英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇
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第29話
その後――――第Ⅱ分校全員が到着し、今回の件の事後処理が行われた。『決して口外しない』という誓約の元、分校生全員に”ハーメル村”の存在を隠蔽し続けている事情も明かされ……遊撃士アガットやメンフィル帝国皇女プリネ達の協力も受けつつ、シャーリィの遺体の処理と廃道から人形兵器を掃討するのだった。
そして――――廃道の人形兵器を掃討し終えた後分校は教官を含めた全員がハーメル村の慰霊碑に花を捧げ、祈りをささげた。
~ハーメル村~
「―――さっきは流したがこれは明白な命令違反だぞ!?確かに君達には自分達で考えろと言った!だが、言ったはずだ!特務活動は昨日で終了したと!おまけに訓練からのエスケープと機甲兵の私的な利用……!正規の軍人なら軍法会議ものだぞ!」
「わたくしも”自分の意志”ハッキリと口にして下さいと言いましたが、それと今回の件は全く別です!それに皆さんはただの学生ではなく士官学生――――”軍人の見習い”です!私的な理由で上官の軍事指示に逆らう事は単なる”命令違反”ですわ!」
「はい………」
「……反論できません。」
慰霊碑への祈りを終えた後リィンとセレーネは新Ⅶ組の生徒達を集めてそれぞれ怒りの表情で生徒達が自分達の助太刀の為に訓練を抜けだした事等に対する注意をし、二人の注意に対してユウナとアルティナは顔を俯かせて反省した様子で答えた。
「―――責は自分にあります。処分は一人にしていただけると。」
「って、そうじゃないでしょ!」
「責任は全員にあるかと。」
クルトは自分が全ての責任を負おうとしたが、クルトの言葉を聞いたユウナとアルティナがそれぞれ反論した。
「まあ、そのくらいにしておいてあげたら?」
「我等もかつて、命令違反は幾度もしてしまったからな。」
「そだね、トールズ本校が機甲兵に襲われた時とか。」
「そういや、ステラやエリゼちゃんから聞いた話だがお前も1年半前の”七日戦役”で命令違反もどきをしたんじゃなかったか~?」
「フフ、”オーロックス砦制圧作戦”の時に指示もなく戦列から飛び出して一番槍を行った時ですね。」
「うっ………」
「ア、アハハ……そんな事もありましたわね……」
「ふふっ、ユウナ達の時程じゃないけどリィンも上官のゼルギウス将軍に注意されていたわね。」
エリオット達のフォローの言葉やフォルデとステラの指摘を聞いてかつての自分を思い出したリィンは唸り声を上げ、セレーネとアイドスは苦笑していた。
「……教官?」
「自分達の正当性を主張するつもりはありませんが………」
「ブーメラン、でしょうか。」
「―――それはそれ、これはこれだ。教官である以上、生徒の独断専行を評価するわけにはいかない。今回は運が良かっただけで次、無事である保障がどこにある?」
「お兄様達とシャーリィさんの”死闘”を間近でその目にした皆さんならばお兄様が仰る事についてよく理解していますわよね?」、
生徒達に責められるような視線を向けられたリィンは咳ばらいをして誤魔化した後気を取り直してセレーネと共にユウナ達に問いかけた。
「それは……」
「……仰る通りです。」
「……………………」
二人の教官の指摘に反論できないユウナ達はそれぞれ反論することなく静かに聞いていた。
「―――ただまあ、突入のタイミングは良かった。」
「え。」
「機甲兵登場の隙を突いて女騎士達を下がらせたこと。倒れたアッシュの安全確認と臨機応変な機甲兵の運用。授業と訓練の成果がちゃんと出ていたじゃないか?」
「あ………」
「お兄様……」
「フフ……」
注意の後に生徒達を褒めたリィンの言葉にユウナとアルティナが呆けている中セレーネとアイドスは微笑ましそうに見守っていた。
「そしてクルト―――助太刀、本当に助かった。君ならではのヴァンダールの剣、しかと見届けさせてもらったよ。」
「…………ぁ…………―――はい!」
リィンに評価されたクルトは一瞬呆けた後決意の表情で頷いた。
「―――訓練中にⅦ組の連中とはぐれてここまで来ただと?そんな言い訳が通用すると思ってんのか?」
リィンとセレーネがユウナ達に注意をしている同じ頃、ランディはランドロスと共にユウナ達同様独断専攻を行っていたアッシュに注意をしていた。
「いや~、野外訓練って道に迷ったら大変だよなぁ。サーセン、次は気をつけるッス。」
「クク、道に迷ってこんな所までねぇ?それが本当ならとんでもない方向音痴だな。」
「ったく、Ⅶ組の連中が抜け出すってんならともかく……そういや誰からこの場所の事を聞いたんだ?」
アッシュの適当な言い訳にランドロスが口元に笑みを浮かべている中ランディは呆れた表情で溜息を吐いた後非常に限られた人物達しか知らないハーメル村をアッシュが知っていた理由を訊ねた。
「っと、Ⅷ組の連中のフォローに戻らねえとな。そんじゃ教官達、お疲れっしたー!」
「おい―――!ったく、何を考えてるんだか。」
「まあ細かい事はいいじゃねえか。ガキ共に限らず他人の考えを完全に悟る事ができるなんて、どこぞの”天使”のような”特別な才能”を持った奴くらいだぜ?」
答えを誤魔化して去って行ったアッシュの様子に溜息を吐いたランディをランドロスは慰めの言葉を送り
「あー……確かに”ルバーチェ”どころか”鉄血宰相”に旧共和国の大統領、それにテロリスト共の狙いを悟ってた上での策略を考えたルファディエル姐さんだったら、マジでできるかもな……って、アッシュよりも考えが全くわからねぇあんたにだけは言われたくないぞ!?………それにしても”猟兵王”――――4年前の”リベールの異変”で”空の覇者”に討ち取られたはずの男か。…………一体どうなってやがるんだ?」
ランドロスの慰めの言葉に苦笑しながら答えた後疲れた表情で溜息を吐いたランディは気を取り直してルトガーの顔を思い浮かべていた。
「この匂い、建物の並び……ハッ。やっぱり間違いなさそうだ。」
ランディとランドロスから離れたアッシュは立ち止まって周囲を見回した。すると何かを感じたアッシュは左目を片手で抑え
「……14年前の”あの日”。どうやら本当に……落とし前をつけられそうだぜ。だがその前に…………確かめる事があるな。」
不敵な笑みを浮かべた後アガットやティータ、そしてプリネ達と共に改めて慰霊碑に祈りを捧げているレーヴェを見つめた。
「……あいつらの分か?」
「はい、お兄ちゃんとお姉ちゃん、それにミントちゃんの分も………」
花を捧げ終えて立ち上がったティータにアガットは問いかけ、問いかけられたティータは静かな表情で答え
「ティータちゃん………」
「フフ……エステルさん達に続いて、まさかお二人まで私達と一緒にこの村の墓参りに来ることができるなんて、不思議な巡り合わせですね。」
「フッ、それこそ”女神の導き”かもしれないな。――――最も、今の俺の言葉を聞けば子孫や先祖共々、自分達のせいにするなと文句を言ってきそうだがな。」
「くふっ♪エステルもそうだけど、エイドスも”導き”が自分達のせいにされる事を滅茶苦茶嫌がっていたもんね。」
ティータの答えを聞いたツーヤは静かな表情で見つめ、プリネは微笑み、レーヴェは静かな笑みを浮かべ、エヴリーヌは口元に笑みを浮かべてある推測をした。
「アハハ……」
「ったく、洒落になっていねぇぞ………いつかあいつら全員と共にここを訪ねられりゃあいいんだが。」
レーヴェの言葉にティータが苦笑している中呆れた表情で溜息を吐いたアガットは気を取り直して静かな表情である人物達の顔を思い浮かべた。
(これにて”初手”は終了……ふふ、次の盤面はどんな風に進むのでしょう?)
一方ティータ達の様子を物陰から見守っていたミュゼは周囲を見回した後意味ありげな笑みを浮かべた。
「――――それで?今どんな気持ちなのかしら、”リィンお兄さんやレン達の動き、ユウナ達の独断専行に結社や西風の旅団の行動を含めた全てが貴女の読み通り”に進んでいる事に。」
するとその時レンがミュゼに近づいて意味ありげな笑みを浮かべてミュゼに問いかけた。
「ふふっ、何の事やら。私には1年半前の内戦で貴族連合軍の動きをまるで自分の掌の上で踊ってくるかのような聡明な考えができるレン教官のような才能はございませんわ。」
「うふふ、謙遜も時と場合によっては嫌味になるわよ?―――――まあ、それはともかく。貴女程の才女が典型的な”貴族の愚物”だった”某主宰”の元公爵と同じ血を引いているとはとても思えないわね。―――あ、でも息子はともかく娘達は優秀だから、それを考えると某公爵家は男性ではなく女性が優秀になりやすい傾向でもあるのかしら?」
「……………フフッ、やはりレン教官―――いえ、”レン教官達”は私の事をご存知でしたか。姫様もいけずですわね、乙女の秘密を何の断りもなく他の方達に話すなんて。」
小悪魔な笑みを浮かべたレンに見つめられたミュゼは少しの間黙り込んだ後苦笑しながらアルフィンの顔を思い浮かべていた。
「あら、アルフィン夫人はシュバルツァー家の跡継ぎの妻の一人として、そしてメンフィル帝国に所属している人として当然の事をしただけよ?第一貴女、”入学前に通っていた女学院”では別に正体を隠したりとかしていなかったでしょう?」
「フフ、それはそれ、これはこれですわ。それで………私の事を知ったレン教官達は今後、私に対してどういう対応をされるおつもりですか?」
レンの指摘に対して笑顔で誤魔化したミュゼは静かな表情でレンに問いかけた。
「別に何もするつもりはないわよ?幾ら貴女が”某主宰”の親類とはいえ、たったそれだけの理由で貴女の事を警戒する程レン達―――いえ、メンフィルの”器”は小さくないわよ。」
「そうですか…………でしたら、私が”10人目”に加わる為に様々な努力をしても、問題はないのですわよね?」
「”10人目”……うふふ、”そういう事”。ま、他人の恋愛事情は見ている方としたら面白いからレンからすれば、むしろ楽しませてもらうけど………貴女が”10人目”に加わりたい理由は大方、政治的な理由も含まれているのでしょう?それを考えると、貴女のリィンお兄さんに対する接触について色々な憶測を考えてしまうわね。」
ミュゼの口から出た意味ありげな言葉の意味を瞬時に悟ったレンは小悪魔な笑みを浮かべた後探るような視線でミュゼを見つめ
「まあ……レン教官ったら、酷いですわ。私はリィン教官に恋い焦がれる大多数の乙女の一人として、リィン教官を慕っているというのに……シクシク……」
見つめられたミュゼはわざとらしく悲しんでいる動作で答えた。
「うふふ、”そういう所もレンと似ているわね。”―――ま、レンは馬に蹴られたくないから人の恋時を邪魔するつもりなんて毛頭ないけど………”貴女達の事情”にリィンお兄さん達を巻き込むつもりなら、まずはレン達に一切全ての事情を話を通さないと、話にならない事だけ言っておくわ。貴女も知っているでしょうけど、レン達はリィンお兄さん達―――シュバルツァー家を守る義務が二重の意味であるのだからね。」
「あら、その口ぶりですと交渉の余地はあると判断してよろしいのですか?」
「クスクス、それは”貴女達の態度次第”だと思うわよ?」
ミュゼの問いかけに対して小悪魔な笑みを浮かべて答えを誤魔化したレンはミュゼの元から去り
(ふふっ、話に聞いていた通り―――いえ、それ以上にやり辛い相手ですわね。ですが回りくどい事や小細工はせずに正面から攻めた方が可能性がある事がわかった事だけでも、収穫と判断して良さそうですわね。)
ミュゼは自分の元から去って行き、自分を待っていたエヴリーヌと合流してどこかへと向かって行くレンの後ろ姿を見つめながら苦笑した後真剣な表情を浮かべた。
「それにしても今回のハーメル村のお墓参りはかつてない程の賑やかなお墓参りになったのではないですか?」
「ふふっ、そうね。それどころか、ハーメル村が存在した頃もこんなにも多くの”外”の人々がハーメル村を訪れた事もなかったわね。」
「そうだな。……まあ、その理由がこの村の惨劇を起こした元凶の一人である”白面”が所属している結社の”実験”が原因である事は皮肉な話だがな―――――!…………」
ツーヤとプリネと共に廃墟内を歩いて回っていたレーヴェは何者の気配に気づくと立ち止まって目を細めて廃墟の一角を見つめ
「レーヴェ?急に立ち止まってどうしたの――――…………」
「……何者ですか?その廃墟の物陰に隠れているのはわかっています。」
レーヴェが立ち止まった理由を不思議に思ったプリネだったがすぐに何者かの気配を気づいて表情を引き締め、ツーヤはプリネの前に出て抜刀の構えでレーヴェとプリネが見つめている方向を見つめて呟いた。
「……ハッ、さすがは結社の元執行者とかつては”大陸最強”を誇っていたエレボニアをボロ負けさせた異世界の大国の英雄サマ達ってか?」
すると廃墟の物陰からアッシュが現れ
「貴方は確か第Ⅱ分校の………」
「Ⅷ組”戦術科”――――”闘神の息子”と”紅き暴君”の生徒の一人であり、”新Ⅶ組”と共に助太刀に現れたアッシュ・カーバイドか。俺達に何の用だ?」
アッシュを見たツーヤは目を丸くし、レーヴェは静かな表情でアッシュに問いかけた。
「クク……”何の用だ”、か。どうやらその様子だと本気でオレの事がわからねぇみてぇだな。――――大方テメェと一緒にまんまと逃げた黒髪の小僧もオレの事がわからねぇんだろうな。」
「”黒髪の小僧”ってまさか………」
「貴方、どうしてあの子の事を………それに”まんまと逃げた”って仰っていましたけど、まさかとは思いますが貴方は………」
アッシュがある人物を知っている口ぶりにツーヤは目を丸くし、アッシュの話からアッシュが何者かを察したプリネは信じられない表情でアッシュを見つめ
「―――”3人目の遺児”か。可能性は低いが”3人目以降の存在”がいる事については想定していたが……まさかその一人がお前だったとはな。――――それで?お前と違い、”ハーメル”の村人であった事を捨てて他国の人間としてそれぞれの”道”を歩んでいる俺やヨシュアに対する恨み言を言う為に現れたのか?」
アッシュの正体を察したレーヴェは静かな表情で推測を口にした後、目を細めてアッシュに問いかけた。
「ハッ……”恨み言”とかそんな生温い事で済まされると思っているのか?オレを置き去りにしてまんまと逃げた上”結社”みたいな後ろ暗い事をする連中の一味になった癖に、その一味から抜けてエレボニアの上を行く異世界の大国の皇女サマお気に入りの騎士になった挙句、多くの仲間を手に入れたテメェが許される存在だと思っているのか?」
問いかけられたアッシュは鼻を鳴らした後全身から黒い瘴気を纏わせて自身の得物であるヴァリアブルアクスを構えた。
「あの黒い瘴気は一体……」
「わからないけど……凄まじい”負”の霊圧を感じるから、恐らく”呪い”の類でしょうね。一体彼に何があって……―――いえ、今はそんな事を気にしている場合ではないわね。アッシュさん、でしたか。まずは落ち着いて私達の話を――――」
「―――無駄だ。こういった輩は説得に耳を貸さない。―――下がっていろ。その男の相手は俺かヨシュアがすべきだ。二人は手を出す必要はない。」
アッシュが纏っている瘴気を見てツーヤと共に警戒の表情をしたプリネはアッシュを説得しようとしたが、レーヴェがプリネとツーヤの前に出て制止の言葉をかけた後魔剣を構えた。
「レーヴェ………その、決して命を奪うような事はしてはダメよ……?」
「そのくらいの事は言われなくてもわかっている。」
「ハッ、大事な皇女サマの気を惹く為とはいえ、あのとんでもないイカした姉さんを容赦なく殺った奴の言う事とは思えねぇな。――――いや、さっきの会話から察するとその皇女サマはあの惨劇でくたばったテメェの黒髪の女と何か関係が――――」
プリネの嘆願に頷いたレーヴェの様子を見たアッシュは鼻を鳴らして嘲笑した後プリネに視線を向けかけたが
「―――それ以上口を開くな、半端者が。」
「あ……?」
目を細めて睨みつけてきたレーヴェの言葉を聞くとレーヴェを睨んだ。
「”今の俺”が剣を振るうのは”英雄王”のように人を超え、修羅と理を極めた存在に至るがため………しかしお前は、己の空虚を充たすがためにその鉄塊を俺に向けている。」
「………………………………」
「重き鉄塊を振るうことで哀しき空虚を激情で充たす……。怒りや憎しみで心を震わす間は哀しさから逃れられるからだ。だが、それは欺瞞に過ぎない。」
「…………やめろ………………」
レーヴェの言葉を聞き、何かを耐えるような表情でアッシュは呟いた。
「そして、欺瞞を持つ者が前に進むことはありえない。”理”に至ることはおろか”修羅”に堕ちることもない。今のままでは……かつての”重剣”と同じようにお前はどこまでも半端なだけだ。」
「黙りやがれえええッ!!!」
そして続けて言ったレーヴェの言葉を聞いたアッシュはレーヴェに襲い掛かったが、レーヴェは人間離れした動きでアッシュに斬り込んだ!
「な―――かは……っ!?」
一撃で自身の得物が弾き飛ばされると共に峰打ちをされたアッシュは地面に倒れ
「――――だが今のお前は当時の俺やヨシュアの時と違い、周りの状況は恵まれている。俺に届きたいのであれば、まずは自分を見つめ直す事から始める事だな。そして人として生きたいなら……怒りと悲しみは忘れるがいい。――――行くぞ。」
「レーヴェ…………」
「………………」
アッシュに対する指摘を終えたレーヴェはアッシュに背を向けてプリネとツーヤと共にその場から去り
「ちく……しょう……忘れろだと……そんな事、できる訳ねぇだろ……――――うおおおおおっ!」
レーヴェ達が去った後地面に倒れたアッシュは空を睨みつけて悔しさの咆哮を上げた!
4月24日、演習最終日
午前11:30―――
翌日、演習を終えた分校の生徒達が次々と列車に乗り込んでいる中リィン達はラウラ達に見送られようとしていた。
~演習地~
「ラウラ、フィー、エリオット、ステラ、フランツ。本当に世話になったな。アガットさんやフォルデ先輩、プリネ皇女殿下達もありがとうございました。」
「フフ、気にしないでください。私達は当然の事をしただけですから。」
「ま、何とかサラの代わりができてよかったぜ。訊ねたかった場所にも行けたし、第Ⅱの活動なんかも確認できた。ま、”身内”を預けとくにはちょいと危なっかしい学校だが。」
リィンの感謝の言葉に対してプリネが謙遜した様子で答えている中アガットは苦笑しながら答えてティータに視線を向け
「それは……」
「正直、弁解の余地はねぇなぁ。」
「なんせ、演習初日で奇襲があったくらいだしなぁ。」
「うふふ、それよりも”身内”という言葉が気になるわよねぇ?」
「レ、レン教官。論点がズレていますわよ。」
アガットの言葉に対してトワが複雑そうな表情をしている中ランディとランドロスは苦笑し、意味ありげな笑みを浮かべてアガットを見つめるレンの言葉にセレーネは冷や汗をかいて指摘した。
「も、もうアガットさん……!わたしのことは大丈夫です!あんまり子供扱いしないでください!
「ああ、わかったわかった。修羅場をくぐってるって意味ではお前も相当なモンだからな。だが、本当にヤバくなったら問答無用でコイツは連れて帰る―――それだけは了解しといてくれや。」
「ア、アガットさん……」
アガットのリィン達への言葉にティータが頬を赤らめると既に列車に乗り込み、様子を見守っていた生徒達が口笛を吹いたり等ティータとアガットの関係を茶化すような声を上げ
「だ、大胆……」
「らぶらぶだね。」
「うふふ、ティータ?今のそこのアガットの言葉を小型の録音機に録音しておいたから、もしこの録音機が欲しかったら、寄宿舎に戻った後レンの部屋を訊ねてね♪」
「というかそれ以前に何で録音機を常に携帯しているんですか、レンさん………」
「くふっ♪レンの事だから、いつでも誰かの弱みを握る為なんじゃないの♪」
「フッ、レン皇女の今までの行動を考えれば、そう言った推測が出てくるのも当然だろうな。」
ユウナは驚き、フィーはジト目で呟き、からかいの表情で声をかけたレンの答えを聞いたツーヤは呆れた表情で溜息を吐き、エヴリーヌとレーヴェは口元に笑みを浮かべて呟いた。
「あー、だからコイツの両親と約束してんだっての。」
「……了解しました。自分達も全力を尽くします。」
「わたくしもお兄様共々全力を尽くしますわ。」
「わ、わたしも副担任教官としてちゃんとサポートしますね!」
「うふふ、レンもいるんだから、ティータを含めた生徒達が死なないようにサポートはしてあげるから、大船に乗ったつもりでいていいわよ。」
「及ばずながら、俺もな。」
「クク、当然オレサマもいるから安心して遊撃士の活動に専念しなぁ。」
リィン達教官陣はアガットにとってそれぞれ心強い言葉をかけた。
「我等もまた、しばしの別れだな。」
「うん、ちょっと残念だけど。」
「でも、それぞれ目的もできた。またすぐに会えると思う。」
「ま、俺達はともかく旧Ⅶ組の連中は内戦後も何だかんだあって、また会えたんだ。いつか全員が揃う時が近くなっている証拠だと思うぜ?」
「フフ、そうですね。」
「アハハ、それを考えると元同期だった僕達も揃う時が来るかもしれないね。」
ラウラとエリオット、フィーもそれぞれリィン達に別れの言葉を告げ、フォルデが呟いた言葉を聞いたステラとフランツはそれぞれ苦笑していた。
「フィーはギルドの仕事をしながら”西風”の行方を追って……ラウラは各地の道場を回りつつ”兆候”を探るんだったな。」
「僕も巡業旅行で各地の様子を確かめるつもりだしね。………リグバルド要塞といい、ちょっと心配な空気も流れてる。何かあったら連絡するよ。」
「ああ……こっちもな。フランツは先輩と一緒にパルムの道場での特別講師を終えたら”本国”に戻るのか?」
「うん。けど1ヵ月後にはエイリーク皇女殿下がエフラム皇子殿下と共にゼムリア大陸に来訪する用事があるから、もしかしたらその来訪場所と来月の第Ⅱ分校の”特別演習”の場所が重なれば、また会えるかもしれないね。」
「ハハ、そんな偶然はありえないと思うけどな………それにしてもエイリーク皇女殿下とエフラム皇子殿下が二人揃ってゼムリア大陸に来訪する用事なんて1年半前の内戦時のメンフィル帝国領の防衛の援軍として来訪されて以来になるが………一体どんな用事なんだ?」
フランツの推測を聞いて苦笑しながら答えたリィンは考え込む動作でフランツを見つめた。
「アハハ、それについては今は内緒にさせてもらうよ。一応現時点では機密情報扱いだし。」
「ハハ、それもそうか。」
「どうせ”殲滅天使”の事だから、さっきの話にあった1年半前にわたし達も出会った”ブレイサーオブブレイサー”が持つ貴族の名前と同じ名前を持つ双子の皇族が来訪する用事の内容とかも知っているんでしょ?」
フランツの答えにリィンが苦笑している中フィーはジト目でレンに問いかけたが
「クスクス、それについては”レンのみぞ知る”、よ。」
「このクソガキは……」
「ア、アハハ……」
「ハア………その件については後にリィンさん達にも知らせますが………その件にはサフィナお姉様とセシリア将軍閣下もエフラムお兄様達に同行する事になっている事が決まっていますよ。」
レンは小悪魔な笑みを浮かべて答えを誤魔化し、レンの答えにリィン達と共に冷や汗をかいて呆れたアガットはレンを睨み、ティータは苦笑し、プリネは溜息を吐いた後気を取り直して説明をした。
「まあ……サフィナ様とセシリア様も………」
「ハハ、元帥閣下に加えて教官まで同行する用事がどんな用事なのか本気で気になって来たな。―――”結社”が再び動き始めたことや、あの巨大な”神機”……そして”赤い星座”に加えて”西風の旅団”まで動き始めている。」
プリネの説明にセレーネが目を丸くしている中リィンは苦笑した後気を取り直して今までの出来事を思い返していた。
「どこで手に入れたか知らないけど騎神っぽいのまで持ち出してきたし。しかも”結社”と対立してるっぽい。」
「正確には、彼らを雇っている”何らかの勢力”なのだろうが。未だ見えぬ構図がありそうだ。」
「そして私達も知らない1年半前の内戦に隠されていた”真実”、ですね。」
「結局”幻焔計画”の件も含めて1年半前の内戦にはまだ謎が結構残されているっぽいしなぁ。」
「うん、そのあたりに気をつけて情報収集をした方がよさそうだね。」
「す、凄いです……」
「ったく……ギルド顔負けの連携だな。」
「クク、某支援課とも互角―――いや、それ以上の連携かもしれないなぁ。」
「で、こんなメンバーが他にもいるんだろう?」
旧Ⅶ組や特務部隊の会話や今後の方針を聞いて冷や汗をかいたティータとアガットは感心し、興味ありげな表情をしたランドロスに視線を向けられたランディは苦笑しながらトワに視線を向けた。
「ふふっ、旧Ⅶ組は教官も含めたらあと7人いますね。」
ランディの問いかけに対してトワは微笑みながら答えた。
「ふう……それにひきかえ。」
「まだまだだな―――僕達は。」
「………確かに少々、経験値の差を感じます。特にわたしは教官達と同じ”特務部隊”に所属し、旧Ⅶ組の皆さんと内戦終結の為の作戦行動を行っていたのに……自分が不甲斐ないです。」
「―――いや、そんな事はないだろう。」
「実際、危ないところを助けてもらったわけだしね。」
「しかも奇襲とはいえ、あの”鉄機隊”の注意を惹きつける事ができたしな。」
「ふふ、あの時の助太刀は正直とても助かりましたわ。」
「機甲兵を使ってリィンのサポートもしてくれた。ARCUSⅡで全員、繋がっちゃったし。」
「はい。そう言う意味では私達”特務部隊”と繋がったとも言えますね。」
「ヴァンダールの双剣術―――それ以外もこの先が楽しみだ。同じ”Ⅶ組”として今度見えた時はよろしく頼む。」
「フフ、同じく”特務”の名を持つ者同士としてもよろしくお願いしますね。」
「ま、力不足を感じているんだったらリィン達をちょっとでも楽をさせる為にもこれからも頑張ったら?あ、ちなみにエヴリーヌはいらないからね?獲物が減っちゃうし、キャハッ♪」
「エヴリーヌさん……最後の一言が余計ですよ……」
「フッ……だが、少なくてもお前達の方が”重剣”よりも”素質”はありそうだからな。意外と早く追いつく事ができるかもしれないな。」
「喧嘩売ってんのか、この野郎……!?いっそ、ここで今までの分の借りを纏めて返してやってもいいんだぜ……!?」
「こんな時くらいは落ち着いて対応してくださいよ、アガットさん~。」
ユウナ達は自分達の不甲斐なさを感じているとリィン達旧Ⅶ組や特務部隊の面々はユウナ達に対する高評価の答えを口にしている中余計な言葉を口にしたエヴリーヌはツーヤは呆れた表情で指摘し、レーヴェに視線を向けられて顔に青筋を立てたアガットの様子を見たティータは疲れた表情で指摘した。
「あ………」
「………了解です。」
「えへへ……よろしくお願いします!」
リィン達の心強い言葉に新Ⅶ組の生徒達はそれぞれ嬉しそうな様子で答え
「アガットさんも……どうか気をつけてください。古竜の時みたいに無茶したらダメですからねっ……!?」
「いつの話をしてんだ……お前も身体には気をつけろよ。」
ティータはアガットに別れの言葉を告げた。
「ええい、いつまで話している!定刻だ―――そろそろ出発するぞ!」
一方その様子を見守り、中々話が終わらない事に呆れたミハイル少佐はリィン達に指示をした。
その後列車に乗り込んだリィン達はエリオット達に見送られ、アルトリザスから去って行った―――――
後書き
という訳でアッシュ、案の定レーヴェに返り討ちにされました(そりゃそうだw)そして似たキャラ属性のレンとミュゼの対面という出来事も実現しちゃいましたw原作閃Ⅳでこの二人の対面は実現できるんでしょうかねぇ……?次回、ついに閃Ⅳ篇の布石となるキャラ達が登場します!
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