しだけ安堵したことは秘密だ。
 安堵したのは今はただ私とショッピングをしているのにも関わらず他の女性のことを引き合いに出して欲しくなかっただけだ。
 そうだ、きっとそうに違いない。

 見ればアキト本人もどこかこのショッピングを楽しんでいるように見える。
 錯覚などではないだろう。

 思えば私はアキトのことをどう思っているのだろうか。

 アーロンパークの一件以降私はアキトのことを少しだけルフィ達とは異なる視線で見ていることは自覚している。
 これが恋から来る行動なのか、吊り橋効果と呼ばれる効果なのかは未だ私は分からない。

 窮地の状況の私をアキトは何の見返りを要求することもなく助けてくれたのだ。
 これで何とも思わないわけがない。

 素直に嬉しいと思うし、ときめくものもある。
 私だって女だ。
 そういったどこぞのヒーローのような男性に憧れていたことも一時期はある。

 だが私はそんなちょろい女ではない。
 一時の気持ちで流されることなどありえない。

 そう、だからこのショッピングで感じているこの何とも言えない気持ちも一時的なものだ。

 だが私も特定の男性と異性として付き合うことを一人の女性として想像してしまうことは仕方のないことなのだろう。
 そして現時点で私が一番仲が良いと思われるアキトへと目が泳いでしまうことも仕方のないことなのだ。

 そんな私の混沌とした気持ちに気付くこともなくアキトは前方を見ている。
 改めて私はアキトという男性を注視して見つめることにした。
 
 ルックス良し、気遣いも心得ており、実力も申し分ない。

 金銭面も賞金稼ぎを通して稼いだお金があるので大丈夫である。
 アキト程の実力者が賞金稼ぎをしていたのだ。
 懐事情はさぞかし豊富であることだろう。

 見た目よし、性格良し、実力良し、財力良しとなるとアキトはかなりの優良物件ではないだろうか。

 だが私は恋という感情がよく分からない。
 いや、分からないと言ってしまえば語弊がある。
 男性を異性として特別な意味で好きになることが上手く理解できないのだ。

 これまで私は恋とは無縁の生き方をしてきた。
 ココヤシ村を救うために命懸けで生きてきたのだ。
 私にとって男とは下品でがさつで、下劣な視線を隠そうともしない存在でしかなかった。

 だがアキトは私の男に対する印象のどれにも当てはまらない。
 何というか、アキトはどこか達観しているような気がするのだ。
 アーロンパークの崩壊後に抱きしめてもらった時に感じた不思議な包容力というか、何というか。

 勿論、ルフィ達もその枠には当てはまらない。
 サンジ君もかなりの女好きだが大丈夫だ。
 た…多分……



 その後のアキトとのショッピングはとても充実したものになった。
 私は大満足である。



 偉大なる航路(グランドライン)への入り口も何とか無事に通過することができた。
 順風満帆と言えるだろう。





▽▲▽▲



 

 ルフィが食われた。
 それも特大の鯨に。

 何故、偉大なる航路(グランドライン)の入り口に鯨がいるのだろうか。
 私達は案の定メリー号ごと喰われることになった。

 それにしてもアキトは達観し過ぎていると思う。
 皆が驚きを隠せない中アキトは吞気に現状を客観的に分析していたのだから。
 アキトの有する能力が強力であることは知っているが、アキトにはもう少し緊張感を持って欲しいと思う。

 

 その後双子岬の灯台守であるクロッカスさんと出会うことになった。
 この鯨、ラブーンが抱える事情を知ることにもなる。

 この鯨が抱える執念とも言える狂気の行動に誰もが言葉が出てこなかった。
 


 そんな中ラブーンの改造された胃袋の扉を突き破りルフィが現れる。
 謎の2人組を連れて。

 そいつらはラブーンの胃袋に穴を開けることを画策。
 だがアキトが砲弾を能力により無効化することで事無きを得た。

 分かっていたが何とも強力で便利な能力なのだろうか、アキトが有する能力は。

 完全にクロッカスさんの飛び降り損であった。





▽▲▽▲





 歓迎の町・ウイスキーピークに到着した私達。
 熱烈なまでの歓迎を受けた私達は船を岸に停泊した。

 敢えて言わせてもらおう。
 
 ウイスキーピーク、実に怪しい。
 いや怪し過ぎる。

 何処の島に海賊を大々的に歓迎する町があるのか。
 ここまで怪し過ぎさが全開であると逆に尊敬してしまう。

 見ればアキトも呆れたような表情を浮かべている。
 無論、ゾロも気付いている。

 ルフィ達は呑気に肩を組み町へと繰り出していった。
 サンジ君も女の子に釣られ、鼻の下を伸ばしながらその場から離れていった。

 見ればアキトもサンジ君の様子に呆れるしかないようだ。


サンジ君……


 怪しい町ではあるがただで酒と料理を食べることができるのは素晴らしい。
 万が一の事態に陥ってもアキトの傍にいれば問題はないだろう。

 そのアキトだが見れば複数の女性に囲まれていた。
 本人は全くデレデレなどしていなかったが。


うーむ、何か気に食わない


 私はアキトの傍に即座に向かう。
 酒の影響もあるのか少々大胆になっているのかもしれない。

 此方に話し掛けるアキトに酒を飲ませ、肩を強く引き寄せる。
 困惑するアキトに私の飲みかけのジョッキを押し当てる。


私のこの何とも言えない気持ちを受け取れ、アキト!


 この遣り取りを繰り返すこと数分。
 私とアキトもかなり酒で出来上がっているのだろう。
 私は泥酔と見せかけてアキトの胸に飛び込み、眠りについた。

 やはりアキトの腕の中で眠るのは何か言葉では表せない安心感がある。
 大きな包容力というか、無償の心の安らぎ場であるというか何というか。

 ただ今はこの逞しい胸板で疲れを癒したい気分であったのだ。
 

とても良い夢が見れそうである


 勿論、寝た振りであるが……
 
 
 
 その後王女ビビを救出すべくゾロに貸していた10億ベリーを脅迫材料にゾロに命令したがアキトに引かれてしまった。

 地味にショックであった。





▽▲▽▲





 古代の生物と生態系が今なお残るリトルガーデンに辿り着いた私達。

 一人、また一人と船を降りていく。
 
 このままでは私とウソップの2人だけになってしまう。

 まずい。
 これは非常にまずい。

 見れば同じように船から降りようとしているアキトの姿が。

 ウソップと阿吽の呼吸にてアキトを強く引き止める。
 本人は目の前の島に上陸することを望んでいたが私とウソップには後がないのだ。

 故に引き止める、全力で。
 私は蜜柑、ウソップは嘘の創作話でアキトをこの場に留めようとした。

 結果、アキトが先に折れこの場に残ってくれることになった。
 やり切った。
 私とウソップの大勝利である。



 その後はウソップの嘘話を終始無視し、アキトの傍で本を読んだ。
 アキトもベルメールさんの蜜柑を気に入れてくれたようだ。
 素直に嬉しい。

 ウソップはまだ壊れたラジカセのように口を動かしている。
 アキトも私も無視、無視である。

 その塩対応にウソップが苦言を申し立てるがこれまた無視。
 アキトは口では謝っているが罪悪感を感じている様子は皆無である。
 どうやらアキトも私と同様かなりイイ性格をしているようだ。



 だがそののほほんとした遣り取りも長くは続かない。

 リトルガーデンには巨人がいることが発覚したのだ。
 私がその事を思い出すのと巨人であるブロギーさんが現れるのは同時であった。

 たまらず悲鳴を上げアキトに抱き付く私とウソップの2人。
 変わらず動じることはなく、平常運転のアキト。

 その胆力を少しでも私に分けて欲しい気分である。

 聞くところによるとブロギーさんは酒を所望の様子。
 アキトはこの言葉を島への探索の口実に使えると考えたのか快くブロギーさんの歓迎を受けることになった。

 私とウソップは為す術もなくそんなアキトの両腕に抱き付き、ブロギーさんの後を付いて行くことしかできなかった。

 心なしかその時のアキトの表情は生き生きとしていた気がする。
 リトルガーデンを探索することができて嬉しいのだろうか。

 年齢に見合った好奇心をアキトが有していることを知った瞬間である。
 このタイミングで知ることができて嬉しいような悲しい気分である。

 

 その後も怒涛の急展開の連続であった。

 B・W(バロックワークス)からの追っ手との邂逅。
 蝋人形にされたゾロとビビ、ブロギーさんの3人。
 何故か笑い転げているルフィ。

 必要な情報だけを聞き出した後に相手をズタボロにするアキト。

 思った以上に容赦がなかった。
 まあ、こんな状況だ。
 わざわざ敵の長ったらしい話を聞き続ける理由はないだろう。

 こういうアキトの敵に対して容赦の無い性格は好感が持てる。
 敵に安易に自分達の情報を与えることは愚行であると言わざるを得ないことをアキトは分かっている。
 アキトの意見に全面同意だ。

 やはりアキトはとても強く、敵を即座に無効化していた。
 むしろ敵が可哀想になる程のレベルの差である。

 というかアキトの悪魔の実の能力は強すぎではないだろうか。
 現状アキトの能力を知っている身である私もアキトの能力の突破口が思いつかない。

 敵2人を瞬く間に一掃したアキトは眼前の燃え盛る業火の中に突入している。
 最早何でも有りか。

 こうしてアキトはゾロとビビ、ブロギーさんの救出に成功した。

 救出したビビの頭をアキトが優し気な様子で撫でられていることにどこか落ち着かなかったが何の問題もない。
 
 ビビは心なしか嬉しそうであった。
 
 この感情がもしかして嫉妬なのであろうか。
 この気持ちの正体はまだ私には分からない。
 だがビビに対して一瞬でも妬ましい感情を抱いたことは否定できない。

 この理解できない不思議な感情の正体が分かる日が私に来るのであろうか。
 

うーむ、分からない。


 わざとらしく清々しいまでの変わり身を見せるアキトの頬をつねりながら私は考えていた。

 以外とアキトの頬は柔らかかった。



 そして最後の敵であるMr.3は復活したルフィとゾロ、ブロギーさんのいじめとも言える総攻撃で即撃破された。

 言わずもがなボロカスである。


 こ れ は ヒ ド イ。


 敵が哀れ過ぎる。
 同情などは決してしないが。



 リトルガーデンを無事脱出した私達。
 相変わらずアキトはあの超巨大金魚の前でも平常運転であった。

 アキトのこの超然としたまでのリアクションの薄さはどこから来るのだろうか。

 ここまでくると尊敬の念まで覚えてしまう。
 私は先程と同じ様にアキトの頬をつねり、リトルガーデンでの疲れを癒すことになった。 
 
 だが私の意思とは無関係に私の体は崩れ落ちた。
 突如、私の体を酷い倦怠感と高熱が襲ったのだ。

 そんな私をアキトが優しく受け止めてくれる。


…。体がとても熱い。いっ…意識が…


 それ以降の記憶は曖昧だ。

 私の寝室にてアキトの手を握り返したことしか覚えていない。 

 



▽▲▽▲





 目を覚ませば知らない天井。
 私の服装はいつの間にか変わり、寝台に寝かされていた。

 体を襲っていた倦怠感はだいぶ消え、熱も僅かに残っているが体が燃えるような感覚はしない。

 丁度アキトがこの寝室へと扉を開き、その姿を現す。

 恐らくだがアキトが医者がいるこの場へと連れて来てくれたのだろう。
 飛行することが可能なアキトの能力は正に私を早急にこの場へと連れて来るのに最適であったに違いない。

 やはり推測通りアキトが私を運んでくれたようだ。
 本当にアキトには頭が上がらない。

 だが突然額を触ってくるのは反則であると思う。
 熱を確認するためだとは分かっているがアキトの顔が目の前にある状況は病人である私には良い意味でも悪い意味でも心臓に悪かった。

 改めて見るとやはりアキトは端正な顔立ちをしていると思う。
 額から伝わるひんやりとしたアキトの手の平が私を一周回って冷静にしてくれる。

 だが依然として距離感が近いのに変わりはなく私を混乱の境地へと誘った。
 それに加えて不意打ちとばかりに普段表情を変えないアキトがふんわりと笑ったのだ。

 そう、他の誰でもない。
 この私にだ。

 最早私の心臓の音が鳴り止むことはなく、目の前のアキトを私は直視できなかった。 



 そんな混沌とした雰囲気の中に入り込んでくるトナカイの姿が。

 続けて入室してくるDr.くれは。

 彼女の口から語られるチョッパーの辛き過去。

 そんなチョッパーを口説く私。

 感心したようなアキトの視線に耐えられずそっぽを向く私。

 軽いカオスな状況である。

 突如寝室を出ていくアキト。

 急展開に付いて行けない私。

 Dr.くれは曰くアキトは私の治療費を払う代わりに外敵を排除することを彼女と約束していたらしい。



 やはり私はアキトに頭が上がらなかった。


あっ、一条の光が見えた
 
 








 このようにアキトと接していく内に私は彼に対して徐々に興味を抱いていくことになる。

 正直アキトはこれまで出会ってきた男性とはかけ離れた男性であった。

 サンジ君のように自身の欲望に忠実で女好きというわけでもなく、ルフィやウソップのような子供らしさも有してはいるがその子供らしさもどこか希薄だ。

 ゾロのように剣士としての誇りに固執するような典型的な誇り高い人間でもなく、私のように自らの容姿を駆使することで相手を篭絡するような軽快で打算的な人間というわけでもない。

 どこまでも冷静であり、客観的。
 主観性を重んじることはあれど常に平静を装い、事態に対処する。

 そして驚く程の達観性と包容力。
 敵には容赦無く、奇襲も行える精神性を有している。

 だがそこには冷淡さだけでなく優しさもあり、思いやりと気遣いも有している。

 アキトは普段余り感情を表に出さない。
 私とそう年齢は変わらないはずなのに、あの達観性なのだ。

 アキトの正確な実年齢は知らないが私と大差ないことは知っている。
 この年齢に見合わない違和感も私がアキトに対する興味を引き立たされる要因となっているのかもしれない。

 アキトと接する内にこの確信にも似た考えは強くなっていく。


そう、まるで肉体と精神が合っていないような……。


 これは何の根拠も存在しない推測だ。
 まあ、アキトがただ単純に精神年齢が高いだけなのかもしてないが。

 年齢に見合わないこの釈然としない雰囲気がアキトの魅力を引き立てていることもまた事実。
 この推測について幾ら論じたところで答えが出ないのも明白なので今は一旦忘れることにする。

 また遇にアキトは普段の表情とはかけ離れたように突然ふわりとした表情を浮かべ、私を混乱させることがある。

 私とアキトはまだお互いに短い付き合いであるが私はそのギャップに強く心を打たれた。
 その度にアキトは素知らぬふりをし、私の心の内を知らぬ存ぜぬとばかりに通常運転に取り掛かるのだ。


まったく、此方の気も知らないで……


 私をアーロンの支配から解き放ってくれたアキトは勿論のことこんな私を快く引き受け入れてくれたルフィ達には感謝している。

 だがこれまで一人の男性にここまで心を動かされたことなどなかった。

 この感情が恋から来るものなのかはまだ分からない。
 私はこれまで恋とは無縁の人生を送ってきたのだから。

 いきなり恋なんて無理な話であるし、アキトとは未だ互いのことを理解し始めたばかりなのだ。

 今の私がアキトに対して抱いているこの気持ちが恋なのか分かるわけもないのだ。

 だがこれからも私はアキトと同じ船で旅をするのだ。
 いずれこの気持ちの正体を知る時が来るだろう。

 それまではこの気持ちと上手く折り合いをつけ、付き合っていこう。










 だがアキトの周囲に私以外の女が蔓延るのは依然として許容できそうにないが……



To be continued... 
 

 
後書き
以上現在までのナミの心象描写でした。
 
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